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隆景・官兵衛「淀殿を語る」

官兵衛:「先程、殿と秀次様の関係について。

     表向きは良好。

     と述べたのでありましたが。」

隆景:「何かあるのか?」

官兵衛:「殿は拾(秀頼)様誕生の折、秀次様に対し

     『日本の5分の4は秀次に譲る。』

     と仰られましたほかにも。

     秀次様の姫君と拾(秀頼)様を縁組させることにより、

     殿と血縁関係に無い。

     ただでさえ権力基盤が弱いところに

     殿の実子が誕生し、

     更に不安定な立場に追い込まれる。

     新たな政争の火種となり得る秀次様を

     秀次様の姫君を通じ補強するなど

     3代目は実の息子・拾様が関白になるけれども

     少なくとも秀次様が天寿を全うされるまでの関白は

     秀次様のモノですよ。      

     と、殿は調整に苦心されているのでありますが。」

隆景:「優秀な人材を養子縁組させることにより体質の強化を図る。

    組織によく見られることでもあり

    特に問題は無いように思うのであるが?」

官兵衛:「その養子縁組の話。でありますが

     秀次様の居ないところで決められた話でありまして。

     悪いことにその顛末を

     秀次様は殿と会う前。

     正確には湯治先である熱海で

     その話を伝え聞いてしまった。と……。」

隆景:「昼の会議で決まったことを

    団らん中に引っ繰り返してしまう

    家族経営の会社によく見られる

    引っ繰り返された

    身内以外の側にとっては

    『やってられっか』の出来事だな……。」

官兵衛:「それでも実の娘を通じ、

     少なくとも自身の関白の地位が安泰になるのなら。

     とこれまで通り。

     殿下と良好な関係を続けているのでありましたが。」

隆景:「ありましたが?」

官兵衛:「ここに来て新たな局面が出て来まして。」

隆景:「その局面とは?」

官兵衛:「これまで殿は

     京に秀次様。

     大坂に拾様を配置し、

     殿御自身は普段。伏見に居を構えながら

     京と大坂を行き来していたのでありましたが。」

隆景:「拾様を伏見に呼び寄せた。と……。」

官兵衛:「拾様ばかりでは無く。」

隆景:「これまで京に居た諸将も伏見に集められた。と……。」

官兵衛:「京に残されたのは。」

隆景:「秀次様ただ独り。」

官兵衛:「なら秀次様も呼び寄せれば済む話なのではありますが。」

隆景:「殿下はそれをしなかった。」

官兵衛:「これまで殿が苦心されて来た秀次様と拾様との調整が

     水泡に帰すことにもなり兼ねない。」

隆景:「気ぃ使いの殿下にしては珍しい。」

官兵衛:「秀次様が暴発して来ることをむしろ望んでいる様な今回の措置。」

隆景:「果たして殿下自らの意志で為されたことなのであろうか……。」

官兵衛:「秀次様は殿自らの子ではありませんが

     少なくとも殿の一族ではありますので。

     殿が秀次様のことを

     蔑ろにするようなことは無いと思うのでありますが……。」

隆景:「官兵衛。今、何と申した?」

官兵衛:「秀次様は殿の実の子ではありませんが。でありますか?」

隆景:「それも大事なことであるが

    次に申したことも加えないと不十分である。」

官兵衛:「殿の一族ではありますので。」

隆景:「うむ。今、太閤殿下の身内の中で

    秀次様とは真逆の立場にあるモノが独りだけ居ることに気づかぬか?」

官兵衛:「殿の実の子で殿の一族で無いものでありますか?

     そんなモノは独りも……。ん!?」

隆景:「気付いたか?」

官兵衛:「……淀殿でありますか?」

隆景:「正確には淀殿は殿下の実の子では無く、実の子である拾様の母君ではあるが。」

官兵衛:「淀殿は殿下の実の子の母君ではありますが、淀殿は豊臣の一族では無い。」

隆景:「豊臣の一族では無い淀殿にとって大事なのは。」

官兵衛:「実の子である拾様のみ。」

隆景:「その淀君にとって、現関白・秀次様の姫君との縁談を通じ、

    実の息子。拾様に豊臣家3代目の関白の地位が譲られることになっているとは言え。」

官兵衛:「秀次様の寿命が尽きぬ限り、淀殿の実子。拾様に関白の位は巡って来ない。」

隆景:「しかも秀次様は、殿下より長生きすることがほぼ確定している。」

官兵衛:「殿亡きあと、その約束手形が履行される保証の無い。」

隆景:「今の関白。秀次様は。」

官兵衛:「邪魔。」

隆景:「しかも淀殿は、淀殿の母君であるお市の方様とは異なり。」

官兵衛:「織田家のモノでは無く、浅井家の人間である。」

隆景:「その浅井家を滅ぼしたのは。」

官兵衛:「織田家であり。」

隆景:「その織田家に仕え、浅井家滅亡に多大な功績を挙げたのが。」

官兵衛:「殿である羽柴秀吉。」

隆景:「更に悪いことに、本能寺後。お市の方様と共に身を寄せた

    柴田勝家を滅ぼしたのも。」

官兵衛:「我が主君。豊臣秀吉。」

隆景:「彼女にとって豊臣家は確かに嫁ぎ先ではあるけれども。」

官兵衛:「父と母の仇でもある。」

隆景:「それらから考えると、淀殿にとって大事な人物は。」

官兵衛:「拾様ただ独り。」

隆景:「太閤殿下ですら。」

官兵衛:「拾様の地位が確定すれば用済み。」

隆景:「元々が。」

官兵衛:「親の仇であるから。」

隆景:「……と考えるのが自然なのかな?と思うのであるが。」

官兵衛:「殿は完全に籠絡されてしまった。と言うことでありますか?」

隆景:「こればかりは解らぬが。普通に考えていくと、そうなるのかな?」

官兵衛:「このまま行きますと殿と秀次様の関係は。」

隆景:「幸せでは無い終わりかたを迎えることになる。

    と見るのが……なのかな?」

   「秀次様との距離感は間違えないほうが。

    少なくとも殿下存命の内は。」


こうした情勢の中、秀秋の話に入ります。

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