一章 三部
さて、ホームルームもつつがなく終わり、授業が開始された。一時間目は数学だ。もちろん将来生徒会長を狙う僕としては、しっかりと授業を聴き、ノートもしっかりと取っている。先に行われた、中学に入ってから初めての中間テストでは五教科全てにおいて、平均点以上の成績を取ることができた。このまま今のペースでしっかりと勉強していけば、生徒会長などちょろいものだろう。
さて、僕は授業を聞くのは勿論の事だが、授業中の人間観察もしている。人の心理というものをしっかりと学んでおきたいからだ。
ノートを一通り取り終えて僕は、教室を見渡した。まず、目に入ってきたのは内藤の姿だ。言っておくが別に内藤を意識しているから、最初に目に入った訳じゃない。たまたまだ。
内藤を見るとまだ、ノートを取っていた。ふっ俺よりノートを取るのが遅いなんてまだまだだな。やはり歯牙にもかける必要はないわ。本当に何故こんなやつが、クラスの中心になっているのか理解に苦しむ。
次に目に付いたのは内藤グループに属している女子の一人だった。確か、名前は斉藤優実だったかな。
自慢では無いが、クラスメイトの名前はあまり覚えていない。覚えていないのではなく、必要性を感じないからあえて覚えていないのだ。この違いは大事だから間違えてはいけない。
その斉藤さんはノートをとるふりをしながら、携帯を弄っている。全くあんな奴がいるなんて内藤グループの品が知れるわ。まぁ容姿はめちゃくちゃ可愛いのだが。しかし、容姿がよくても、あのような態度ではどうしようもない。内藤もグループのリーダーならばきちんと注意をすればいいものを。
それに斉藤さんは先生にばれなければ、何をしてもいいとでも考えているのだろう。全く困ったものだ。
っとここで、先生が説明を始めたのでそっちに集中する。切り替えは大事である。斉藤さんはそれでも携帯を触っている。本当に困ったものだ。
再度、ノートを取り終わり、教室を見渡した。
ふと、僕の左となりを見ると円居円の姿が目に入った。彼女はいそいそとノートを取っていた。
彼女は僕とは違った意味でこのクラスから孤立している、僕はクラスメイトから意図的に距離を取っているが、彼女はクラスメイトから避けされているのだ。
彼女が避けられている理由は、僕ははっきりとは知らない。しかし傍から見て避けられている事は明白だった。積極的に休み時間にもクラスメイトに話しかけているが、口下手なのか会話が続かず、すぐに自分の席に戻ってきては顔を伏せている。
まったくそこまでして友人とは作るものなのだろうか?出来る時は自分からずとも勝手に出来て僕の後ろから付いてくるはずなのに。
円居から目を離し教室を見渡すと、手紙私をしている人や、隣同士こそこそ話をしている人達がいる。友達関係を続ける為の努力も大変だな。
そして僕は天井を見上げて、小さく呟いた。
「皆友達友達……。友達ってそんなに必要なのかよ。俺にはすぐ離れていって、上辺だけの付き合いの友達なんていらないね」
こうして、いつもと同じ事を繰り返しながら学校での生活を終えたのだった。