太閤秀吉の命数-その8-
官兵衛:「織田時代の同僚で、殿が権力を獲得するにあたり。
殿に協力され。
大きな領土を与えられた丹羽様が
相続と同時に
領土と重臣双方が殿の一存により削り取られた件でありますが。
最も大きな理由としましては
(丹羽)長重殿に
亡き父・長秀様が遺された123万石を治めることが出来るのか?
と言う純粋な能力の問題に関することが1つ。
重臣につきましては
殿が信長様の訃報に接せられ。
光秀追討のため備中から急ぎ畿内を目指している時。
私・官兵衛が殿に対し述べた言葉が
殿の中にありました
織田家の一員としての立場から
羽柴秀吉独立へと方向転換する切っ掛けとなりましたような……。」
隆景:「官兵衛のような有能な人物を
大封を治めている大名の側に置いておくのは
豊臣政権にとってプラスに作用することは何も無い。
だけれどもその能力を用いないのは勿体ない。
そしてそれら重臣どもは
自らが大将になるだけの野心を持ち合わせては居ないため
手元に配備しても歯向かって来ることはまずあり得ない。
ならば引き抜いてしまおう。」
官兵衛:「私は有能で無いから九州に飛ばされたのでありますが。
それが原因か。
隆景殿は他家が羨むような領土を得たのと引き換えに
毛利殿と殿双方の対応追われることになってしまっている。」
隆景:「迷惑な話でしか無いがな……。」
官兵衛:「3つ目の理由を捻り出しますと……
信雄様のような
生まれながらにして大きな領土を得てしまいますと……。」
隆景:「苦労知らずが故。
自身の立場。影響力をわきまえず。
その場その場で耳触りの良い言葉に釣られ、
あっちにフラフラ。こっちにフラフラ漂うことになる。」
官兵衛:「逆に耳障りなことを述べる
忠臣に対しては。」
隆景:「変にプライドが高いこともあってか
大事な言葉を述べた家臣を遠ざけるばかりか
粛清で持ってでしか自身の立場を誇示することが出来なくなってしまう。」
官兵衛:「似たようなかたが毛利家にもいらっしゃるそうでありますが?」
隆景:「否定はせん。
それどころか最近。もう1人増えているようにも感じるのであるが。」
官兵衛:「あとは先程述べました殿恩顧の。
向上心を表に出すタイプの家臣同様。
大きな力を有する者が
殿の本拠地近くに存在するのは好ましくない。
しかもそれが殿のかつての同僚。
それも上司にあたる立場のモノでありましたら。」
隆景:「尚更のこと。
だからと言って30分の1に減らされるのも考えモノではあるがの……。
長重殿は大いに不満に感じていることは
想像するに難くは無いのであるが。」
官兵衛:「ただそれに立ち向かうだけの能力が長重殿に無ければ、
その神輿を担ぎ上げることの出来る重臣も殿の陣営に引き込まれている。
丹羽家時代よりも。
今の長重殿よりも多くの所領を得て。」
隆景:「たとえ今。長重殿が立ち上がったところで
かつての家臣が長重殿。太閤殿下。
どちらの味方になるのかは一目瞭然。」
官兵衛:「毛利家もそうしたいのが本音なのではありますが。」
隆景:「代わりに差し出しました小早川1つで御勘弁願いたいものであります。」