夢でご馳走様
更新に間が空いてしまいました。宜しくお願いします
女子寮のひとり寝の夜の淋しさよ…
季語が入ってないわ…それにしても2日続けて、紳士の嗜みを入手出来るチャンスを逃してしまうなんて…う~ん…やっぱり気になるよ、紳士の嗜みって騎士団の詰所に置いてないのかな?
今、詰所に見に行ってみる?夜番の近衛のお兄様が詰所にいるかな…その人に頼んで貸してもらう?
「フヘ…フヘヘヘ…」
想像して笑いが起こる。さて、詰所にお出かけするのはいいとして、学生寮は夜間の外出は禁止されているのよね、どうしようかな…そうだ!魔術の授業で習った魔力遮断と透過魔法を使ってみようかな?これで私の姿を隠せるから隠密行動、し放題だね!
「フッヘヘ…グフフ…」
夜のテンションも相まって変な笑いが止まらない。部屋着の上から外套を羽織ると、ベッドの上に魔法教本を広げて、魔術印の確認をしながら自身に魔術をかけた。
「おおっ…おおっ!上手くいったかな~よしよし~グヘヘ…行くぞぉ~」
自分の部屋の小窓に足をかけると、ふわりと地面に降り立った。因みに二階です、魔法があると便利だね~
しかしスキップをしながら女子寮を出た所で突然、息が乱れてきた。
「し…しまったぁぁ…高位魔法はぁぁ…ぜいっ…はぁ…魔力の消費が半端ない…ぐうう…」
体力切れと共に魔力切れ一歩手前になり、フラフラしながら致し方無く魔力遮断と透過魔法を解術した。
外壁に手を付いて、乱れた息と魔力が整うのを待った。
でも無事に、女子寮を人目を忍んで出ることには成功した!これで後は王宮の裏山からコッソリ侵入(オイ!)して、近衛騎士団の詰所に向かえば…
ヨロヨロしながら王宮へ足を向けた時に、森へ続く道の街灯の下に大柄な人が三人、立っているのに気が付いた。
……やだ、もしかして不審者?痴漢かな……
怖いな…と思いつつ少しずつその人影達に近付いて行くと、三人の内の一人の夜目にも鮮やかな髪色が目に入って来た。派手な髪の人だな………あれ?
「イルーズじゃんっ!なんでやねん!」
その人影の一つがゆっくりと私に近付いてきた…やっぱりピンクブロンドの美少年、イルーズ殿下だった。
「イルーズ…じゃないよ?今、何時だと思っているの?それにこんな夜にどこへ行こうとしていたの?寮から夜間の外出は禁止されていると思うけど?」
ギクッ……!何故イルーズが外出に対して言及するの?
「え……と」
「……」
こんな一般道の夜道でロイヤル圧を出してくるな!
「その……ぉ…」
「……帰るよ」
「……はい…」
くぅぅぅ!何故バレた!?どうしてバレたぁ?イルーズの後ろに控えている近衛のお兄様のひとりを何となく見上げると、お兄様から目を逸らされた。
まさか……私って近衛のお兄様…つまりはイルーズに見張られていたの?
私はイルーズを睨みつけた。
「イルーズ…あなた女子に見張りをつけるなんて…変態ね」
イルーズは息を飲んだ。
「フリィーシアにだけは言われたくないよ…心外だ」
色々ね、もう色々引っ掛かる所満載のイルーズの言葉だけど、変態なのは否めない!エロと妄想で生きているのは否めない!
イルーズは私が部屋の中に入るまで外で見張っていた。女子寮の寮監さんにはロイヤルスマイルで押し切っていた。
「いい?夜に独り歩きなんてしちゃ駄目だろ?紳士の嗜みも近衛の詰所には無い!それにまだ見ちゃいけない年齢のフリィーシアが見るなんて言語道断、いいね?」
「……」
「返事は?」
イルーズがオカンみたいな迫力出してくるよぉぉ。
私が寮の自室の扉を閉めるまで、イルーズは私の顔から目を逸らさない…怖い。
「分かりました…」
「よしっ…じゃあもう寝なよ、おやすみ」
オカンは護衛を引き連れて帰って行った……
私はベッドにダイブした。
「ふーーんだ!ふーーんだ!いいもんねぇーこうなったら妄想しながら眠ってやるぅ!」
独り言、大声になる、オタクかな…
私は軽くシャワーで汗を流すと寝間着に着替え、ベッドの中に潜り込んだ。さて今日は誰を餌食にしてやるかな…
「グヘヘ…そうだ」
やっぱりピンクブロンドの美少年…と言うにはもうでっかくなっちゃって可愛くないけど…どれどれ
私はベッドに寝転ぶと目を閉じた。
◇ ◇ ◇
「イルーズ…何してるの?」
教室で一人…背を丸めて椅子に座っているイルーズに声をかけた。振り向いたイルーズはベルトを緩めて…息を乱していた。
「見るな…」
私は…舌なめずりをしながら、顔を赤くしているイルーズにゆっくりと近づいて行く。
「お願いだ…フリィ…こんな姿を見ないで…」
プルプル震えるイルーズの背に手を置いてそっと痴態を覗き込んであげた。
「見ぃーちゃった♡」
「ああっ…ああ…!」
…
……
………
気が付くと朝だった。
イルーズいつもありがとう!今日もご馳走様ーーー!!
◇ ◇ ◇
「クシュン!」
朝、女子寮の前に立っているイルーズはクシャミをした。
「なんだろ?風邪かな?」
「おはよ~イルーズ!」
朝の挨拶をしながら駆けて来る、イルーズの天使は今日も見目麗しい姿だった。
「おはよう、フリィ。朝からご機嫌だね」
「うんっ爽やかな目覚めだったわ。いつもありがとう、お世話になってます!」
「?」
何だろう?朝…こうやって送り迎えをしていることかな?
フリィーシアと今日の授業の話をしながら歩いていると、フリィーシアが
「あ~そろそろイルーズのお誕生日だね」
と言ってきた。ああ…そう言えばもうすぐだな。
「今年もお祝いの夜会が開催されるよね~」
そうだ……ついに16才になる…とイルーズは気が付いて横の天使を見下ろした。
「フリィーシア…誕生の夜会の時、俺のエスコートで一緒に入場してもらえる?」
イルーズがそう聞くと、フリィーシアは驚いたような顔で見上げてきた。歩く足を止めて、フリィーシアと通学路の小道で見詰め合う。
この国では、16才の年の夜会で同伴する女性を選び指名する…というのは将来の伴侶を選ぶという意味があるのだ。
「フリィーシア=バスラ嬢、私のエスコートで共に入場して頂けますか?」
「…っぃ……っ!」
フリィーシアは真っ赤になると早口で何かをブツブツと呟いている。
「うそだろまじありえん?え?わたし?いまわたしっていったか?これっているーずからのぷろぽーずだよね?うえっい!うそっいつのまにいるーずってばわたしのこと?うおぉぉぉそれよりもさ!りあじゅうこれきた!いまじんせいのさいこうてん!いやいやまてまてはやまるな!もういっかいきいてたしかめることひつようぜったいひつよう」
……聞いてはいけない恐ろしい独り言のような気がして一瞬、イルーズは背筋が寒くなったが…なんとか地面に膝を突くとフリィーシアの手を取った。
「フリィーシア=バスラ嬢、私…イルーズ=ケイクラフェバーと将来のお約束をして頂けますか?」
フリィーシアは真っ赤になったまま…はぐぅ…ぐうぅ…と変な声をあげて……白目を剥いてひっくり返った。
イルーズの天使は白目を剥いて倒れた……
この後、イルーズが慌てて倒れたフリィーシアを保健室に連れて行き、暫くして目を覚ましたフリィーシアに怒られた。
「あんな小道で愛を囁く馬鹿がどこにいるのよっ!」
……ここにいます、とはイルーズはとても言えなかった。後で護衛の近衛達にも「殿下いくらなんでも、求婚はもっと場所を選んで下さい」と苦言を呈されたのだった。
後一話で完結予定です^^