隆景・官兵衛「石田三成を語る」
隆景:「ところで官兵衛殿。貴殿は先の出兵で石田三成と対立したそうであるな。」
官兵衛:「彼の地で三成と対立しなかった奴なんかいませんよ。
かく言う隆景殿も漢城の迎撃方法で三成と揉めたではありませんか。」
隆景:「あれは兵糧のことを考えてまでのこと。現に三成も納得したではあるまいか。」
官兵衛:「隆景殿ぐらいですよ。三成を黙らせることが出来るのは。」
「……とは言え。三成の言っていること自体は間違ってはおりませぬし、
彼が居なかったら
未だ我らは朝鮮で無為に時間を過ごす羽目に遭っていた。」
隆景:「殿下を諌めることが出来るのも
……秀長殿亡きあとは……
彼だけになってしまったのかな……。」
官兵衛:「此度のいくさにおいて
殿の威光に対し、私利私欲を捨て。
忠実に役割を全うしたのが
実は三成だけであったのかもしれませんな。」
「……ただ……」
隆景:「……ただ……?」
官兵衛:「……言いかたがあれでわな……。」
隆景:「周りを怒らせてしまうわな(苦笑い)。」
官兵衛:「言っていることは間違ってはおりませぬし、
実際。彼の言う通りに行うとスムーズに事が運ぶこととなる。
その能力は誰もしが認めているのではありますが。」
隆景:「ありますが」
官兵衛:「あそこまで論破されてしまいますと。
素直には聞いてもらうことは出来ないのでありましょうね。」
隆景:「まだ我々みたいに歳が離れているのであれば、まだ良いのではあるが」
官兵衛:「加藤・福島など年代の近い。
それも長浜前後からの付き合いのモノからしますと。」
隆景:「いくさ働きもロクに出来ない口先三寸だけの奴なんかに。に」
官兵衛:「……なってしまうのでしょうね……」
隆景:「忍城で買収した地元の民に裏切られた経験は
未だ活かされてはいないのであろうな……。」
「……まぁ。生まれ持った性格は治らぬものではあるけどな(苦笑い)。」
官兵衛:「殿が元気な内は、それで通用するのではありますが。」
隆景:「……そうだ官兵衛。」
官兵衛:「なんでしょうか?」
隆景:「此度のいくさで加増となったモノはおらぬと聞いておる。
で。今後、粉骨砕身殿下のために。
と戦ったにも関わらず。
と言う連中が出て来ることが予想される。」
官兵衛:「御意」
隆景:「その不満を直接殿下に述べることは大名とは言え。
雇われの身である手前。することは出来ない。
仮に出来たとしましても
その瞬間。良くて領地を失い、
普通で首と胴体が離脱することになる故
誰もしようとはしないであろう。」
「でも不満は解消したい。」
「その捌け口となる現在の最右翼が
先のいくさで軍監を務めたそなた官兵衛殿になる。」
官兵衛:「……なるんですよね……」
隆景:「ただ幸いなことに
此度のいくさに参加したモノよりも
官兵衛殿は年長者であり、
いくさ場での実績もあるため
官兵衛殿に直接。
と言うことにも実はなり難い。」
「……となると矛先は何処に?
を考えていきますと
官兵衛殿より若く、
官兵衛殿の息子である長政殿に向かうことになる。」
「従って今後しばらくの間。
長政殿に対する加増の話は拒否を貫く必要があることは先程述べたとおり。」
官兵衛:「左様」
隆景:「だからと言って本心は殿下に対する。
表向きには官兵衛殿に対する不満が解消されることにはならない。」
「そこでだ。」
「此度の遠征で官兵衛殿同様。殿下に取り次ぐ任にあたっていた
(……三成に全ての責任を押し付けてしまうのはどうであろう?)
ちょうど今回の遠征軍全体と対立したことでもあるしな。」
官兵衛:「……悪い人ですね。」
隆景:「(少なくとも)お前には言われたくないわ(苦笑い)。」
「なんなら全ての元凶は官兵衛にあり。
と言い触らしてやって貴殿を
徳川邸に逃げ込ませてやっても構わないのではあるが?」
官兵衛:(心の声)のちの秀秋の代わりに秀次を毛利に送りこんでやろうかな?
「いやいやそれはご勘弁を。
もう少し長生きをさせてください。」
隆景:「ただまぁ殿下より長く生きた時のことは考えておいたほうが良いのかもしれぬな。」
官兵衛:「(三成悪人説と共に)長政に伝えておきます。」
話は朝鮮渡海のキッカケを作りました太閤・秀吉へとシフトしていくことになります。