ぼくと挑戦者の誓い
どんな因果か分からない。
どんな未来が待っているのか分からない。
「名乗れ」
そう言ったのは僕だった。ぼくの目の前で剣を構える者に命令しているのだ。
「我が名、天草十四郎」
「挑戦するか天草の一族よ」
「お相手願います。早川勇気殿」
僕は鞘から剣を引き抜き、構えた。
こうして始まったのは、次代の男子たちの戦いだ。
挑戦する者と挑戦しない者の、いのちを懸けたくだらない争いだ。
「天草流、壱鉄」
「早川流、壱錆」
それらは己らの編み出した技だ。初代天草流と初代早川流の壱の技だ。
天草流は一撃が重い。早川流は一撃が素早い。
今はどちらも欠点が多く、技としては次代に継がせられないような下手さだ……しかし次代へ繋げられれば今の技はもっと素晴らしいモノになってくれる。
技は次の代で花開く。次代で花開かなくとも、そのまた先に繋げればいつかきっと良い技になってくれる。今を見るのか将来を見るのか。
技を生み出すものは次代を考えなければならない。
僕たちは戦った。戦って戦って……日が沈むころに決着はついた。
彼の流派――天草流は諦めたのだ。
「この今に早川流が勝つか……」
「勝ったのではない、天草流は途中で諦めたのだ」
「天草流の恥を曝してしまった……我を殺すがいい。敗北した天草流は次代へ繋げられない」
「――アホを抜かすな」
と、ぼくは彼の頬を引っ叩いた。引っ叩くことで解決できることがあるのか分からないが、剣の道を歩む者として、いのちの重みは知っておいてほしかった。
「生き抜いて次代へ繋げよう」
ぼくはそう言って剣を鞘に納めた。
最後には、共に剣の道を究めようと握手をした。
ぼくの子孫たちと、彼の子孫たちが切磋琢磨できるようにと、誓いを立てた。