教皇の詞
そして、 【名前】を聞くことに成功したのである。
ちなみに今度ちゃんと彼女の名前を教えてくれるそうだ。
まぁ名前が分からないと話し辛いしね。そして彼女は自己紹介を始めた。自分はなんて呼べばいいかを聞いた所少しだけ困った顔をしていた。そして考えた結果ヨハンナということになった。
別に呼び名なんてなんでもいいけどさ。
そしてヨハンナは彼に自分のことを色々と話した後手を振ってどこかへと行ってしまった。
彼の方もヨハンナが居なくなったのを機に、さっきまでヨハンナが入っていた暖炉のある部屋に向かった。
そこにはヨハンナの妹らしい子がおりそこでようやくさっきの夢のことを思い出したのだ。彼が夢の中に出てきた人のことを思い出してる間に彼女が自分の名前を告げてくれた。
そして彼はその夢の内容を語った。自分の名前が出てこないことや妹のことが忘れられないこととか正直に全て伝えた。
そして、彼女が自分に触れている間だけは、何かを思い出すのではないかという仮説についても話した。そうしているうちにだんだん目の前にいる少女の顔から感情らしきものが消えていった。
最初は気のせいかと思ったが何の変化も無いので気のせいじゃないことが分かった。おそらく妹さんの記憶が自分の中に流れ込んでいるんだろう。そしてとうとう最後のほうには記憶だけでなく顔や性格、名前も全てが流れ込むようになった。彼の意識は徐々に薄れていく中で、最後に彼女はこう言ったのを聞き取った……。
「ごめんね」と そして彼もその言葉を最後に彼女のことを思い出せなくなった。それからどれほど眠っていただろう分からない、というか時間が止まって時間が経過していないのかもしれない。
そして再び時が動き出したようだ。どうやらここは本当に塔の中のようなのだが扉が見当たらない。それにさっきまでの場所はなんかとても寒かったような気がする。
つまりここから出たければ外に出るしかないだろう。さすがに帰るにしてもここのことを知らない以上道は限られる