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閑話 盗賊~商人視点~

 「どうする! あの盗賊団はかなりの腕前のようだぞ!」


 大商人であるザックが声を上げる。


 ザックは魔道具に関する事業を立ち上げ、瞬く間に大商人になった秀才だ。ただ、彼が急激に市場を独占したせいで、幾つかの商会から目を付けれている。


 魔道具の商人というのは、意外に難易度が高い。新規参入は難しい業界だ。なぜなら、魔道具作成者と強いコネがない限り、魔道具の入手が厳しいからだ。


 だが、ザックは王立学院アカデミー七年生の時に知り合った魔道具作成者を目指している彼と出会い、大きく運命を変えた。


 ザックは優秀な彼と王立学院アカデミーの仲間と共に事業を立ち上げた。ザック自身の商売の才能もあってか、大商人と呼ばれる規模までに数年しかかからなかった。


 今回もその一派だろうと、ザックは考えたが、今はそんな場合ではない。最悪、この深い森の中で死ぬことになるだろう。


 「どうしますかっ! 頭!」


 馬を必死に走らせる御者はザックへと叫んだ。いつも冷静な彼は焦っているのか、ザックに対して、敬うような言葉づかいではない。ただ、ザックも見逃して、指示を出す。


 「森の中で……撒くのがベストか……? いや、戦うべきか?」


 隣で走っている馬車の中には積み荷とそれを守る用心棒がいる。用心棒を使って、ここで迎撃する手も無くはないが、それだとこちらが手薄になってしまう。


 もし、商会側がザックたちを狙っているのが本当なら商品にも手を出すはずだろう。今回の出張で珍しい魔道具を手に入れてきたザックたちを狙うなら、それを奪わないはずがない。


 ザックは思考を重ね、策を積み上げるが、依然としてよい考えは浮かばない。



 そんな時――



 ――相手の場所の頭上へと、銀髪の美少女が降ってきていた。











 後ろで急にドサッという音が聞こえた。どうやら、一人の盗賊が馬から転落したようだった。これだけなら、気にならない。ザックにとって、ラッキーなことだからだ。だがしかし、次いで聞こえたヒュンッという刃が空気を切る音。剣が投擲されたのだろう。更に一人が脱落する。


 この異常事態にザックは考える。


 (第三者の介入? 嘘だろ。このタイミングで? ということはマッチポンプの可能性も捨てきれない)


 聞こえたのは、隊長と思われる男の怒号だった。


 「武道の使い手だ! 気を付けろ!!!」

 

 その声は迫真であり、まるで演技には思えない。


 ザックは確かに警戒をしたが、馬車を止めた。


 そして、次に聞こえたのが、少女のような可愛らしい声だった。


 「ハッ!」


 という鋭い呼気だったが、女子だと判別できた。


 更に聞こえたのは、冷静で冷たい隊長の声だった。


 「ほう。中々やるようだな。小娘」


 (小娘だと……? そんな馬鹿な!? 何か暗号か比喩か?)


 ここは『精霊樹の森』と言われる特殊な森だ。


 入るには特別な承諾書が必要であり、それを得るのはとても困難だ。ザックだとこのルートをわざわざ通るために、短期間かつ小さな領域だけの許可証を得た。だが、それでもかなりの金と時間を費やした。


 恐らく、今、追ってきている盗賊団は違法な輩だろう。いくら、商会とはいえ、流石に人を襲うために許可証を発行できるはずがない。前々から許可証を持っていたなら、話は別だが……


 「ザックさん。助けに行くべきではぁ」


 高身長の用心棒が言った。彼の名前はドーン。少し異国風の話し方が混ざっている。意外にも優しい彼は双提案してくる。


 ザックも助けに行こうとは思っていた。


 「ドーンの言うとおりだ。ここは俺とドーンの二人だけでも行くべきだろう」


 彼の名前はガル。かなり強い剣士だ。筋骨隆々という言葉を体現したような男である。



 彼らの言葉を聞いて、恐らくはこれは不幸な事故アクシデントだろう。ザックはそう判断した。


 ならば――


 「ガル! ドーン! 行け!」

 「「うっす!」」


 雇っている五人の内の二人を斥候として出す。


 「もし何かあれば、自己判断で戦闘に介入しろ!」

 「「了解ッ!」」


 そうして、ザックは馬車を止め、様子を窺う。


 (願わくば、神から齎された幸運でありますように……)


 ザックは未だ一度も姿を見たことない神に願った。

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