撃墜された戦車
不思議だわよねそんな状況なのにこんなに冷静なんだもの。
あっ、そうよ。だからつまり私が言いたいことは私があそこでたまたまあの場所にいて貴方を助けられたのはある意味では私の意思と言えるんじゃないって思うんだ。
あれは完全に偶然の出来事であって私は別に望んで貴方を助けた訳じゃないんだけど貴方はもし自分が危なくなって困っていたら同じことが出来るのかしら?
という問いで結論として言えるのはこうよ「出来ないと思う」な訳であるけどそういうことでしょだってそれこそ私の場合はあんな危険な場所にいたことすら覚えていなかったのだからね。
勿論助けるなんて選択肢すら頭になかったはずだし。ううんまぁそもそもの話としては貴方を助ける理由がないということなので結局は関係ない話ではあるのだけれどそれはそれこれはこれよ。
例えばさっきのコンビニでのことを考えてみても私は貴方を見捨てていたはずなのよ。
お礼を期待するということは私にとってそれだけでリスクが発生する行為になるのだけど私はそれでもお礼を期待したでしょうし。例えその結果何もお返しがなかったとしてもそれはそれはしょうがないことだしそれは私の方の問題だと思うのですよ。
むしろ私は私のせいで怪我をしたような被害者から対価を要求されるのが普通だと私は思うのよ。
つまりね、貴方を助けた時点で私はもうこのことについて考えることはやめて他のことをしているべきだったと思うわけよ。
それにしても私があの時見た夢はきっと未来予知だと思うのよね。それで考えれば私はどう考えてもこの次に死ぬのだからやっぱりここで死んでいてもおかしくはないはずだったということなんだけど、でも実際あの場面では助かったみたいになったわ。
これが不思議な話なのは事実だしそういう意味では私をここまで連れてきた貴方には一応感謝しておくべきなのかしら……ごめんなさい今のは嘘よ。
本当はただ私の思考を邪魔してほしくなかったというだけです。というかどうして貴方はこの話を今更思い出させてるのよ。また私の意識が何処かに行ってしまって今度は永遠に帰って来なくなってしまうかもしれないのに一体何の目的があって……。
はい! ちょっと待ったー!! なんで今まで黙って聞いていたと思ったんだよ? 俺も入れろよっ。
この世界の終焉を救うのは救世主であるべきだろ?……そうだ、少年。
お前は一体何のためにここにいるんだ!?
(……)
3
『 あの時 』
ー1ー……その出来事があったのはいつだったか。……もうよく覚えていない。
ただそのときの出来事だけは鮮明によく覚えている。……あれはまだ幼かった頃の話だ。
ーー2人の少年少女との出会い…… ーーそれが始まりの物語である。……そう、これは運命の出会いの話なのだ。
1人目は……ある男の子。年は近いのだが彼は私より歳上でいつも何か本を読んでいたイメージがある。確か歴史を研究しているという話を聞いたことがあった。その男の子はあまり喋らないが賢くて礼儀正しく紳士的な印象。そんな雰囲気が大人にも好かれていたというのもある。
2人目の女の子。彼女も少し変わり者で、でもどこか頼り甲斐のあるような優しい子だと周りからは高評価を受けていた。その子とは仲が良くて何でも言い合える親友のようなものだったが、最近お互い多忙につきなかなか会えていない。彼女は今どうしているだろう。
そして私はというとあまり友人は多くなく、学校での友人も数人程度。部活や趣味仲間で知り合い程度の人が数人程いる程度だった。休日はほとんど家に籠りスマホを弄ったりゲームをしたりして時間を潰すことが多かった気がする。こんな私にとっては、とてもじゃないけど恋愛なんて考えられないほど退屈なものだった。そしてそれは高校に入っても同じことである