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生殺与奪の権-その3-

その頃、唐入りのため朝鮮半島に在陣している諸将に対し、

太閤秀吉逝去に端を発する国内事情の混乱のため

対外作戦継続は困難と判断した五大老及び五奉行が中心となり

朝鮮半島からの撤退が決定。

現地諸将に対し、秀吉の死は秘匿にされたまま撤収を指示。

その後、幾度となく押し寄せる明・朝鮮連合軍を退けながら順次撤退。

11月25日の島津・小西両軍が釜山を発したことにより

10年近く続いた唐入りは終わるのでありました。

そんな中。帰国の途についた長政に父・官兵衛は……。


長政:「帰って来るなり驚きましたよ。」

官兵衛:「お前の手柄の全てが三成の手によって

     揉み消されていたことにか?」

長政:「……否定はしませんけれども。

    そのことよりも何ですか。今の上方の情勢は。」

官兵衛:「秀頼様の齢が齢である故。

     誰かしかが政務を代行しなければならないのは仕方ないこと。

     ただそれを誰が担うことになるのか?が問題となっていて。」

長政:「奉行職。とりわけ三成に重きが置かれている状態であるため

    私や福島。加藤などは面白く思ってはいない。」

官兵衛:「殿も殿で外様と子飼いとの仲を取り持つことに腐心されてはいたのであるが。

     肝心の子飼い同士の軋轢には無頓着な処があってな……。」

長政:「さすがに殿下の前で喧嘩するわけにはいきませんからね……。」

官兵衛:「結果。口達者のほうが得をして来た。と……。」

長政:「その殿下も今は亡く。」

官兵衛:「三成が秀頼様を利用しているように

     他の子飼いの諸将の眼には映ってしまっている。」

長政:「それでも殿下が生前。

    我ら恩顧の諸将を集め、

    秀頼様のことを頼む。

    と仰って頂けたのであれば

    まだ良かったのでありましたが。」

官兵衛:「ほとんどの諸将は朝鮮半島に。

     国内にいるモノは殿から勘気を被り

     領土を削り取られてしまっている。」

長政:「その殿下の目となり耳となって来たのが。」

官兵衛:「石田三成であった。と……。」

長政:「殿下からは我ら。特に槍働きで貢献して来たモノどもは……。」

官兵衛:「危険人物に映っていたのであろうな……。」

長政:「で。最期、太閤殿下が頼りにせざるを得なかったのが。」

官兵衛:「外様の大老衆。とりわけその中でも最も強い影響力を保持していた。」

長政:「徳川家康であった。と……。」

官兵衛:「そうなると家康が

     かつて亡き殿が信長様の孫・秀信様を使って権力を掌握した流れを

     踏襲しようとすることはごくごく自然な流れであって……。

     殿が亡くなるや否や。

     殿の晩年。不当な扱いを受けた。

     三成の手によって。

     と考えている諸将に対し、

     縁組や加増による多数派工作を始めている。        

     現に家康は、お前に対する縁組の話も持って来ているのであるが。どうする?」

長政:「……どうする?……と言われましても。

    私には糸姫がおりますが……。」

官兵衛:「その糸姫を棄てて家康の側に付くか。

     縁談を断って三成の言うとおりの人生を歩むのか?

     を聞いているのだよ。

     私は家康に付いて行く所存であるが。」

長政:「えっ!?父上と妻のどちらか一方を!?

    そんな重い選択を帰国早々。

    私は今。迫られているのでありますか?」

(官兵衛。無言でうなずく)


その後、長政は亡き太閤秀吉の尾張時代からの功臣であり、

豊臣家の宿老。蜂須賀正勝の娘・糸姫と離別。

家康の養女を新たな正室として迎え入れるのでありました。

この件により

黒田家と蜂須賀家は、たとえ江戸城内であっても挨拶を交わさない関係が

127年にも渡り続くのでありました。


家康に付いて行くことで一致した黒田父子は慶長3(1598)年12月。

中津を離れ上洛。

伏見屋敷に居住し、

天下の流れに後れを取らぬよう

豊臣家内部の情勢に目を光らせるのでありました。

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