表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼い月の都  作者: 彩夏
28/36

守護

邸に戻ってきた葛城は、弓月の言葉に思うところがあったようで、翌朝「弟に会ってくる」と、再び姿を消した。


その二日後、吉野と葛城は申し合わせたように邸に戻ってきた。

門で顔を合わせた瞬間、揖をする葛城に対し、吉野は一瞥をしただけでそのまま湯殿へ足を向ける。


「ちょっと、叔父上…………」


さすがに声を上げた弓月を、葛城は「いい」と肩を掴んで止めた。

どうやら吉野は葛城に対して腹を立てており、葛城はその理由に心当たりがあるらしい。


「叔父上と何があったんだ?」


「大したことじゃない」


何度聴いても、葛城の答えは同じだった。

湯浴みを終えた吉野が戻って来ると、三人で夕餉を囲む。

吉野の帰りを知った家人達が腕を振い、いつもより贅沢な菜が並んでいるのだが、弓月は箸が進まない。


(空気が重い…………)


吉野の向かいに弓月、弓月の隣に葛城が座っている。

二人は目を合わせようとしないが、間に流れる空気は重い。


「えっと、播磨はどうだった?」


雰囲気を変えようと、弓月は吉野に話し掛けた。


「播磨は変わりない。ただ…………」


「ただ?」


「海が危うい」


「海?」 


「お前を襲った羅羅(ルゥオルゥオ)ほどではないが、大陸から流れてきたらしい怪異がうようよいた」


葛城がはっとしたように吉野を見る。


「船は大丈夫なの?」


「護符があるからな。四凶に襲われれば分からないが」


四凶(しきょう)」とは、大陸で災厄として恐れられる四つの怪異「渾敦(こんとん)」、「窮奇(きゅうき)」、「饕餮(とうてつ)」、「檮杌(とうごう)」を指す。何れも伝説の域を出ないが、二十年前はそれに匹敵するような怪異が出たと言われている。

外海は「和国」の守護領域から外れるため、航行する船には護符を施すのが決まりで、国船には王の、私船には持ち主である姓の護符が施されている。

吉野の持つ船は便宜上弓月の物だが、ほぼ霊力を持たない弓月に代わり護符を施したのは吉野だ。

これは他家でもよくある事で、理由はこの作業が途轍もなく「手間と時間と霊力」を使うからである。


「吉野殿は、壱岐の船にも守護を施しておいでか?」


「葛城?」


唐突な問いかけに、弓月は隣を見た。


「壱岐? ああ、十年ほど前に何処かの家に頼まれた覚えがある」


「そう…………か…………」


葛城は腑に落ちたという風に呟く。


「船に護符を施すことを義務づけたのは今の王だ、賢明な判断だと思うよ。だが、いくら王が優れていても、全てを一人で補える筈もない。それを支えるべき人間が必要だと、私は思うけれどね」


「…………何の話?」


それに答える者はなく、その後は誰も言葉を発する事なく夕餉を終えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ