表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼い月の都  作者: 彩夏
2/34

和国

飛鳥に都を置く「和国」は、大陸の東にある島国だ。

広大な国土と多くの人口を持つ大陸は、和国より余程進んだの文化を持っており、和国はそれを真似ながら貪欲に吸収し、「国」としての体裁を整えた。

大陸では覇権を争って戦いが繰り返され、幾つも国が建っては滅んだ。資源の乏しい小さな島国に興味を抱く者はおらず、和国は密やかに独自の発展を続けた。


年号が「朱鳥」に改められたこの年、新しい王が立ち、同時に新たな都が「飛鳥」と命名された。

西南から東北に長く伸びる国土の、ほぼ真ん中に位置する場所である。

気候は温暖で水源豊か、清らかな気に満ちた地だ。





鹿野(ろくや)


翳した指先に、白い鳥が羽ばたいてとまる。

くくる、と喉を鳴らして首を傾げる様は、主に似て愛らしい。

肩で揃えた黒髪が露台に吹く風にさらりと揺れて、美麗な仕立ての衣に広がった。


「どこまで遊びに行っていたの? なかなか戻って来ないから心配したんだよ」


拗ねたように言えば、鹿野は詫びるように丸い頭をまろい頬に擦りつける。


「もう、ずるいんだから」


くすくすと笑いながら頭を撫でてやる。

小さな両手には余る大きさの鳥は鳩に似た姿で、純白に見える羽は、夜にはその色を変える。

少年は脚に結ばれた金属製の筒を外し、鹿野を鳥籠に入れた。

筒は銀で作った特注品で、特種な『(しゅ)』がかけられている。ふっと息を吹きかけると、筒は真ん中でぱかりと割れた。小さく畳まれた紙を取り出し、破かないようにそっと広げる。


「大陸から……?」


文字を追う眼差しが細くなり、幼い顔から表情が消える。頭の中は忙しく回転していた。



甘樫(あまかし)


聞き慣れた声に弾かれたように振り向けば、久し振りに見る顔があった。


「兄様っ」


甘樫は藍の瞳を輝かせて、旅装のままの男の腕に飛び込んだ。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ