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隆景隠居-その5-

隆景:「(吉川)元長が

    日向の地で病没してしまったことが悔やまれる……。」

官兵衛:「あの九州攻めは、攻めてる側も苦しめられた戦いでありましたからね……。」

隆景:「島津の抵抗があと4日続いていたら。」

官兵衛:「兵糧尽き、そこいらに生えているモノを見繕って飢えを凌いでいた秀長軍のところに。」

隆景:「島津の新手が押し寄せて来たら……。」

官兵衛:「無事では済まなかったでしょうね……。

     しかもその時の先鋒は私でしたからね……。」

隆景:「しかも島津は当主である義久殿が降伏したのちも。」

官兵衛:「ほかの兄弟は言うこと聞かず。

     勿論。当主である義久殿の意を汲んで。であることは承知して居りますが

     日向方面から侵攻した秀長隊のみならず。

     肥後方面から殿・秀吉本隊の撤退の邪魔を続ける始末。」

隆景:「その結果が島津本領の安堵。」

官兵衛:「これに懲りた殿・秀吉は

     同じ失敗をしないよう

     兵站を見直したことが    

     次の小田原攻め。

     続く東北平定戦に活かされた点では良かったと言えば

     良かったのではありますが。」

隆景:「毛利家から見ますと、

    兄・元春に続き、

    主君・輝元と共に初陣を飾り、

    その後の関係も良好であった

    元春の嫡男。(吉川)元長をも……。

    失うモノの多い遠征でありました。」

官兵衛:「毛利家中において輝元様と同年代となりますと……。」

隆景:「私の弟たちは輝元と同年代にあたると言えばあたるのではありますが、

    彼らは輝元から見れば叔父にあたってしまう。」

官兵衛:「その叔父さん連中と輝元様とが同年代にあたる言うことは。」

隆景:「輝元から見て従弟となる私の弟たちの子供は

    一時。輝元の養子となった秀元同様。」

官兵衛:「1つ下の世代になる。」

隆景:「そんななかにあって

    輝元に遠慮すること無く話すことの出来る

    少し年上の唯一の親戚であったのが。」

官兵衛:「日向の地で亡くなられた元長殿であった。と……。」

隆景:「元長の齢と吉川家の力を持ってすれば。

    たとえ(安国寺)恵瓊が自身の利益に奔り、

    毛利を利用しようとしたとしても。」

官兵衛:「輝元様と気軽に話すことの出来る元長殿であったら

     恵瓊殿の暴走から輝元様の身を守ることが出来た。」

隆景:「ただ現在。それが出来るのは

    私の兄弟のみ。

    輝元から見れば煩いオッサン連中しかいない……。」

官兵衛:「その煩いオッサン連中であったとしましても

     力で持って輝元様を縛り付けることが出来る唯一の存在が。」

隆景:「自分で言うのもなんですが、私だけとなってしまっている。」

官兵衛:「そうなりますと毛利家の将来は……。」

隆景:「恵瓊次第と言えば恵瓊次第になってしまうのが現状ではある。

    だからと言って毛利家に人材が居ないわけではない。

    ただ現状で恵瓊よりも強い影響力を行使することが

    出来るモノが存在しないのが弱点であることは否定しない。」

官兵衛:「このまま行きますと隆景殿の父・亡き元就様の遺訓を守ることが出来ず。

     天下か滅亡かの賭けに討って出ることになりますね。」

隆景:「その点については

    輝元が輝元であるので

    変な意味で勝負することは無いと思う。

    ただ本人が気付かぬ内に

    取り返しのつかない失態を演じる危険性は秘めておるが。」

官兵衛:「勝負に出るのであれば。」

隆景:「すんなり秀元があとを継ぐべきであったと思う。

    ただ彼にしても養子であるため。

    苦労することになるとは思われますが。」

官兵衛:「武田勝頼のように。でありますか。」

隆景:「ただ誰が継ぐことになるにせよ。

    最も心配しているのは

    毛利の意志とは無関係に土俵の上に立たされてしまうこと。

    それだけの影響力持っている

    と言うことを

    輝元にせよ秀元にせよ。自覚することが出来ていないことが大問題。」

官兵衛:「無自覚な当主が知らぬ間に危険な賭けに巻き込まれぬよう

     これまで手綱を捌いて来たのが

     隆景殿であり、亡き兄上・元春殿であった。と……。」

隆景:「たぶん恵瓊はそうはしない……。」

官兵衛:「……となりますと。」

隆景:「領内統治に明るく。

    毛利本家に対する忠誠心に問題無く。

    輝元に対し諫言しても粗略に扱われることの無い

    影響力を保持しているモノ。

    となると……

    (吉川)広家になるのであろうか……。」

   「ただ彼は父・元春の影響もあってか。

    豊臣家とは距離を置いていることもあり、

    (恵瓊に比べ)外交で後れを取ることが難点ではある。

    難点ではあるが

    信用して良い人物であることに変わりは無い。」

官兵衛:「あとは輝元様が恵瓊殿と広家殿。

     どちらの意見を採用するかに

     毛利の将来は掛かっている。」

隆景:「勿論父・元就以来の重臣に能ある者多数存在しているのではあるが、

    輝元があれ。

    でありますのでね……。

    忠言したことに対し、輝元が逆上でもされようモノでは。

    命が幾つあっても足りないから。と……。」

官兵衛:「その意見を代弁してうるさ型を演じているのが隆景殿であった。と……。」

隆景:「さすがの輝元も、私を上意討ちしたあとに待っているモノぐらいは理解しておりますので。」

官兵衛:「ただそれを広家殿に担わせるには。」

隆景:「彼(広家)は輝元より年上で無いですからな……。」

官兵衛:「そうなりますと元長殿を失ってしまったことが。」

隆景:「のちのち毛利を危険な賭けに巻き込まれることになるのかな?

    あくまで仮定の話でありますが。」

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