弱いものいじめについてのただの会話【ショートショート】
皆は、弱いものいじめについてどう思う?
俺はどっちかっつーと反対派だ。弱いものがいじめられるのは当然の摂理で、至極当たり前の話だということは誰もが理解しているだろう。しかし、それでも弱いものいじめは絶対に良くない。
弱いものいじめじゃ後になって惨め――いじめが犇めく現代社会、昔の社会、未来の社会。どれだけ進歩しようと、退化しようと、いじめだけは絶対に無くならない。人間であるっつーことはそーゆーことだ。
しかしだからといって、その弱いものいじめっつーのを歓迎してやるかどうかは話が別だ。絶対に無くならないし、運命的で必然的であるっつーのと、それが間違っているかっつーのはあまり関係がないことだからだ。
どうせどっかで誰かが誰かをいじめてるんだから、それなら俺だけは誰にもいじめらず、そしていじめずにいてもいいだろう。
そういったことを、昔からの幼馴染にして現在も同じ高校のクラスメイトである叶白雪に話したら、予想とは全く違う返答が返ってきやがった。
「弱いものいじめは絶対にしてはいけないことだって? そんなの、最低最悪な偽善だ。弱いものいじめはよくない。じゃあ、強いものはいじめてもいいのか? そんなの差別じゃないか」
一理はあるかもしれないが、逆にいえば一理しかない返答。共感はしなかった。
「でも、強いものならいじめられてもやり返せるだろうし、耐えれるだろうよ」
俺がそう返すと、白雪は目を鋭くさせてからこう言った。
「そんなの関係ない。いじめはよくないことなんだから、たとえ被害者が何も感じなかったとしても、加害者にやり返したとしても、だからといっていじめが良しとされるワケじゃないだろう」
そりゃあ、確かにそうだ。確かにそれは正しい。
でも、そもそもの話――
「それっていじめなのか? 被害者が何も感じていないいじめを、お前はそれをいじめと呼ぶのか?」
ただ少しだけ疑問に思ったことを、そのまま口に出した。すると、白雪が呆然とした表情で固まる。まるで、『予想外だ』とでも言わんばかりの様子で。
もしかして、俺は人生で初めてコイツを論破したんじゃないか――と、そんな淡い期待は一瞬にして砕け散った。
「なら、いじめはなかった、で、終わり。ハッピーエンド、で、終わり。なぁんだ、いじめなんて無かったんだ。良かったね! それじゃ、終幕!」
……これはいじめだし、正真のバッドエンドだった。
白雪は勝ち誇った表情で、俺に話の終わりを告げた。
弱いものみじめ。
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