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奪われました

ブクマ評価ありがとうございます。宜しくお願いします

私が投げつけた黒い装丁の本は掛布に当たり、コロンとベッドの上に転がった。


そうだ…本には罪は無いよね!


「ゴメンね……」


ベッドに走り寄ると投げつけた黒い装丁の本を拾い上げた。魔力の痕跡が残る本だから、紳士の嗜みだと思い込んでつい持って帰って来てしまったけれどよく考えたら、これって落とし物じゃないかな?


今日はもう遅いし明日…落とし物としてアシスレウト学院の管理事務所に届けておこう。


翌朝…登校の準備をすませ、通学鞄に例の本を入れると女子寮を出た。


するとスラッとした長身でピンクブロンドの髪色にエメラルドグリーン色の瞳を持つ顔面偏差値、国一番(私調べ)のイルーズ=ケイクラフェバー第三王子殿下が女子寮の門扉の所に立って…通学して行く女子達の熱い視線を独り占めしていた。


また目立つ所で……私は急いで、イルーズ殿下の傍に駆け寄った。


「もうっまたそんな目立つところに立って…!」


イルーズ殿下は、近付く私に気が付くと笑顔を見せた。


イルーズさんは本日もとてもとても綺麗で格好いいね!


「おはよう、フリィーシア」


「おはよう…イルーズ」


私、フリィーシア=バスラは公爵家の令嬢だ。このイルーズ=ケイクラフェバー第三王子殿下とは、幼馴染という間柄だ。私は公爵家子女ではあるけれど、イルーズとは名前で呼び合える距離感で仲良くさせてもらっている。


さてさて…私はイルーズとアシスレウト学院へと向かう通学路を歩きながら、昨日起こった紳士の嗜み事件の事を熱く熱く語った。


イルーズは困った顔ような笑顔を浮かべている。そう…私がエロを語る時、イルーズはこういう表情をする…


「フリィーシア…好きだね…」


「ええっもう大好物よ!確かに拾ってみて違ったけれど、一時とはいえ…あの背徳感と高揚感…堪らなかったね、あ…イルーズ!あの辺りに落ちていた本を拾って………」


ん?ちょうど本を拾った小道の辺りに差し掛かったので、小道を指差そうとしたらその先にローブを羽織った人が丁度立っていた。


んん?あのローブ…魔力を帯びた外套で色は濃い紫色…紫色?


紫色のローブと言えば…まさか?


この世界には魔力がある。勿論私も魔力を持っている。そしてその中でも高魔力を保持し、国の厳しい試験に合格し更に実績と魔術研究に貢献した方々は…その位を示す外套…ローブの『色』で分けられている。


魔術師団にお勤めの方々は大体が『緑』か『赤』のローブを着用している。そして街で個人店を経営している魔術師は『黒』か『紺』。独り立ちしてお店を構えるような術師はなかなかいないと聞く。


そして今この国では最高位魔術師が三人居る。それが『紫』のローブの大魔術師様!


今、あの小道でウロウロしている?ように見える方は背格好から最年少大魔術師のクラベル=キース様だっ!


何であんな所でウロウロしているんだろう?


「あれ?キース師じゃないの?」


イルーズがそう声を上げた時に、クラベル=キース師が顔を上げた。振り向いたキース師の眼鏡がキラッと輝いたような気がした。


クラベル=キース師はまだお若い方のはずだが、イルーズより頭一つ小さい身長で…青白い顔のひょろっと男子のようだ。キース師はフラフラとこちらに近付いて来ると、頭を下げた。


「殿下…お久しぶりでございます」


「お変わりないようですね、キース師。で…?こんな学院の通学路で何をされておいでで?」


クラベル=キース大魔術師様は、一瞬周りを見てからボソボソと呟いた。


「先日…魔術の特別授業を行いまして…」


「ああ、三年生の特別授業ですね」


「はあ…それでここを通って来たのですが…その時に落とし物をして」


「!」


クラベル=キース師の言葉に、ぎゃああ!…と心の中で悲鳴を上げた。私の横にいるイルーズも息を飲んだ音が聞こえた。


「因みに…どんな落とし物で?」


ひえぇぇ!?イルーズゥ…それ聞くの!?嫌な予感がする!絶対嫌な予感がする!


クラベル=キース師は眼鏡の縁を押し上げながら、イルーズの顔を見上げた。


「黒い装丁の本です…」


はい、ビンゴーーー!


ソウデスカ…あれ、クラベル=キース師の落とし物だったのですね。半裸の女性…に見えたベージュのドレスの女性の肖像画が挟み込まれた、文字ばかりのクラベル=キース師の落とし物なら魔術書の類なのですね…通りで紳士の嗜みっぽく見えたあの本が魔力を帯びていたわけだ…


「フリィーシア…」


うおっ!イルーズがチラリと横目で私を促した。


そうだ…万が一でもこの拾った本がクラベル=キース師の探している本と違う可能性もあるし、もしこの本がクラベル=キース師のもので、私が落とし物を懐に収めようとしていた…という疑惑(どころかエロ抜きをやる気満々)を払拭出来るかもしれない。


私は、通学鞄を開けてソロリと例の本を出してきた。


「あの…その本とやらは、コレですか?」


クラベル=キース師の魔力がグワッと上がった。


「そ、それです!」


ものすごい勢いでクラベル=キース師にエロイ本(違)をひったくられた。


クラベル=キース師は眼鏡の奥の瞳を細めて私を睨んで?いる。


「中を見たのか…?」


「へっ?」


見たよーーー!ってか、肌色成分の多いエロ画だと思い込んで袋とじ感覚で期待と興奮を感じながら見たけど……流石にやましさのせいで、嘘をつこうかと一瞬目が泳いだ。


「フリィーシア?」


お隣に立たれているイルーズ第三王子殿下から王子圧をかけられた。何故、私にロイヤル圧を送りつけてくるのだ?


「そのエロ……っぽい女性の絵姿はがっつ……ゴホン、ちらりとは見ましたが…」


「絵姿…」


クラベル=キース師は私から奪い取った(違)黒い装丁の本を開いた。ハラリ……と本の隙間から例の肌色成分の多い絵姿が地面に落ちた。


ほらーー!ね?こうやってヒラヒラと落ちて行くところが見える感じでも半裸の女子に見えるでしょう?私が見間違えてもおかしくないでしょー?


…と訳の分からない賛同を得ようと、イルーズの顔を見るとイルーズも意図を汲み取ってくれたのか、目を見開いて私の方を見て頷いている。


「これは……何だろうか?」


「え?」


クラベル=キース師は地面に落ちた絵姿を見て、首を捻っている。


「あの…その絵姿は私が拾った時から挟まってましたが…」


「なに…?そうか…しかし見覚えは無いな。それはそうと本当に本の中身は読んでないだろうな?」


眼鏡がギラッと光った。


「はいっ…エロしか興味がな……アバババッ…中は一切何も見ておりません!!」


うっかり本音が駄々洩れしてしまった。またイルーズから困ったような笑顔を向けられている。


眼鏡のクラベル=キース師が私を見詰める。


「フム…嘘はついていないようだな、言っておくが私は治療術師だ。私の前では嘘は通用しない」


ひえええっ!?クラベル=キース師って数万人に一人と言われる癒しの術が使える、治療術師なのぉ!?本物の治療術師は初めて見たよ!


興奮した私を見たクラベル=キース師は、私の体の周り?を見て何度も瞬きをしている。なんだ?


「君は……こんな時間から性的興奮を感じているのか?体は大丈夫なのだろうか?」


………異世界人人生で初めて、初対面の人にエロを咎められるこの恥ずかしさ…いや、でも根っからのエロエロマシーンの私には褒め言葉だ!性的興奮…なんて褒め言葉だ…!


「ハァ……ハァ……」


私のその状態に一早く気が付いたイルーズが、慌てたように声を上げた。


「クラベル=キース師!大変ですっフリィーシアが妄想を拗らせて動悸がおかしくなってます!」


そうじゃねええええええっ!!!


……いや、当たってるけど、99%そうだけど残りの1%は認めたくない乙女な私に気が付いて!


こんなおバカなノリでございますが、暫くお付き合い下さいませ。

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