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小説家になろう

作者: 白生荼汰
掲載日:2026/04/24

みねバイヤーン様のエッセイ『AI小説のみわけかた』に触発されて書きました。

https://ncode.syosetu.com/n8715mb/


テーマはAIですが、執筆にあたりAIは用いていません。

「あたったらさー、まるもうけじゃーん」

 いかにも軽薄そうな口ぶりで同僚が IQOSを揺らしてみせる。

 旧来のチャコールなら灰を振りまいていたところだろうな、とぼんやり考えて、そういえばチャコールとはフィルターの種類で、別に紙巻きたばこそのものを指しているわけではないのだなどということを思い出した。

 渋谷雄一は大手出版社に勤める編集者だ。

 大学卒業後、幸いにも希望通りに文芸関係の部署に配属された。

 自分でも小説を書き、他社が運営する投稿サイトで公開をしている。

 残念ながらランキングに乗ったことがないのは、投稿サイトのニーズと雄一の作品が噛み合わないせいだろう、と信じることにしている。

 間違っても面白くないなどとは自分では認めがたかった。

 雄一の同僚である清水は口先で IQOSをふかしつつ、大仰な身振りで肩をすくめる。

「みんな誤字脱字チェックするのにつかってるっしょ? 校正さんだってさー、今時みんなAIだって」

 どうだろうな、と雄一は適当に返事を返して、電子タバコの香りを口の中で転がした。

 雄一が担当している作家の校正のひとりは、少なくとも人間だ。深い見識とあいまった人柄が滲むようなコメントには時々唸らされる。

 だが、清水のような見ていない人間は、売り上げと話題性だけがすべてで、裏方の人間性などどうでもいいのだろう。

「だからさー、片っ端から売れてる作品食わせて、流行りのフレーズでドーンドーンと出力してやってさー、なろうでランキングに載せーの、派手に煽りくっつけーので売り出せば、間違いなく売れんだろ。vtuberみたいなもんだよ」

 売れそうな要素組み合わせりゃいいんだし、そういうの、どうせ昔っからやってるんだしさ。ちょこっとデーターベースをでっかくするだけだってのに、爺さん方は腰が重いよな、老害だよ老害。と清水は嘯く。

「昔っから?」

「ほら、俺らがガキの頃、半分メモ帳みたいな少女小説あったろ。あれ、仕掛け人の人とこないだ飲んでさー。電車男とかオタ婚もその人がかかわってるってよ」

 すげーよな、と無邪気に笑う清水は本当にそんな与太話を信じているのだろうか。

 少女小説に関しては、当時の看板作家が出した暴露エッセイを読んだことがあるが、意外な作家が変名で参加していたのには驚いた。でも、仕掛け人というならその作家であるような書き方だったから、以降のブームにも関わっていたとは考えづらい。

 まぁ、周辺の人間がやたらに関係者を気取るのはよくあることだからな、と結論付けて、言ってみるだけで自分は何もしない清水の誇大妄想を受け流す。

 そんなにも売れると確信しているのなら、自分で始めればいいのだ。

 清水が飲んだという仕掛人とやらも、どうせ清水の同類に違いない。ちょっと聞き齧った話を自分の手柄のごとく話しているのだろう。

 嘲弄していたのに、ふと手を伸ばしたのは、ちょっとした出来心だった。

 伸び悩むアクセス解析を眺め、自作の誤字を発見し、少しだけ文章を調えるつもりでAIに文章を流し込み、出来上がったそれに目を通した。

「これでいいじゃん」

 もとより、自分の作品にはどこか無味乾燥な手触りがあるのを自覚していた。

 AIで整えたそれは、むしろ自作よりも血が通ったように思え、気が付けば投稿ボタンを押していた。

 翌朝、初めてのランキング通知を受け取った。

「はは……これでいいんじゃん」

 いちから自分で書いた作品よりもずっとウケが良かった。

「……なら」

 ライトノベルは部署が違うが、それでも流行りはなんとなく抑えている。清水がベラベラ話す、どこかで聞いた二番煎じの企画よりもずっと、時流に乗ったセンスには自信がある。

 ランキングに頻出のキーワードを拾い上げ、軽く組んだあらすじで生成させると、多少の粗はあるもののそれほど悪くない小説が仕上がった。

 どうしようもない矛盾や、おかしくなっている単語をざっくり浚えて、試しに投稿してみる。

 自作を底にしていた作品よりもさらに評価は高く、ランキング上位につけたためか、つられて他の作品へのアクセス数も跳ね上がった。

「やっぱり俺、センスはあるんだよ。あとは大衆ウケするかどうかで」

 労力がAIで出力するだけになれば、今まで執筆に振り分けていた余力を他にも回せる。アクセス数を稼ぐノウハウを学び、適切な文字量を適切な時間帯に定期投稿したり、これまでとは違うところにも気を遣えるようになった。

「あ、とうとうトップページに入れた」

 AI作品を定期的に投稿するうちに、上位に掲載されるのが当たり前になる。

 書籍化作家と並ぶ名に、承認欲求が満たされた。

「あれ、俺何してるんだろう」

 ある時、雄一は自分が小説を書いているのではなく、AIに書かせた小説を編集しているに過ぎないことに気がついて愕然とした。


「俺、小説家になれてない」

個人的にはAI使わないので、手順とかよくわかりません。

誤字脱字チェックで口語とか指摘されるの萎えるので、今後も使わない予定です。

使いこなせば便利なのはわかるんだけど。


そして、オールハンドメイドなのに、自作がAI小説の特徴に当てはまってしまうことがちょくちょくある。

すでにジャケット着てるのにまたジャケット羽織らせちゃったり、ドアを出たはずなのにまたドアを開けちゃったり、キメ台詞的なものを繰り返しちゃったり、時間と距離が無茶苦茶だったり、糸まで使って距離測ったのに音速で移動してたり、タイムテーブル作ったはずなのに日にちが矛盾してたり、うっかりやらかすことあるよね……。(全部やらかしたことがある)

短文ポエムとか、情緒死んでる会話文とかも、やりがち。


むしろそういうのカバーしてくれるのがAIじゃないのか。使ってないからってAIに夢見てたみたい。がっかり。

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― 新着の感想 ―
後世に遺したい名作ですね。 そしてこれの面白さが分かる人が後世にいる時点で、後世はわりとろくでもない世界になっている。
とても面白かったです。 これから実際に起こる……いえ、既に起こっているのかもしれませんね。読む方としては、AI小説のあの不自然さが無ければ楽しい小説なのですから。 それを書いている人がこれを読んだらど…
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