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正気です

「なにぃ?動悸…ふむ…」


クラベル=キース師が眼鏡を光らせて私に一歩近付いて来た。


ひえええっ!?この私のエロ思考がクラベル=キース師に赤裸々に読み取られてしまう!?


隠しても無駄なのに意味も無く胸の辺りを、手で隠してしまう。いや、そこに私のエロは無い…と思う。


自分で自分にツッコミを入れながら、今度はそっと頭に両手を置いた。きっと煩悩やエロは脳に刻まれていると思うから…


「うむ…身体に異常はなさそうだな…動悸も今は治まっているだろうか?」


「はい…大丈夫です。煩悩は脳に仕舞われておりまする…」


別に大魔術師様にエロくて拘束される…とか無いとは思ってるけどさ、やましさを抱えているからつい後ろ向き発言をしてしまいそうになるよ…


「まあ念の為に、治療を施して…」


「けっ…結構ですっ結構ですっ結構ですっ!!!」


私は更に近付いて来たクラベル=キース師に叫んでから、イルーズを放置して走って逃げた。だって稀代の治療術師に何かを治療されたら私のエロが浄化?されて掻き消されてしまうかもしれないじゃないかっ!


私のエロは私のものだぁぁぁぁ誰の手にも渡さないっっ!!!


「……で、一人で走って来て、仮にも王族の私を置き去りにしたわけだ?」


「…はい、仰る通りでございます」


一目散に駆け出した私は、ものすごい身体能力を発揮して追いついて来たイルーズに魔法で捕縛されて…この世界や前の世界でも体験した事の無い、人生初の簀巻き状態にされて学院の教室に連れて来られていた。


肩に担がれるなんて…なんたる屈辱!とんだ恥さらしだ!


「ちょっと!イルーズッいい加減下ろしてよ!恥ずかしいでしょう!?」


「……」


イルーズが私を肩に担ぎ上げたまま、困ったような笑顔で私を見ている…


「はぁ……フリィーシア?担がれていることより、普段の言動の方が恥ずかしいからね?特にルツルやハービィ達の前で紳士の嗜みとか女性の半裸が好物!とか、喜々として叫んじゃいけないよ?」


「どうしてよ?」


イルーズはまた深く溜め息をついた。


「多感な16才男子には刺激が強いのと、夢が破られるし…色々と幻滅して女性不信になってしまうからかな…」


私は捕縛魔法を解術されて、廊下に足を降ろした。無論、登校中の同級生達にすごく見られている。


「何が幻滅よっ世の中の女子だってエロイ妄想くらいしてるわよ!それこそ一人エ……」


「わーーーっ!わーーっ!」


イルーズが叫びながら私の口を塞いで、私を一緒にA組の教室の中に押し込んだ。


「おはよう、朝から仲が良いですね」


「もががあぁ…」


噂のルツル=クローゼ侯爵子息がニコニコしながら朝の挨拶をしてきた。


「さっき肩に担がれていたけど何かあったの?」


伯爵子息のハービィ=ホゾンが私とイルーズの顔を交互に見上げて首を傾げている。


「あ~それね!紳士の嗜みかと思って拾った本がさ~ただの落とし物の魔術書みたいでさ~もうぅガッカリしたっのなんのってぇ!女性のはん……」


「わーーーっ!フリィーシア!」


私が口を塞いでいたイルーズの手を振りほどいて叫ぶとイルーズが更に大声で私とハービィとの会話を遮った。


なによ?人が喋ってるのに…ん?ルツルが俯いて手で顔を覆っている。


「フリィーシア…やめて…俺まだ女の子に幻滅したくない…」


「…?」


一瞬、あのねー女子だってエロいことに興味津々なのよ!下半身事情を赤裸々に語りたくてうずうずしてんのよ!天使みたいに可愛い子だって一皮むけばエロいことしてんのよ!


……と言ってやろうかと思ったけど、イルーズがこんなところでまたロイヤル圧を出してきて威圧してくるので…取り敢えずやめておいた。


ふん…最近の若い子はエロに及び腰だな~お前達、草ばっか食べてる牧草系男子なんだな?


さて、私の紳士の嗜みはクラベル=キース師に奪われて(違)しまったので…エロに手が届きそうで届かなくなったこのもどかしさを発散すべく、新しいエロを模索することにした。


「よし…ハービィ、今からひとっ走りして書籍店に行って『紳士の嗜み』を買って来て」


放課後、ルツルと帰りかけていたハービィにお金と御駄賃を渡してそう頼むと、ルツルは悲鳴を上げて、ハービィは真っ赤になった。


するとイルーズがとんでもないスピードで私の傍まで走り込んで来ると、私の手をお金ごと掴むと叫んだ。


「やめてやれっ!ハービィの夢や淡い想いを砕くな!」


朝から何よ…夢、夢って


「紳士の嗜みは16才以上の男性にしか販売してくれないじゃない。この中じゃハービィだけが16才になっているじゃない、問題無いでしょう?」


「問題ありだよ!フリィーシア…みたいなフワフワとした綺麗な女の子に…し…下ネタ叫ばれて、俺…もうどうしていいのか分からない…」


ルツルはワナワナと震えながらそう叫ぶと、じめじめと泣き出した、嘘泣きだろうけど…


フワフワした女の子ね…


「あのねハービィもルツルも…あなた達、婚姻したり恋人が出来たら手も繋がない訳?好きな人なら体に触れてみたいと思わない訳?」


ハービィとルツルは途端に顔を赤くした。


「今あなた達が想像したこと、女の子だって想像しているわよ?だって好きな人には触れたいし、もっと傍に居たいと思うもん。そう思う気持ちに男女の差なんてあるわけないでしょう?」


「…!」


私達のやり取りを見ていたクラスメイト、女子達から拍手を受けた。


「知識が無くて将来やらかして失敗するより、色々と知っておきたいと思うのはいけないことなの?何も実地して経験しろ…と言っている訳じゃないのよ?いざと言う時に…はいつ来るか分からないじゃない!だからこそっ今っ!ここでエロを再確認しておかなきゃ明日は迎えられないのよ!だからこそっハービィ!今あなたが紳士の嗜みを購入する意義がここに…いだああああっ!!!」


私の後頭部をイルーズが容赦なく引っ叩いた。スパーーンと良い音がした。私の頭がからっぽ……だからか?自分で言っていて虚しくなった。


「格好良く纏めようとしているけど、結局はハービィに買いに行かせたいだけなんだろ!もういい加減にしろ!」


「いだい……イルーズの馬鹿。何よっ、だったらイルーズが近衛のお兄様に頼んで買って来て貰ってよ…」


イルーズはシレッとした顔で言い切った。


「城下の書籍店でうちの近衛がそんな本を購入していると噂が立ったら、近衛の威厳が無くなる」


嘘だっ!近衛のお兄様達、近衛騎士団の詰所で大人向けのエロ本回し読みしてるの知っているんだからなっ!


私は廊下に立っているイルーズ付きの近衛のお兄様2人をジロリと見た。お兄様2人共、同時に私から目を逸らした。


ほら?ほらぁぁ!?ね?絶対、一番新入りの若い団員に


「お前、紳士の嗜み買ってこいよ!いいかっ絶対買って来いよ!」


とか言って書店に買いに行かせてパシリさせてるに決まってんのよ!


「ぐぬぬ…近衛騎士団の詰所に行って借りて来ようかしら……」


「っぃい!?」


私が悔しくて呟くと、廊下から近衛のお兄様達の小さい悲鳴が聞こえた。


「フリィーシア…やめて差し上げろ。お前がその顔で近衛の詰所で『紳士の嗜み、貸して下さい』とか言っちゃったら騎士団長が衝撃受けて泡吹いて倒れちゃうだろ?考えて差し上げろ…」


イルーズはいちいち言う事が大袈裟だなあ…別にあのシブメンの騎士団長なら、良い笑顔で


「おっ…嬢ちゃんも好きものだな~ほらよ」


とか言って軽く貸してくれるんじゃないの?あ、そうだ!だったら…



「あ~じゃあ、あの赤毛の軽そうな副騎士団長は?あの人ならもっと簡単に貸して……何?」


イルーズに両肩を掴まれた。


「それはもっと止めてやれ。ギフェルザーは…熱烈な崇拝者だ。本当に夢を見させてやってくれ……」


「??」


イルーズもルツルもハービィどころかクラスの女子にまで真顔で


「そんな本は決して借りに行っては駄目よ!」


と釘を刺された。


もう八方塞がりだ…ああ、エロが欲しい。エロを感じたい…エロをもっと身近に……


歩きながら妄想していると、一緒に下校しているイルーズがまた困ったような笑顔を私に向けていることに気が付いた。


「…何?」


「……ん、涎垂れてるよ?」


……そう?ジュル……ふぅぅ、欲望が駄々洩れし過ぎてお口がパカーーンと開いてたわ。


段々とフリィーシアの外見が明らかになって参りました。次回はイルーズ目線のお話です

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