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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ちょっぴり違う使い方をした身体強化魔法 【一話完結】

掲載日:2025/10/13

この作品は、「カクヨム」の方にも投稿しています。

ガランッ


と音を立てて、タンクの得物であるハルバードがその手から零れ落ちる


ずしゃ


とタンクの背中から飛び出た鎌と化した腕が引き抜かれ、支えを失ったタンクは赤色(血)の海へ落ちていく。


 …と、前振りが長くなったな。

 俺の名前はルーカス。職≪ジョブ≫は戦士だ。今はセリビア迷宮第7層のフロアボス『マンティ・ディエラ』と絶賛睨み合い中だ。ここの階層主は、土の鎧を纏った人間大のカマキリみたいな外見をしていて、土の鎧を纏ってる事から土魔法以外は使えないって情報だ。


 と思ってたんだが、フロアボスが腕の鎌と素の腕力だけで風魔法≪断ちエアスラッシュ≫の真似事をやりやがったんだ。おかげで『攻撃魔法』を防ぐ≪障壁魔法シールド≫を素通りしてウチの魔術師エルナがやられちまった。


 だが、エルナも雷魔法と炎魔法でフロアボスの翅を焼失させたから、飛行能力を削いでくれただけでも前衛職の俺からしたら十分有難いってモンだ。


 ちなみに俺の状態といえば、剣は無事。刃こぼれも、ほぼナシ。

風魔法もどきで浅く切られた額は、血が右目を塞いでいるが潰れていないだけマシか。左肩は、ちと深いな。動かせねぇ訳じゃないが、血が手にまで流れてきてっから、さっさと止血とかしねぇと血で滑って剣がすっぽ抜けちまうな。


 そして最重要の勝機は、ナシ。


 追加で俺の魔力も残り少ねぇときた。身体強化で消費する魔力量を考えると刀剣スキルの発動は1~2回が限界だ。

この少ねぇ手札でどうする?


「ギギェェェェーーーーー!」


 っと、先にフロアボスが痺れを切らしたみてぇだな。


全身に叩きつけられる殺気は、手負いではあるものの些か衰えていないようだ。


「ちっ 考えても仕方ねぇか!」


(不可視の風魔法モドキを察知するためにも、身体強化で動体視力をいつも以上に強化するしかねぇか!)


「うおぉぉあ”あ”ぁぁぁーーー!」


 こちらも殺気をぶつけるように吠え、残り少ない魔力体全体に、意識して『頭部』にはいつもより多めの魔力を巡らせてフロアボスに向けて走り出す。


瞬間。


「!?」


 雷の様な何かが脳内で弾け、ほぼ無意識に体が動く。

踏み出した右足で急制動をかけつつ半身になり、上体を軽く起こす。


 直後、フロアボスの土魔法≪石礫弾ストーンブリット≫が地面から強襲し、その全てが空を切る。


「———ッ!!」


 またもや何かが脳内で弾け…。

 いや、今度はハッキリと左目に『鋭い何か』が当たるのを知覚し、僅かに首を右に傾ける。


 そのコンマ数秒後に、見えない斬撃が顔のすぐ横を通り抜け、髪の毛が数本、ハラリと落ちる。


「なっ⁉」


(なんだ⁉ 

今、死角の土魔法を避けて、見えねぇハズの風魔法モドキも避けれたぞ!?)


「ギ、ギィ⁉」


(どうやら、向こうも「なんで避けられたのか分かんねぇ」って面してるみてぇだな)


「敵がビビってる時はァ!攻め時ってなぁ!」

「ハハッ!」


 当然、自分自身もナゼ避けられたのかは分からないが、無理やり『そういうものだ』と割り切るように笑い飛ばしながら再度、フロアボスに肉薄する。


 こういう割り切りの良さも冒険者には必要なのだと、冒険者としての人生経験が知っていたからだ。


「ハァ!」


 狙うは左腕の関節、土の甲殻に守られていない関節部分に目掛けて剣を振り下ろす。


 フロアボスが一瞬遅れて左の鎌でガードするが、未だ困惑から抜け切れていないのか、その動きにはキレがない。


ブシッ!


 左腕の関節から青い血が噴き出る。が、切断にまでは至っていない。


「ギッ⁉」


 フロアボスもようやく反撃にと、右の鎌を戦士の頸目掛けて横薙ぎにふr


「ぅおっと!」


 右の鎌が降られる『前に』戦士はしゃがみ、そのまま左へ転がるようにフロアボスの横薙ぎと入れ替わるように下を潜り抜ける。


「シッ!」


 転がる勢いのまま立ちあがりつつ、置き土産とばかりに右脚の膝裏に横薙ぎを一閃。

フロアボスが体勢を崩すが深追いはせず数度のバックステップで距離を取る。

なぜなら…


ゴゥ!


と、自分を追うように、地面から複数の土魔法≪地槍アースランス≫が天を衝く。


 あのまま深追いしていれば確実に死んでいた自身を幻視し、直前の横薙ぎと土魔法を『攻撃前に』察知できたという2つの事実に、今までとは違う冷や汗をかく。


「ふぅーー」


 深く呼吸をして心を落ち着かせつつ、剣先をフロアボスに向けようとした時、右手に濡れた感触が


「あ?」


 フロアボスの攻撃を避けきれなかったかと思い、軽く外傷を探すも見当たらない。だが、普通ではありえない量の鼻血が顎を伝い、剣を握る手を濡らしていた。


(ちっ、あんま時間かけれねぇのか。

ま、ここまで来たんだ。後はもう走り抜けるだけだな)


ぐい

と乱暴に手の甲で鼻血を拭い、改めて剣の切先をフロアボスに向け、覚悟を決める。


次で終わらせる、と。


ボロッ

とフロアボスからの魔力供給が断たれた≪地槍アースランス≫が崩れ始め、一際大きな破片が地面に落ち、音を立てる


 瞬間、戦士が剣身を顔付近に持ち上げると同時に走り出す。

その直後に、何処かから飛んできた石が剣身に当たる。


 戦士は剣身で見えていなかったが、戦士が走り出すと同時にフロアボスは崩れた≪地槍アースランス≫の破片を右の鎌で器用に掬い上げて飛ばし、戦士の目を潰そうとしたのだ。


「見えてんだよ」


剣身から睨むように、ギラリと鋭い眼光がフロアボスを射抜く。


「キギェェーーー!」


 その視線に恐怖を覚えたのか、矢鱈めたらに両腕の鎌を振り回して、不可視の斬撃を飛ばす。


縦切り 横薙ぎ 袈裟斬り 横薙ぎ……


 が、その全てがギリギリで避けられ、ルーカスには掠りもしない。

それどころか、飛んでくる不可視の斬撃を回避しながらも真っ直ぐに距離を詰める。その行動に恐怖を覚えたのか、フロアボスからの攻撃が一瞬止む。


 その隙を見逃がすルーカスではなかった。最速で踏み込み、温存していた刀剣スキルを放つ。


「≪強・一刃斬パワー・スラッシュ≫」


スキルの発動と共に1歩踏み出した瞬間、


ブゥゥン!

と魔術師が火魔法で焼失させた筈のフロアボスの翅が、自身の脚力と合わさり辛うじて飛ぶように後ろに飛び、剣の間合いから紙一重で逃れる。が、ルーカスは構わず剣を振り下ろす。


 その時、スキルを纏った剣が手からすっぽ抜け、剣の間合いから逃れたフロアボスに直撃した。当然、ルーカスは剣がすっぽ抜けた事に驚いていた。訳ではなく、すっぽ抜けた剣が、的確にフロアボスの左の鎌を粉微塵に破壊した事に驚いたのだ。


 そして同時に、決定的な勝機でもあった。


 しかし、スキルの硬直までは消せない。それに、武器もフロアボスの方に飛んで行ったから武器などどこにも……、あった。


ルーカスの足元に、タンクの得物であるハルバードがあった。


「キ、キィィィ」


 フロアボスがスキルを纏った剣の直撃に未だに立ち直れずにいると、フロアボスの目の前にルーカスがハルバードを両手に携え、今まさに振り下ろさんとしていた。


「≪強・一刃斬パワー・スラッシュ≫」

「ギキ、ギェェェー!」


フロアボスが最後の力で右腕の鎌をルーカス目掛けて振り下ろし


グシャッ!


 しかし決死の一撃は届かず、ルーカスが振り下ろしたハルバードはフロアボスの頭部を叩き割った。


 フロアボスが魔石だけを残してその肉体を構成する魔力が霧散し始めて、ようやくルーカスは残心を解いき、一息つく。


「ふぅーー」


「ハァ…ハァ……ぐっ、あ……頭が。 

流石に、負担かけすぎちまったか。」


「それよりも…アイツら引っ張って、転移門まで行かねぇと。」


 当然だが、地上への転移門は各階層の『入口』にある。しかし、今は『7層最奥』。つまり、ボス部屋の先に進んで8層にたどり着けなければ、転移門を使って地上に戻れないのだ。


 ルーカスはだんだん激しくなる頭痛と、動体視力を上げたために酷使した脳へのダメージに鼻血と血涙を流し、意識が朦朧としながらも気合でパーティーメンバーを運び、3人全員で8層への扉を開ける。

その先には


「うぉあ!すっげぇ! 島が浮いてる。あんなん、初めて見たぜ!」


 ルーカスの視界には、迷宮特有の幻想的な風景が広がっていた。そしてこの8層はルーカスの言葉通り、大量の浮島群があるエリアだった。


 だがここで、遂にルーカスの体と脳は限界を迎えた。

 ルーカスがその場に座り込む。


「ハ、ハハ。こんな最高の景色なんだ、少し休んでもバチは当たんねぇだろ。」

「皆、悪いな…少し……休憩するわ。」


 そのままルーカスは、仲間とともに静かに眠りについた。





後日談

 4人の冒険者が8層へ足を踏み入れた。


「いやー、あのフロアボス地味に強かったよねー!」

「まさか素の力で魔法の真似事をするとは思いませんでしたが。今後もこのような敵がいる事を想定して戦術を立てなければ。」

「ただの身体能力だけで魔法を再現されては、魔術師としての威厳が下がりかねませんわ!」

「ま、あれはちょいと工夫すれば多少見えるからマシじゃろうて。」

「でもそのヒントが、フロアボスの土魔法だったのは盲点だったよね~。」


4人共、服装は所々砂や血で汚れているものの、特に目立った外傷は無いようだ。


「———ッ! 待って!近くに何かあるわ、警戒を!」

「「「⁉」」」


 魔術師の探知魔法に何かが引っかかり、仲間に警戒を呼び掛ける。

 即座に全員が各々の武器に手をかけ、辺りを警戒する。


「あら?これって」


 魔術師の探知魔法が示す場所には、ほぼ朽ち果ててしまっているが、『3つ』の冒険者タグだけがあった。


「これは、私たちと同じギルドのタグではありませんか。」

「へー、私たちより前に8層に到達した人がいたんだね。」

「ギルドの公式では、7層のボスを突破し8層に足を踏み入れたパーティーは過去に1つもいなかったんじゃないの?」

「いんや、7層のボスは倒したんじゃろう。じゃが、ここで力尽きちまったんじゃろうな」


神官が『3つ』の冒険者タグの前で膝を付き、両手を組み、祈る。


神官の祈りが終わり、地上への帰還ポータルへ足を向ける直前、緋色の長い髪を頭の後ろに1つにまとめた少女が、『3人』の冒険者に、太陽の様な笑顔を向けて言った。


「君たちの冒険はアタシ達が受け継ぐから、見守っててね!」

「おーい、リーダー!何やってんの~、置いてくよ~。」

「ごめ~ん、すぐ行く~!」

                                ~fin~

今後は、自分の気が向いた時に、自作したプロットのみを投稿していこうと考えています。(流石に戦闘描写とかがキツすぎる)

いざ投稿するにしても、【ネタ配布】とかのタイトルにするとは思いますので、気長にお待ちください。

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