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太閤秀吉の命数

官兵衛:「とうとう動きましたな。」

隆景:「ある程度予測することが出来た事態とは言え、

    官兵衛。

    殿下の近くで見ていたそなたから見て

    殿下の話はどれくらい信用出来るものかな?」

官兵衛:「答えるまでも無いでしょう。」

隆景:「そうだよな。秀次が今。謀反を起こす理由なんか無いからな。」

官兵衛:「ですよね。

     殿と秀次。秀次と拾(秀頼)様の年齢差を考えれば、

     いづれは。

     と秀次は考えていたかもしれませんが

     少なくとも

     今。絶頂の殿下に刃を向けたところで

     与党の無い秀次に勝算はありませんし、

     そもそも歯向かう理由もありませんからね……。」

隆景:「太閤殿下が実の息子の行く末を考え。

    今の内に障害となるモノを取り除いておこう

    と考えてのことであるとは思うのであるが。」

官兵衛:「それにしても急でしたね。」

隆景:「……もしかすると

    殿下自らは気付いていない衰えを

    拾様のもう1人の親である淀殿が気付いたのかもしれぬな。

    あそこは最期に衰えると言うからの……。」

官兵衛:「どこが衰えたのでありますか?」

隆景:「そう遠くない未来。そなたにも降りかかることになる衰えだ。

    それこそ答えるまでも無いであろう。」

官兵衛:「仮に殿に衰えが見られることに淀殿が気付いたのであれば

     殿が生きている内に、実子・拾様にとって邪魔となる秀次を亡きモノにしよう。

     と殿にけしかけ、

     殿は殿で、淀殿が気付いている殿の衰えに気付いていない。

     拾様が一本立ちすることの出来る年齢。

     少なく見積もってあと10年。出来ればもう+10年は生きることが出来る

     と判断し、

     浅野。細川と言った

     殿亡きあと拾様を盛り立てる役割を担うこととなる

     長年の功臣との間に少なからぬ溝を作ってでも

     秀次などと言う人物は存在しなかったモノにしておきたかった。と……。」

隆景:「殿下も危険な賭けに出ましたね……。」

官兵衛:「と申されますと。」

隆景:「もし今。殿下の身に何かがあった場合。豊臣家はどのような状態になると思う?

    似た事例をそなたも殿下も経験していると思われるが。」

官兵衛:「もう少しヒントを頂けますでしょうか。」

隆景:「殿下が天下を握るキッカケとなった出来事と言えば。」

官兵衛:「亡き信長様が明智光秀の謀反により、非業の死を遂げたから。」

隆景:「もしその時、信長の嫡男たる信忠が二条城を枕に討ち死にすること無く、

    取るものも取り敢えず。

    一目散に本国である美濃・尾張に逃げることが出来たのであれば。」

官兵衛:「備中から京へ戻った殿が光秀を葬ることが出来たとしても。」

隆景:「殿下の立場が強まることになるとは言え、

    織田家は信忠を中心に動くこととなり。」

官兵衛:「殿は今でも織田の一家臣として活動することになった。と……。」

隆景:「その信忠の役割を担うことの出来る豊臣家唯一の存在が。」

官兵衛:「今回粛清された秀次。」

隆景:「もし殿下の身に何かがあった場合、

    まだ数え3つの拾様と同じ立ち位置にあったのが。」

官兵衛:「殿が担ぎ出した三法師(織田秀信)。」

隆景:「その三法師を担ぎ出した殿下では無く、

    当時の殿下と同じく

    織田家の重臣たる柴田勝家と連携する信忠の三男・信孝の手に渡ったことにより。」

官兵衛:「錦の御旗である三法師の奪い合いが始まり。」

隆景:「その争いに勝利したのが。」

官兵衛:「我が殿。豊臣秀吉。」

隆景:「信長と血の繋がりのあるモノ。

    信長以来の家臣が数多存在していたにも関わらず

    信長と言う

    独りのカリスマを失うと同時に

    離合集散の道を歩んでしまったことを思うと。」

官兵衛:「政権の中枢を担う大老格に

     殿の譜代が存在しない

     今の豊臣家において

     もし殿の身に何かが起こってしまった場合。」

隆景:「どのような事態が発生することになるのかがわかるであろう。」

官兵衛:「その心配が杞憂に終わることになるのか否かを左右することになるのが。」

隆景:「殿下自らの余命。

    それに全てが掛かっている。」

官兵衛:「殿の殿自らへの見立てが正しく、

     拾様が元服を迎えるまで生きることが出来たのであれば

     力を付ける前に秀次を潰したことが功を奏すことにはなりますが。」

隆景:「もし淀殿の見立てが正しかったのであれば。」

官兵衛:「まだ元服には程遠い

     拾様しか居ない豊臣家は

     他の有力大名に利用されることになる。」

隆景:「これは秀次が生きていても

    拾様の立場は同じものであったと思われるから

    秀次粛清の決断自体は間違っていなかったもしれないが。」

官兵衛:「少なくとも豊臣家以外の要因で

     豊臣家の天下が揺るがされることにはならなかった。」

隆景:「仮に秀次と拾様が。

    となったとしても

    今回の粛清で殿下との関係に傷が付くことになった

    浅野や細川など

    殿下恩顧の諸将が

    間を取り持つなど

    決定的な対立とならぬよう奔走することになった。」

官兵衛:「その仲の良かった秀次も今は亡く、

     自らの立場が脅かされる原因となった

     恨みとまでは申さぬが

     少なからぬ

     わだかまりを残す拾様のために

     浅野や細川が全てを投げ打ってまで忠節を尽くすことになるのか?

     殿亡きあとに。」

隆景:「還暦間近の殿下にとって

    拾様元服までの

    あと10年は長い道のりになりますな。

    もしもの場合。次に出て来るのは……」


(以下続く)

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