疑問
「なーんか、刺があるんだよなぁ…………」
「ふぅん……」
昼休み、東雲と昼餉の握り飯を頬張りながら、弓月は昨夜の吉野と葛城の様子を話した。
二人の間には菜が綺麗に詰められた重箱が置かれていている。弓月の家人が用意してくれたものだが、東雲は遠慮なく箸を伸ばす。
新緑が芽吹きはじめるこの季節は、庭で食事をとる者も多い。無駄に広い王宮には、それに適した木陰が幾らでもあった。
「叔父上は身内には毒舌だけど、外面はいいだろう? 理不尽は言わないし」
「俺には酷いぞ?」
「東雲は身内みたいなもんだからさ」
そう言えば、東雲は満更でもない顔をした。
「葛城の事も、身内扱いしてるんじゃないのか?」
「いや、そう言う感じでもないんだよなぁ…………」
吉野はこれまで、葛城を「客人」として丁重に扱っていた。弓月の命の恩人でもあるのだから当然かもしれないが。
弓月は腕を組み、首を傾げる。
「あれはさぁ、なんて言うか…………」
「分かった、同族嫌悪だ」
「……は?」
「ほら、吉野殿と葛城って、ちょっと似てるところがあるだろう?」
「…………そうか?」
「霊力が高くて武芸も強い、頭も切れるし顔もいい。後、腹の底が見えないところも」
弓月は東雲の言葉を反芻する。
確かに二人は似ている…………ような気もする。
「けど、何で突然? 霞台の一件までは、あんなピリピリした感じじゃなかったのに」
「それだっ」
「どれだよ?」
弓月は、眉間に突き出された東雲の指を押し返しながら問う。
「葛城が弓月をみすみす霞台に連れていかせたから、怒ってるんじゃないか?」
「ええ?」
「出来る奴には厳しいから、吉野殿は。認めているからこそ、腹立たしいとか」
「いや、それはさすがに理不尽だろう…………」
もしそうなら、葛城はとんだとばっちりである。
「もしくは…………」
「もしくは?」
東雲は弓月を見つめ、それから「いや」と首を振る。
「何だよ、気になるだろう?」
「何でもない。ほら、昼休み終わるぞ?」
そう言って、東雲は握り飯の残りを口に放り込んで立ち上がる。
「あ、待てよ」
弓月も慌てて握り飯を口に入れ、茶で流し込んだ。
夕刻、出仕を終えて王宮を出ると、少し離れた場所に葛城の姿があった。
連れだっていた東雲に声を掛け、弓月は小走りで葛城の側に行く。
「迎えに来てくれたのか」
「いいのか?」
葛城は門の前に立ったままの東雲を見て問う。
「ああ」
弓月が手を振ると、東雲は軽く手を上げて踵を返した。
弓月は葛城の背を押して、邸とは別の方向へ向かう。
「何処に行くんだ?」
「いいとこ」
弓月はにっと笑って、薄暗い路地へと葛城を導いた。




