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金吾買収合戦-その3-

稲葉(正成):「殿。内府(家康)は何と申されておりましたか?」

秀秋:「伏見での一件。家康は気にしておらぬ。と申しておった。」

平岡(頼勝):「それは良かった。これで我が軍は心おきなく……。」

       「ん!?殿?浮かぬ表情をされておりますが……。」

稲葉:「仮病のフリをしている内にホントの病を患われてしまったのでありますか?」

秀秋:「いや。実はな……。内府が厄介なことを言ってきおったものであるから……。」

稲葉:「どのような命令でありますか?」

秀秋:「我が軍に……松尾山を奪え。と申しておる……。」

平岡:「それは何よりのこと。内府は我が軍のこれまでの行動を不問に処した上、

    活躍の機会をもお考えになられているのでありますから。

    悩む必要もないでありましょう……。」

秀秋:「……なんだけどな……。」

稲葉:「まさか殿。

    三成の書状を本気で信用しようとしているのでありますか?」

平岡:「奴(三成)にはこれまで何度も煮え湯を飲まされて来たこと。

    殿はお忘れになられたのでありますか!?」

稲葉:「朝鮮での我らの活躍を亡き太閤殿下に捻じ曲げて報告したばかりか

    筑前の地を召し上げられたこと。」

平岡:「その筑前の地に代官として収まったのが誰であったのか。」

秀秋:「いやいや忘れてはおらぬ。」

稲葉:「不当とも言える左遷から今の立場に戻してくれたかたがどなたであったのか?」

平岡:「そして今回。

    伏見において幼馴染である鳥居元忠殿自害に加担したことをも水に流す。

    と申しているのがどなたであるのか?」

秀秋:「内府であること。重々承知しておる。」

稲葉:「では何故、殿は悩まれているのでありますか?」

秀秋:「いや三成はワシを関白に奏上したいと申しておってな……。

    内府にはそれが無くて……。」

稲葉:「殿。次の関白は太閤殿下が遺児。秀頼様に決まっておること。

    御存知でありましょう。」

秀秋:「勿論そうなのであるが

    秀頼様はまだ幼い。

    成人されるまでの間。私に……。

    と三成は申しておる。」

平岡:「そのような戯言。秀吉命の三成が本気で考えているとでも思うのでありますか?」

稲葉:「よしんば殿が本当に関白になったとしましょう。

    ただ10年しない内に秀頼様が元服の時を迎えられます。」

平岡:「その時、殿はどのような立場に置かれることになる。

    とお考えになられているのでありますか?」

秀秋:「摂政ないし太閤の立場として……。」

平岡:「そのようなことを秀頼様の母・淀殿がお許しになられるとでも思われているのでありますか?」

稲葉:「秀次様の末路をお忘れでは無いでしょう。」

平岡:「その時、殿も序列第3位であったことを危険視され、

    丹波の地を逐われることになったこと。お忘れなのでありますか?」

稲葉:「たまたま殿が小早川の養子に入っていたから良かったものの。」

平岡:「そうでなかったら殿もあの時、三条河原で敢え無い最期を遂げていたことも……。」

秀秋:「もちろん忘れてはおらぬ。おらぬのだが……関白の名前には……。」

稲葉:「まだあのような輩の言うことを信じるのでありますか!?」

平岡:「殿。これまでの無念を晴らすのは……今しかありませぬぞ……。」

秀秋:(……でも折角の関白の地位が目の前にぶら下がっているのに……。)


稲葉正成と平岡頼勝は家康からの監視役である奥平貞治が控えている間に赴き


稲葉:「これはこれは貞治殿。内府殿の使いお疲れ様にございます。」

貞治:「いえいえ、こちらは指示に従って動いているだけのこと。

    ところで秀秋様は如何為されました。」

平岡:「内府様の言葉を聞いて

    気合が入り過ぎたためか

    少々空回りされているところがありましたので

    何か不備があるといけませぬので

    私どもの……。」

貞治:「それはそれは大変なことでありますな。」

稲葉:「先程、殿に申し上げられました件でありますが。」

平岡:「ただちに陣を払い、松尾山を攻め落として見せまする。」


……と秀秋を馬に縛り付けた小早川軍1万5千は

近江・高宮を出発し、江濃国境地帯の要衝松尾山へ押し寄せるのでありました。


松尾山は戦国時代。織田信長と浅井長政が不和となったのち

国境を為す要害として争奪戦となった場所。

その後、信長、秀吉と美濃近江両国を同一の勢力が支配することになったことに伴い

用途を失い廃城となっていたのでありましたが

徳川家康の打倒を誓った石田三成が係争の地と定め、

伊藤盛正に改修を命じたのがこの松尾山。

対家康を想定した。

と言うことは

=東からの進撃を想起し、美濃側をより堅固にしていたところに

突如。安全であるハズの近江から来襲して来たのが

小早川秀秋が馬に縛り付けられている1万5千の精鋭部隊。

盛正は抵抗らしい抵抗を見せることも出来ず。

松尾山を追い出されるのでありました。

三成が一ヶ月にも及ぶ改修を施した松尾山は

あっけない形で秀秋の手に。

=徳川から見た場合。味方の。

=三成から見た場合。去就不明の部隊により占領されるのでありました。 

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