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永遠に終わらない墓場  作者: ゆむ
ブヒィィィ!〜人・魔・豚が覇を争う物語〜
2/7

勇者の甥

『ブヒィィィ!〜人・魔・豚が覇を争う物語〜』

第一話です。

 やあ! 初めまして!

 わたしは、パンツ。この物語の語り部さ!

 語り部パンツ。良い名前だろう?


……本当にそう思うかい?

 そんな名前を付けるだなんて恥知らずだと思わないかい?

 まったく、酷い話だよ。パンツなんて名前の人生、君は想像できるかい?


 わたしのことは、まあいいや。


 この物語はね、人・魔・豚が覇を争っていた時代のお話なんだ。

 勇者と呼ばれた男がね、楽園を作るために悪い王様を倒そうと頑張るんだよ。


 仲間とのアツい絆、ライバルとの戦い。

 笑いあり涙ありの楽しいお話さ。



 ~~さあ、物語のはじまり、はじまり~~



 ここは、人の国の南端。ウェイクス地方の小さな町。

 住んでいる人は二百人くらいだ。


 でも、平和に暮らしていたこの町は、いま、血と悲鳴に溢れているよ。

 ほら、ここにも。


 男の人と女の人が隠れてるんだ。

 けど。

 見つかっちゃった! 豚野郎(オーク)はね、とっても鼻が効くのさ。

 ちょっと、隠れたくらいならすぐに見つけちゃうんだよ! すごいね!


 男の人は豚野郎(オーク)に蹴り飛ばされて、壁まで飛んでいっちゃった。

 そして、女の人の方は、服を破り捨てられて繁殖活動だよ!


 豚野郎(オーク)にはメスが殆どいないんだ。

 だから、豚野郎(オーク)の雄たちは、人間や魔人のメスと交わって子供を作るんだ。


「やめて! 助けて!」


 なんて叫んだって、豚野郎(オーク)は人間の言葉なんて分からないからね。

 だいたい、豚野郎(オーク)の辞書には「止める」も「助ける」も無いんだ。そんな言葉も概念すら知らないんだよ。豚だけに、知性が低いからね。

 数だって二までしか数えられない。一、二、いっぱい。それだけさ。豚野郎(オーク)の言葉だとブフゥ、ブボ、ブヒブゥだね。

 みんな、覚えたかい?


 豚野郎(オーク)の交尾は本当にあっという間さ。わずか十秒でおしまい。

 人間のカップルだったら、酷い言葉で罵られてしまうほどさ。

 生殖活動が終わったら、豚野郎(オーク)は蹴られて呻いている男の人に齧り付くよ。


「ぎゃあああああ!」


 豚野郎(オーク)は止めを刺すことを知らないんだ。

 相手が動かなければ食べ始める。そう、クマさんと一緒だね!

 食べられる方は苦しいんだろうなあ。


 性欲と食欲が満たされたら、することは一つだね。

 ブヒュゥゥゥ、ブヒュゥゥゥ、寝息を立て始めたよ。でも、ダメだよ。他のみんなはまだ働いているんだから。


「ブゥゥフッフッフォーーー!」


 ほら、ボスに見つかっちゃった。

 ボスはとっても怒っているよ。そりゃあもうカンカンで、言葉もしゃべれないくらいさ。


「プギャ、プギャ!」


 ボスに殴られて、悲鳴をあげる。

 サボっていたら痛い目にあうんだ。真面目に働かないといけないよ!

 みんな、頑張って敵を殴ってるんだから、ちゃんと参加しないとね。


 制圧が終わったらゆっくり休んで、残っているお肉を食べるんだよ。

 鶏や羊も飼っているからね。残さず全部食べよう!



 ここは人間の勇者が生まれた町。

 でもね、勇者は魔王を討伐に出て行ったきり一度も帰ってきやしないんだ。

 ひどいよね、

 勇者って言ったって、町を守るつもりなんて無いんだ。

 おかげで無残なものさ。

 建物は焼かれ、男たちは豚野郎(オーク)の餌。女たちは豚野郎(オーク)の次世代を産むための道具さ。

 勇者の妹たちも、揃って豚野郎(オーク)の子供を身籠ることになっちゃった。



 ここはもう、人間の国じゃ無い。豚野郎(オーク)の勢力下だよ。

 人間の勇者の甥っ子たちは、みんな豚野郎(オーク)さ。



 そして、十年が過ぎた頃。

 勇者の甥っ子たちは、立派な豚野郎(オーク)に育ったよ!

 そりゃあもう、元気いっぱいさ。

 その中でも、一際大きくて強い奴がいるんだ。

 こいつらは凄いよ。なんたって、大鬼(オーガ)でさえ歯が立たないんだ。そこらの人間なんて棍棒の一振りで、イチコロだよ。


 豚野郎(オーク)討伐に来たハンターなんて、返り討ちさ。奪った斧を振り回したら、簡単に、腕や頭が飛んでいくよ。

 それに、頭も良いんだ。一人で歩いてハンターを誘き寄せて、ちょっと戦ったら仲間たちがいるところに逃げていくんだ。


 追いかけてきた奴らは、飛んで火に入る夏の虫ってやつだね。

 みんなで取り囲んでタコ殴り。


 今日も槍や斧をを持ったハンターたちが今日もやってきたけど、みんな豚野郎(オーク)たちの餌さ。

 そうそう、魔導士の女の人がいたんだけど、胸が小さくて、男と間違えて殺しちゃったよ。


「ブゴゴ、ブゴゴ!」


 これは「雌だ、雌だ!」って言ってるんだよ。でも、騒いでも後の祭り。

 もう、ピクリとも動かないんだ。これじゃあ、子供を産むなんて無理だよね。仕方がないから、みんなで美味しく頂いたよ!


 豚野郎(オーク)の群れは、どんどん殖えながら、北東に向かって勢力を伸ばしていってるんだ。

 もうちょっとで、人口五千くらいの町。

 ここは丈夫な壁で囲まれていて、貴族が治めているんだ。

 五年くらい前までは、もっと人がいたんだけど、豚野郎(オーク)に周りの町を潰されて逃げていった人も多くて、すっかり寂れてしまってるんだけどね。


 貴族の領主様は、窶れてしまってもう大変さ。


「ケルス様、豚野郎(オーク)どもが、もう目の前まで来ています。何とかしなければこの町は滅ぼされてしまいます!」


 部下の人が泣きそうな顔で領主様に訴えているよ。


「何度も援軍要請を出している。だが、梨の礫だ。この町の兵も僅か二百ほど。千を超える豚野郎(オーク)に立ち向かうことはできん。」

「このまま座して死を待つのですか!」

「民を連れて避難する。山を越えてメストラ領へと向かう。」

「山には緋熊(ヒグマ)が出るではありませんか!」

「それでも、豚野郎(オーク)よりは少ないだろう。何十と群を作る生き物でもないだろう? これ以上モタモタしていては、助かるものも助からなくなる。」


 領主様は、豚野郎(オーク)を相手に撤退の道を選んだんだ。

 格好悪いよね。

豚野郎の勢いは止まらない。世界はどうなってしまうのか!?

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