拾いました
こんなおバカな導入部分が第一話ですみません。ラブコメです…長期連載にならない予定です。宜しくお願いします
本が落ちている。
しかも、魔力を放つ本だ。
魔導書か?否……、私は気がついた。
黒一色の装丁で、その本の隙間から肌色成分の多い女性の絵姿がチラ見えしている。
もう一度言おう。
女性の半裸と思わしき絵姿が本からチラ見えしているのだ。
私は自分の後ろを振り返った。誰もいない。前を見た……こちらもいない。
この黒い本は私の大好物の如何わしい本に間違いないっ!
私は心の中で叫んだ。神様!ありがとう!
黒色の装丁本、如何わしいであろう挿絵がチラ見(袋とじ)、本が魔力を帯びている。
この三つの点から私はこれをマーイガート出版から発刊されている『紳士の嗜み』シリーズと確信した。
『紳士の嗜み』とは
いわゆる肌色面積の多い女性の姿絵や男女の営みの体験談、そして如何わしい系の小説を載せた月刊誌だ。
しかも投影魔法と幻影魔法という組み合わせが難しい魔法を本に組み込ませており、本を開くと本物の女性の裸体が魔法で浮かび上がるというとんでもなく画期的なエロイ本だった。
それが発売されるや否や爆発的に売れた。
本を開くと本物の女性の裸体が投影されるという魔力のすんばらしい無駄遣いを感じる。そしてこの魔術を開発することに魔術師のエロにかける情熱のすごさに感服せざるを得ない究極の魔術本(只のエロ本)だった。
ところがその『紳士の嗜み』に待ったをかけた団体がいた。
団体名は『淑女の嗜みの会』
『紳士の嗜み』の真逆をいく団体だ。しかも団体の代表は現国王妃だった。
「そんな破廉恥で見るのも如何わしい本を普通に書籍店に置いて販売するなんて言語道断ですっ!」
と、国の朝議にまで持ち込まれて『紳士の嗜み』は糾弾されてしまったのだ。
ちょっ……おいぃぃ!書籍店の一角に堂々と置いてあって、もしかして中が見れる?なんて言うチラリズム溢れるあの背徳感がいいんじゃないかっ!余計なこと言って書籍店から排除しようとするんじゃねぇよ!
いけない……仮にも我が国の国王妃に心の中だとはいえ不敬な発言しちゃった☆彡
……という訳で、国王妃の余計な圧力のせいで、一応書籍店には入荷はしているけれど、書籍店員に
「おいっ『紳士の嗜み』入荷しているか?」
「グヘヘ……旦那も好きですねぇ」
「いいからっ早くブツを寄越せ」
「まいどあり~700ギラです」
と、いちいち確認して店の奥から出してきてもらわねばブツを確認出来なくなってしまったのだ。
…………けっ!子供……特に女性には全くお目にかかれない代物になっちまったじゃねぇかよ!!
あ、因みに私は女性の16才です、はい。更にもっと言うと異世界転生人の元アラサーOLです。頭の中は常にエロエロしい妄想でいっぱいです。
もうムラムラしてきて堪らない。あの書籍店に平積みされているのを見るだけでも背徳感だけでどんぶり飯三杯はいけるのにぃぃ……
しかしっ!
その背徳感たっぷりの如何わしさたっぷりの紳士の嗜みが……今、無防備にも地面に落ちている。しかもアシスレウト学院へと向かう通学路にっ!
私はもう一度念の為に、通学路になっている森のお洒落な小道の東西南北を確認した。近くに人影無し……
「……っ!」
私は走った!魔法実技の授業でサーベントという大型の肉食獣に追いかけられた時より素早く走っていた。ほぼ足を止めずに、屈んだ姿勢で紳士の嗜みを拾い上げるとそのまま自分の鞄の中に押し込み、走る速度を落とさないまま一気に女子寮まで駆けて行った。
「ハア……フゥ……ゼィ……ハァ」
全速力で小道から女子寮まで走って来た為に息が上がる。急な全速力で足がガクガク震えている。鞄を抱えたまま女子寮のエントランスホールを抜けて、自分の部屋に戻った。
今日ほど1人部屋で良かった……と思ったことはない。
興奮と緊張で鞄を持つ手が震えている。
私はゆっくりと鞄を窓際の勉強机に置くと、黒色の装丁の本を取り出して、本の隙間からちょいとはみ出している肌色成分大目の半裸と思われる絵姿を爪の先で引っ掛けながら静かに引っ張り出した。
ああ、ドキドキムラムラする…。どんなエロエロしい袋とじ(違う)何だろうか……
「…っ!………え?」
引っ張り出してきた絵姿をカッと目を見開いて見た。
………女性の半裸だと思われて絵姿は、ただの肌色のドレスを身に纏った女性の肖像画だった。慌てて黒い装丁の本を開いて中を見た。
本の中身は…文字がびっしり書かれていて……全く全然『紳士の嗜み』じゃなかったっ!?
「畜生っ!こんにゃろーーー!期待させんなぁ!」
私は黒い本を思いっ切りベッドに投げつけた。
こんな始まりで話が続くのか…書いている私も迷ってます^^;