表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/90

太閤秀吉の命数-その9-

官兵衛:「あと答えていない質問となりますと……」

    「……殿恩顧と外様との仲。

     特に近接している地域同士の間柄を良好なモノにしようと

     殿自らが尽力されていることでありますが、

     私と毛利殿の関係のように

     殿と外様大名との調整役を担っているものもおりますが、

     想像しますに。

     本能寺におきまして信長様が倒れられた後。

     各地の係争地域で働く軍団長の役目を担っていた諸将の内。

     すぐさま光秀追討の動きに転じることが出来たのは

     境を為す毛利殿との和議を結ぶことが出来た殿・秀吉だけであった。と……。」

隆景:「それものちに知った話ではあるが

    太閤殿下が信長の死に接したのは和議を結ぶ前のこと。

    たまたま光秀が我が毛利へ放った間者が間違えて太閤殿下の陣地に紛れ込んだから

    殿下は本能寺の報に接することが出来たとか。」

官兵衛:「殿より先に毛利殿が知ることが出来たのであれば。」

隆景:「敵の敵は味方。

    とばかりに

    畿内に陣取る光秀と連携を採り、

    太閤殿下を挟撃していたことも充分あり得る選択肢の1つであった。と……。」

   「和議を結んだ直後に。

    紀伊の衆からの情報で知ることとなり、

    この時点でも

    まだ追いかけようと思えば。

    の状況ではあったが。」

官兵衛:「隆景殿が東進策を否決したため、我が軍は無傷で光秀と相対すことが出来た。」

隆景:「思えばあれがあったから今の毛利家があるのであって。

    仮に追いかけ首尾よく秀吉を打倒することが出来たとしても。」

官兵衛:「輝元殿の才覚では、天下を制するどころか。」

隆景:「今の領地すら維持することは出来なかったかもわからぬ。」

官兵衛:「隆景殿のお父上の遺訓が……。」

隆景:「功を奏したと言うことなのかな?

    実際のところ。

    太閤殿下の天下統一に毛利家は何ら貢献することは出来ていないのではあるが。」

官兵衛:「その本能寺当時。

     そのほかの重臣はどうであったのか?

     を見ていきますと

     北陸において、上杉殿を押し込んでいた柴田勝家でありましたが。

     未だ戦いが続いていたこともありまして、

     全軍を率い、畿内になだれ込むことは出来なかった。

     でもこれはまだ良いほうでありまして。」

隆景:「本能寺の直接的な原因ともなった四国遠征軍については。」

官兵衛:「本能寺が伝わるや否や、渡海を前に軍の体を失い。」

隆景:「関東管領として上野の国に配備された滝川殿は。」

官兵衛:「畿内から遠いこともありまして

     伝わった時期がそもそも遅かったため、

     北条との直接対決を余儀なくされ敗退。

     ほうほうの体で本貫地のある伊勢へ逃走。」

隆景:「二条城にて主・信忠を失った甲斐信濃に至っては」

官兵衛:「武田旧臣の反乱に遭い、甲斐の河尻は敗死するなど

     権力の空白地帯が生じることになった。と……。」

隆景:「そうならないよう特に隣接しているモノ同士。

    仲良くしておきなさい。

    と言うことはわからないでも無いことではあるが。」

官兵衛:「外様が使う側。殿恩顧は使われる側。

     と言ういびつな関係が生じてしまっている。」

隆景:「そんな外様衆の中で

    本能寺後。

    織田家の領土を簒奪した人物が

    1人居るように思うのであるが。」

官兵衛:「……徳川殿でありますか。」

隆景:「左様。

    彼は律儀者のフリをして

    従順なる殿下の家臣を演じ続けてはおるが、

    徳川殿を臣従させるために殿下はどれだけの苦労をされたのか。

    覚えておろう。」

官兵衛:「殿の実の母と妹を人質に差し出して。

     どちらが優位に立っているのかわからぬモノでありましたな。」

隆景:「それだけのことをして

    やっと上坂した徳川殿が

    このまま素直に従い続けることになるとは。」

官兵衛:「到底思えませぬな……。」

隆景:「しかもこれまで東国全般を見ていた秀次があのような事態となり。」

官兵衛:「その代わりを担う形で調整役を務めることになったのが徳川殿。」

隆景:「先の秀次粛清の折、殿下からあらぬ疑いを掛けられた

    殿下恩顧の諸将を救ったのも。」

官兵衛:「徳川殿。」

隆景:「もし今。殿下の身に何かが起こった場合。

    殿下が頼らざるを得ない大きな勢力の全てが外様衆である中。」

官兵衛:「殿下の天下を脅かすことになる人物を1人挙げるとするならば。」

隆景:「信長の時もそうであったように。

    徳川殿が蠢く危険性が十二分にある。」

官兵衛:「そのため関の東側に押し込んだのではありますが。」

隆景:「唐入りと無縁であったこともあり、国力を弱めているわけではない。」

官兵衛:「一方、もし我が主君・秀吉が。

     の時、

     拾様を守るべき殿恩顧の諸将並びに

     徳川殿の対抗馬となるべき毛利殿など大大名は、

     唐入りため課せられた軍役を確保すべく奔走した結果。」

隆景:「領内を疲弊させたばかりでなく、

    恩賞が無かったことに対し、

    殿下の手前。声には出さぬが。

    不満に思っているものも居る。」

官兵衛:「そんなある日。殿が亡くなり

     徳川殿が天下を狙った時。」

隆景:「唐入りで苦しめられた諸将はどのような動きを見せることになるのか。」

官兵衛:「ただ現状は。」

隆景:「最も警戒すべき徳川殿に頼らざるを得ない状況に

    殿下は追い込まれてしまっている上、

    殿下もそのことに気付いては居ない御様子。」

官兵衛:「全ての原因は……でありますか。」

隆景:「どちらが長く生きることが出来るのか……。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ