運命の車輪
けれど、あいにく今はまだ午前9時だっていうのに太陽は燦々としてて空気がむせ返るように蒸し暑い。朝一番だというのに、もうすでに汗ばんできた肌着を取り換えたいところだ。
せっかく今日から夏休みなのにこんな時間に登校しなければならないなんて全くふざけた話である。今朝のニュースではアナウンサーが、今日の天気は三十度を越える夏日になるでしょうとかほざいていて、そのあとお天気お姉さんがこれでもかとばっかりに晴れすぎで嫌ですねえと言っていたけど
あんなのは嘘だ。だって本当にこの天気は異常気象と言えるものだし、現に天気予報通りに気温が上がったせいもあって僕の制服は今にも張り裂けそうなほど湿ってしまっている。
「ったく! なんなんだよこりゃあ!」
僕は怒りに身を任せて足元にあった水玉模様になった革靴を廊下に向かって蹴り飛ばすようにして捨てた。
「お行儀が悪いぞ、新士君」
その様子を見つめながら腕を組んだままの久遠寺桐葉の一言が僕の苛立ちをさらに煽る。
しかし、彼女の言うことももっともだと思ったのでおとなしく反省しておくことにする。
ともかく今は一刻を争いそうなことから手をつけるべきだと思った僕は、ちーちゃんをどうするか決めておくことにした。
「……あっちが騒いでるとすれば、当然こいつらを探し始めたりするよね?」
そう言いつつ目の前のガラス箱の中で横たわる男を指差す。
「でもこれだけの量があるし……」……いやまぁ探されればすぐわかるんだけどね。一応聞いてみただけさ。
『いえもう遅いですよマスター』
は?遅すぎる?なんでだ?