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黒髪の少女

「え?ウチ見えるようになるん?」


「うん。生まれつき見えないわけじゃないでしょ?」


 ぼくの予想通りならこの子の目は生まれつき見えなかったわけでは無いはずだった。女の子は驚いたような表情で言う。


「なんでわかるん?五歳くらいの時かな?急に見えんようになったんよ」


「そうだと思った」


 魔力が強すぎる人によくある症状で昔よく見たものだった。魔力の流れが乱れることで目に負担がかかって視力が落ちてしまう。だから、魔力の流れを外から調整してあげればすぐに見える様になるはずだ。こんな簡単な症状を誰も気づかずに放置されていたのだとすれば、魔法の衰退はかなり深刻な状況になっているのだろう。


「ほんまですか?!この子の眼をなおせるんですか?!」


「治ると思いますよ。魔力の流れが乱れて負担がかかってるだけですから」


「どうかお願いします。直してやってください」


 カウフマンは地面に両手をついて頭をさげる。


「そんな大したことじゃないんで、やめてください」


 なんとかカウフマンに土下座をやめさせて、少女の治療をすることになった。五分ほどで終わる簡単な作業だ。


「ちょっと怖んやけど……」


「ぼくの魔力で、君の魔力の流れを調整するだけだから大丈夫」


 やはり目の所で魔力の流れがよどんでしまっている。これでは目が見えなくなるのも当然だろう、ゆっくりと魔力を同調させて澱みを取り除いていく。


「ん……。どうかな?ゆっくりと眼を開けてみてもらえる?」


 ゆっくりと開かれていく少女の黒い両目にはっきりとぼくの姿が映っている。答えを聞くまでもなくちゃんと見えていることが分かる。


「見える!見えるよお父さん」


「ほんまか!よかったなあ……」


 少女とカウフマンと奥さん三人で抱き合って涙を流している。ひとしきり抱き合った後、カウフマンはぼくに向かって頭を下げると膝をつき胸に手をあてる。それを見た奥さんも同じように膝をつき胸に手を当てる。


「わたくしジョージ・カウフマンは魂の宿る魔石に誓う!」


「わたくしジェシカ・カウフマンは魂の宿る魔石に誓う!」


 二人の胸のあたりにうっすらと光が発生する。これは契約魔法の光。魔石を持つものなら誰でも使える原始的な魔法だ。この契約魔法を介して行われた約束をたがえるとその人物の魔石は消滅する。すなわち死だ。愛し合う二人が結婚するときでさえ形だけで実際には行わない強力な契約……。


「レオニード・バルクホルンをカウフマン商会のオーナーとして、今後の生涯全て粉骨砕身(ふんこつさいしん)してお仕えすることを誓う!」


「レオニード・バルクホルンをカウフマン商会のオーナーとして、今後の生涯全て粉骨砕身(ふんこつさいしん)してお仕えすることを誓う!」


 胸のあたりに発生していた光は小さな蛍のように宙を舞いぼくの前で制止した。あとはぼくがこの光を触れば契約は完了する。


「本当にいいの?後悔することになるかもしれないよ?」


「金貨だけでなく娘の眼まで治していただいて。何を後悔することがありましょう」


 カウフマンの顔はむしろ誇らしげに輝いている。ここまでされてはぼくも引き下がる訳にはいかない。光に手で触れると光は虹色の輝きを残して消える。同じように奥さんの光にも触れる。


 商店のオーナーとして迎えるだなんて、気持ちは嬉しいんだけどどうすればいいのだろう。十四歳になったら学校へいってそのあとは自立して生活しなくてはいけないから、考えようによっては商店のオーナーになることは良い事かもしれない。


「あ、そうだ。君は魔法の練習をしないとね」


「君やない。リタ・カウフマンや」


「ごめんリタ。ぼくが教えてあげるから魔法を練習しよう。魔力の制御を覚えないと体に色々と影響がでるからね」


 隣で話を聞いてたカウフマンが口を挟む。


「どういうことですか?」


「リタの目が見えなかったのは、魔力の流れに澱みができてたからなんだよね。だから魔法を覚えて、魔力の流れを自分で上手に制御できるようにならないといけないんだ」


「この子はそんなに魔力がつよいんですか?」


「うん、かなり強いよ。ちゃんと勉強すれば賢者と呼ばれるくらいには魔法ができるようになると思う」


 ぼくはリタに一番簡単な四属性、つまり地水火風の魔法。その中でも最も単純な風を起こすだけの魔法、水の玉を出すだけの魔法、小さな火を熾すだけの魔法、土の玉を作るだけの魔法を教える。何度か目の前で使ってみせる。


「なかなか難しいな……。うまいこといかへん」


「焦る必要はないよ」


 リタは必死に真似をしようとするけどなかなかうまくいかない。


「まずはしっかりと魔力が流れていくのを感じられるようにならないとね」


「それは、なんとなく分かるんやけど……。うーん、なんでやろ……」


 そう言いながらもリタは教えた魔法を練習している。もう魔力の流れを感じられるなんて、やっぱりこの子は魔法の才能がある。


「あと、魔法は出来るだけ小さく使うように練習してね」


「なんでなん?ごっつい魔法のほうがええんちゃうの?」


 リタは不思議そうにぼくの方を見る。


「魔力を絞って使う方が難しいからだよ。そっちのほうが効果が高いからね」


「なるほどや、わかった」


 この日から月に一、二度カウフマンさんの家を訪問して商会の売り上げから取り分をうけとり、夕方までリタに魔法の手ほどきをすることが習慣になった。


 見た目からリタは同い年かなと思っていたのだけど、実際はぼくよりもひとつ年上だった。

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