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NNTの俺が異世界に飛ばされた件  作者: COCO
第二章 地獄
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#05 地獄への階段その壱

「そこで待ってな」


そういうとゲンは部屋を出た。眼鏡の男の声がする。ゲンを知っているような感じである。そのまま悲鳴、怒声が飛び交いだす。だがしばらくすると急に静かになった。そしてゲンが戻ってきた。


「お待たせ、直ぐにここを出るぞ!」


ゲンが新人に指示を出した。


「ゲンさん、俺・・・」


泣きだす新人。


「泣くな、話は後だ。まだ安全じゃないんだぜ」


そういうとゲンは新人に手を差し伸べ、新人を助け起こした。そのまま部屋を出、玄関へと誘導する。外に出ると浮浪者の男が2人、ゲンを待っていた。ゲンはその2人に声をかける。


「様子は?」


「まだ気づかれてはいないようです」


「すぐにここを離れよう」


そういうとゲンと2人の浮浪者は新人を誘導しながら屋上へ向かった。そしてそこには・・・


「ヘリコプター」


新人の目の前に現れたのは黒いヘリコプターであった。


「あれに乗るんだ」


ゲンはそれに乗るよう新人を促した。ヘリに乗り込む4人。ゲン以下3名はテキパキと発進準備をする。明らかに玄人である。すぐさまヘリは動き出した。


「新人、もうしばらくの辛抱だ。これから俺たちのアジトに向かう。悪いがこのアイマスクをしていてくれ」


そういうとゲンは新人にそれを渡した。アジトがどこにあるのか新人に分からせないためだろう。これはこれで新人に不安を与える行為なのだが、もう後戻りもできない。ここでそれを拒否できる立場ではないのだ。


「わかりました」


そういうと新人は素直にそれを身に付けた。


「すまんな」


ゲンはそういうと他の2人に発進の指示を出した。新人は少し耳鳴りがする。ヘリのプロペラが回りだしたのだ。しかし奇妙なほど静かだ。この黒いヘリが特殊なものである証だろう。


「発進します」


パイロットシートに座った浮浪者の男から発進を知らせる声がした。そしてヘリは異様なほど静かに飛び立ち、そのマンションを後にした。





あれから数時間が過ぎた。


新人はゲンに案内されたアジトに到着。アイマスクをはずされたのは今いる部屋についてからだ。ここがどこなのか全く分からない。しばらくここで休むようにいわれ、ゲンたちは足早にどこかに行ってしまった。ドアにはカギが掛かっており出ることはできなかった。


(一体なにが起こったのだろう?なぜ自分が追われていたのかさっぱりわからない。そしてゲンさん、明らかにおかしい。浮浪者のふりをしているが、只者ではない)


新人はそんなことを考えながらベッドでまどろんでいた。


(どこだここは?白衣を着た人たちがたくさんいる。実験室?なんだあの人は?緑色のスライムのようなものがある。人の形をしている?ひとなのか?あれがひとなのか?)


そこで目を覚ます新人。夢を見ていたようだ。


(なんだったんだ?あの夢は?)


新人はその夢のおかげで汗びっしょりかいていた。その得体のしれない夢について考え出したとき、部屋のドアが開いた。





「新人、待たせたな」


そういいながらゲンが部屋に入ってきた。さっきの2人もだ。ただ3人とも見た目は別人のようだった。髭を剃り髪を切り風呂に入り清潔な服に着替えていた。同じなのは声だけである。


「なるほど、浮浪者の姿はダミーだったんですね」


新人は薄ら笑いをしながら3人を見渡した。


「俺たちのことは後で説明する。まずはお前のことを聞かせてくれ」


ゲンは椅子を引き、新人の前に腰かけた。他の2人は無言で一人はゲンの後ろに立ち、もう一人は机でこの会話を記録する係のようだ。


「いいですよ。ここまできたらあなたを信用します」


「すまないな。決して悪いようにはしない」


ゲンは新人を見据えて話し出した。


「まず名前を確認させてくれ、内弁慶 新人、これで間違いないな」


「はい」


「出身地と生年月日は?」


「東京です。生年月日は・・・」


なぜだろう、思い出せない、こんなことは当たり前だったはずなのに・・・


新人が答えられないと悟ると、ゲンは質問を変えてきた。


「なら、親兄弟は?友達は?」


それも答えられない。新人はどんどん不安になっていった。知ってて当然と思っていたことが、自分は思い出せないのだ。今まで、気にもしてこなかったのが不思議なくらいだ。


「ゲンさん、俺、自分のことがわからない。思い出せないんだ。記憶喪失なのかな?」


泣きそうになる新人。だが、そんな彼を憐れむようにゲンは声をかけた。


「心配するな。俺たちが付いている。それにお前は記憶喪ではない。もしそうなら、本人はそれを自覚しているものなんだ。だがお前はいままでその自覚がなかった。なんの違和感も抱かず、俺たちとあの公園で酒盛りをしていたんだ。」


励まし、慰めるゲン。さらに言葉を続けた。


「大丈夫、お前のことは俺たちが知っている。さっきお前の髪の毛から年齢を読み取らせてもらった」


「髪の毛?」


「ああ、テロメアを調べれば大体の年齢がわかるんだ。新人、お前は22~25歳だ。それとお前の過去も調べてある」


「平成5年8月22日生まれ、MARCH大学の4年生だったんじゃないか?」


そういわれた途端、新人の脳裏に過去の記憶が流れ込んできた。


「そうだ、俺、就活が上手くいかなくて、ビルの屋上から・・・」


何かを思い出そうとした途端、ゲンがそれを遮った。


「そうだ、お前は自殺したんだ。だが、かろうじて命はとりとめた」


「えっ?僕助かったんですか?」


「そうだ、そしてそれから人が変わったかのようにコツコツ働き出し、小さいながらも会社を設立。そこでも朝から晩まで働き続けたんだ、死ぬ直前まで」


「あの~それって?」


「そう、この世界でお前という人物はすでに死んでるんだ」


信じられないという顔の新人。ゲンに聞き返した。


「本当ですか?別人じゃないんですか?」


「さっきテロメアを調べた時に確認した。お前は間違いなく内弁慶新人だ」


きっぱりと言い切られ、返す言葉もない新人。しかし、全く理解できない。なら自分はなんなのだと・・・

そんな彼にゲンはまた質問をした。


「新人、今、平成何年だと思う?」


新人は少し考えて答えた。


「えっと、その人を別人とするなら、ゲンさんの話からすると、平成30年くらいじゃないですか?」


自分はここに生きている。ならその会社を建てた人は別人である。その考えのもとに新人は答えた。だが、それを聞いたゲンが冷静にそれに切り返してきた。



「今は、元安20年。新人、お前が自殺を図った平成27年から50年経っているんだ・・・」



あまりの突拍子のなさに言葉が出ない新人。そんな彼にゲンは言葉を続けた。



「本来、この世界に存在してはいけないはずの者。そんな人たちを俺たちはこう呼んでいる、『ワンダラー』と」



ゲンはこの世界がどんな軌跡を経てきたのか新人に語りだした。


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