第十三夜:堕ちる少女(赤いメイド服)
校舎3階の教室である。ベランダのない窓にそって、校舎の高さをゆうに超える立派な楠が何本も植えられており、太い枝を青々としげらせている。
窓の外を大きな翼がよこぎったかと思ったら、楠の上から落ちてゆく人影が見えた。赤いメイド服を着た美しい少女である。一瞬だったが、頭につけた赤いレースの髪飾りがハッキリと目に焼きついた。
私はあわてて窓へかけよると階下を見た。しかし、赤いメイド服の少女の姿はどこにもなかった。
目の錯覚かと疑ったが、左右を見やると、おちこちの教室から数名の生徒がおなじように顔をのぞかせている。
左となりの教室から顔をのぞかせて心配げな表情をうかべていたのは、青いメイド服を着た少女と緑のメイド服を着た少女だった。
服のデザインがまったくおなじところを見ると、おそらく赤いメイド服の少女の友だちであろう。
私の視界の左隅に見切れた楠の太い幹を黒い影がごそごそと登ってゆく。
すると、人間の倍の大きさはあろうかと云うシマフクロウがあらわれて、黒い影へおそいかかった。
幹からたたき落とされた黒い影の正体は赤いメイド服の少女だった。
赤いメイド服の少女は感情のまったく読めない表情で楠を見上げていた。視線の先に巨大なシマフクロウの姿があった。
シマフクロウは木の上の巣を守るかのように留まっていた。巣の中には3羽のヒナ鳥と天辺の割れた卵がひとつあった。赤いメイド服の少女はその卵を狙っているらしい。
いろいろと謎はのこるものの、一応の〈状況〉は把握した。とばっちりを避けるべく窓を閉めようとしたら、教室のだれかが、
「暑ちいよ!」
と、私をとがめた。
〈おわり〉




