密命を帯びた官兵衛は……
文禄の役失敗について、秀吉より赦免された官兵衛は引き続き京伏見や大坂にて政務に励む傍ら
秀頼誕生に伴い不必要となった豊臣家の血のスペア。
のちの金吾・秀秋の行く末を案ずるのでありました。
これが足利幕府の時代でありましたら
将軍以外の兄弟は自動的に出家。
身の安全を確保させることにより
六代将軍義教や十五代将軍義昭のように
もしもの場合に備えることが出来るメリットがある一方、
僧侶となっていた弟を後継者とするべく還俗させたのちに実子が誕生したことが
天下を揺るがす大乱へと発展。
ただでさえ脆弱であった幕府の力が
ほぼ名前だけに失墜する原因になったことが
結果。今(16世紀末)の豊臣家の天下に結ぶ付くことになった。
その流れを日本全国の民が知っている。
そんな中、誕生したのが豊臣秀頼。
惣無事令体制下。日本国内でのいくさが治まっているとは言え。
未だ武装解除が為されているわけでは無く、
ひとたび戦いが始まったら
太閤殿下の意志とは無関係に切り取り勝手を始めてしまうことは
先の朝鮮出兵で軍艦を務めた官兵衛自らが痛感したこと。
そのいくさの要因ともなり兼ねない
太閤・秀吉後の
豊臣政権のトップに立つ可能性を持った人物が
実子・秀頼に関白である秀次。更にはのちの金吾・秀秋と
三つの選択肢が存在する現状。
このままではいづれ血の粛清かクーデターが発生することが目に見えている。
……なんとかしなければ……。
実子・秀頼は太閤直系である故このままで問題無し。
いづれ秀吉の後継者となり得ることとなる。
一番心配なのが関白の地位にある秀次であるが
既に齢26。数多くの実績を積み重ねている由、
官兵衛がどうこう出来る立場で無し。
そんな中、なんとか秀吉・秀頼サイドとも折り合いを付けることが出来、
今後の秀頼政権を支える重要な協力者となり得る可能性
(まだ変な癖がついていない)を秘めており、
かつ官兵衛の力でなんとかすることが出来るのが
若干12歳の秀俊。のちの金吾・秀秋。
彼が身を立てることが出来る場所について
太閤・秀吉と折衝を重ねる中、
太閤・秀吉より。
ある密命を帯びた官兵衛は
とある人物のモトへ向かうのでありました。
その人物とは?
毛利家重臣・小早川隆景。その人でありました。