#02 最終面接
俺は第一志望の最終面接の会場にいた。
さすがに緊張する、ここを通れば全てが報われるのだ。
親にも先生にもサークルの同期、後輩、そして彼女にも、胸を張って報告できる!
俺は自分が呼ばれるまで、自分の席でコチコチになっていた。
そんな俺に救いの手を差し伸べるかのごとく声をかけてくるやつがいた。
俺の隣の席の男である。順番的に1つ先に面接に呼ばれる男だ。
ひょろっと背が高い、でも笑うとすこし幼さがみえるような、見るからに要領のよさそうな男だった。
普通なら、大抵、大学名を聞くことから話し始めそうなもんなんだが、そいつは違った。
いきなり俺に向かって、
「君、受かるよ。」
といってきたのだ。
そしてつらつら話続けた。
「そして、僕と一緒に働きだす。僕にはわかるんだ、君とはうまくいく。」
突然のことにどう返答しようか迷うところだが、こういわれると悪い気はしない。
こちらも調子をあわせて話し始めた。
「君は受かりそうだね、僕なんか緊張しまくりなのに、全然余裕あるって感じだもん!」
「いやいや、見た目だけさ、でも、人を見る目はあるつもりなんだ。君と僕は相性がいい。同じ匂いがするんだ。」
それから僕らは、自分たちの順番がくるまでお互いのことを話し合った。
高校で勉強だけでなく、部活も、バイトも、遊びも、恋愛も一通り楽しんだこと。
大学に入って、少し呆けたけど、すぐ行動しだしたこと。
サークルを立ち上げ代表になり、ボランティア、バイトに励み、短期の語学留学をし、単位も要領よく取得してきたこと、などを話し合った。
そして驚いたことに、彼もほぼ自分と同じ行動をしていたのである。
そして、最終的に僕らが出した結論は、
できるやつは、考えることもやることも一緒w
というものだった。
お互い顔を見合わせてひとしきり笑った後、彼が面接室に呼ばれた。
席を立つ前に彼は、手早くメモ用紙にメアドと携帯番号を書き、こちらに渡してくれた。
「話し込んでたんで、連絡先交換してなかったよね、あとでこっちに連絡入れて!よかったら後で飲みにでも行こうよ!」
こちらとしては願ってもないことである。
そして彼が立ち去り間際、俺は聞き忘れていたことを反射的に聞いてしまった。
「そういえば、何大なの?」
彼は軽く振り返り言った。
「僕?w大だよ」
その瞬間凍りつく俺…
そんな俺にお構いなしに彼は言った。
「君、K大だろ?わかっちゃうんだよね、僕にはw」
そしてさらに彼はのたまった。
「それより下は絶対ありえない!」と断言してきた。
見事に買い被りです、ありがとうございます…
彼はこちらに軽く手を振りつつ面接室に消えていった。
その後すぐ自分の面接だったわけだが、頭の中が真っ白で
どんなことを聞かれ、どんなことを話したのか、まったく憶えてませ~~ん!
その後、彼の連絡先に連絡を入れなかったのは言うまでもない…