ふくだんちょーさん
そう、私にはまだ可能性のある人物がいる
ガキこら男だ。
「ん…あ、あぁあ?なんだぁこれ」
ちょうどその時、私が求めていた人物の声がした
まぁそれにしてもタイミングが良すぎるな。この先もこの運で生きたいものだ。
男が壁の板から抜けていく。バキバキと音をたてながら立ち上がった。こちらに視線を寄越す。そして先ほどのシュールな状態を思い出してか、はたまた一発KOされた事を思い出してか、段々と顔が赤くなっていった。
こういう状態の相手って煽りたいよね。ってことで煽っちゃおう!
「やぁ寝心地はどうだったかな?盛さかりおっさん、よく眠れまちたかぁ~??」
ガキこら男の顔が糞を我慢しているような感じになる。
(おうおう顔がすんごく赤くなっちゃって)
「き、貴様、私を誰だと思っている!!俺は誇り高き国家騎士団の副団長だぞ!!」
いや、そう言われてもよく分からんし。
てか、
「いや団長じゃないんかい」
…あ、声に出ちまった。
それを聞いたガキこら男、改め副だんちょーさん、ますますお顔が赤くなってます。痛いとこつかれたんだろうね、わなわなしてる。
こいつの言動を見る限り、世間的に『騎士団』っつーのは偉いってことが分かった。自分のしている職を堂々と胸を張って…は無いが言っているのはそれなりの待遇なのだと思う。
(それなら、なんで国家の騎士がここに居んのよ)
その疑問は今聞いても絶対答えてはくれないだろう。疑問は解消されないが知ろうともまぁ、思わんし、いっか。
「くそ…!!どいつもこいつも俺をバカにしやがって!!許さん!!許さんぞ!!」
わなわなしながらこっちに走ってくる。
一瞬周りの奴らは大丈夫なのかと思いちらっと見てみたら子供たちは女性の側そばにいた。さっきとは違う場所まで行って待機している。ここからは大分離れた場所にいるし巻き込まれることはまずないだろう。これで邪魔なものはないしひとまず安心。
ふくだんちょーさんは大きく振りかぶって殴りかかってきた。それを私は避ける。当たったら確実に骨は逝くだろう拳だ、が、遅い。相手は殴りに関しては素人よりちょい上ぐらいだ、と直感で分かる。
幸い騎士にも関わらずあのガッシャンガッシャンしたやつ(鎧)は着てない。あのガッシャンガッシャンは思い出しただけでも殺気がわく。
あとファンタジーのガッシャンガッシャンが気になって触ってみたけど素材が固かった。
もう一度飛んできた拳を軽く避ける。
ふくだんちょーさんは一枚の薄そうな布地を来ている。服からは鍛えられた筋肉がくっきりと。
でもガッシャンガッシャンがないから楽勝。しかし筋肉に邪魔されてうまく落とせない可能性がある。
(体は最終手段だな)
それなら拳を流して、そこで隙をつき一気に落とす。
周りには小さい木の破片しかないし、いちいち取るのはメンディー。
一番手っ取り早いのは、素手での方法。
そんで喉を打撃。拳はすべての指の第2関節を曲げ親指を内側に引っ込める形にする。打撃した瞬間相手が苦しくて頭を下げた時、首チョォオップ!!
相手からして斜め下45度の角度から。そうすれば即気絶なのだ。
2~3分気絶する。気絶してなくても、最初の1激が入っていれば5分ぐらいは動けない。
その隙に何かしらで縛って話をすればいい。今度は平和にな。うん。
それで決まりだ。さぁやるぜい!
私は攻めこんだ。
「歯ぁ食いしばれ…!」
一気に距離をつけて拳に力を入れる。
そして、
「がっ…!!!」
喉、入った、ガッシャンガッシャンがないからやっぱり余裕。
よし次、
「かっっっは、ごは!く、、ぐ、そ!!」
首、もらっ…
「おらぁあ!!」
その時ふくだんちょーさんは最後の足あ掻がきをしてきた。私はとっさに避けようとするが、
くそっ!一歩遅かった…!
勢いよく来た拳が私の横腹にヒット……しなかった!!!スレっスレのところで避ける。
「あ~ぶねぇえぇえ!!もうちょっとで死ぬとこだったわ!!」
いやまじで!!骨逝ってたわ!!あぶねぇ!!!
「くそぉ!!お前なんなんだよ!!!邪魔するな!!!糞ガキのくせにぃ!!!」
喉に拳いれたのに、もう復活してやがる…!!騎士団だからか!?騎士団だからなのか!?根本的に日本の奴らとは鍛え方が違うってぇのか!!えぇ!!??聞いてねぇぞそんなこと!!言われてもねぇけどな!!!
私はやけくそになりながらも目の前の奴を改めて正しく認識し直した。
「くそっ!!こうなったら!!!」
とその時何かしてくるようだった。私は気を引き締め直す。
「火の情熱たる、加護の元に!!!」
あ????
「ファイアボール!!!」
…………。
…?
わー、ひのぼーるがこっちにむかってくるよぉ???
その火のボールは私を通り過ぎて後ろの壁に激突した。汗を滴ながら凝視してみるとそこから火がでて燃えだす。
木の建築物なので最悪である。
「くそっ!!外したか!!ならもう一度!!!」
あ、もういっかいくる~~~。
てか、アイツら外に出した方がいいよね。
私は目配せをすると黒髪少年と目があった。少年は頷くと外に出るそぶりを見せた。
(あれで分かんのか、すげぇな少年)
「火の情熱たる加護の元に!」
っと他の事に気をとられている場合じゃなかった!!!
「やけくそじゃい!!こんなもん!!!」
理一はもうファンタジーの世界の衝撃がすごすぎて正常な判断ができないでいた。
「ファイアボール!!!」
私の渾身の技!!!
「バリアァァアア!!!」
と言う名の守り態勢いいぃぃい!!!
火のたまがこちらに向かってくる。熱い。
直感で思った。
あ、これ焼ける。こんがりするわぁ、多分。
っと。
『バリア』
その時聞こえた。耳からではない。私の脳内から、『バリア』と言う誰かの声が。
少しの時間がたっただろうか。暑さに身を固めていたのだが。
火の玉の熱さがこない。
私は視線を前に寄越す。
前を見たとき私は息をするのを少し忘れてしまった。
そこには正真正銘の『バリア』があった。
バリアに触れた火の玉はふくだんちょーさんに跳ね返る。
ふくだんちょーさんは自分の放った火の玉に焼かれる。
そして力なくパタリと倒れた。
…またしてもピクリとも動かない
え、終わり?
「……えっ、呆気なっ」
本当に呆気ない終わり方であった。
ーーーーーーーーーー。
結局自分の放った火の玉が強力すぎたのかあの後ふくだんちょーさんは起き上がってこなかった。隣の家にまだ使える強度のロープがあったのでそれで手と足を縛る。
ふくだんちょーさんが私に向かって放った火の玉はあの時は確実に家に着火したがそれはバリアさんが吸収していった。恐る恐る…いや、結構ガッツリバリアさんに触れるとすーっと消えていき、その後家全体を見てみると焼けた所は黒い焦げが少しだけ残っていて、自分の火の玉で焼けて倒れていたふくだんちょーさんは綺麗な体に戻っていた。恐らくこれもバリアの影響なのだろう。多分。自信はないが。
「なぁなぁお前凄かったなぁ!!」
考え事をしていると砂薄緑色の少年が話しかけてきた。
「おまえの使ったあの青色のとうめいっぽい壁ってまほうだろ!?凄いな!」
目をキラキラとさせながら私に話しかけてきた。
ちなみにバリアさんは青色だったがどちらかと言うと薄青だ。やはりあれは魔法の部類に入るのだろうか。
「なぁなぁ俺にもその魔法教えてくれよ!」
なんか期待されている。教えてやってもいいが、私には何でバリアが出てきたのか分からん。どういう原理なのかも知らん。
「すまん、教えることはできん」
「はぁ!?何でだよ!」
言い方は冷たいかもしれないが出来ないものは出来ないんだよ。
そもそもふくだんちょーさんは異世界の特徴、魔法を使うときに、何だったっけ、『詠唱』?ってやつだ、それをやっていた。仮にもふくだんちょーさんは騎士団なのだ。国に仕えている。その人が詠唱をしたのだ。私との戦い?で結構叫んでわめき散らしていたの追い詰められていたのだと思う。その状況で詠唱。えーっと確か『火の加護の情熱~』いや、『火の加護のファイアーボール』?
…まぁいいか。そんな感じの事を言って打ってきやがった。
しかし私は『バリア』と言うだけで目の前に出現。それで身を守った。本来ならば『うんったらかんったらー!』とか言って『バリア』って言うんだろう、仮説だが。
これも勇者召喚とか関係しているんだろうか
まぁあの時は助かったから良かったけど今度からそう上手くいくかと聞かれたら出来そうにない。
「何で?…俺はこれでかぁさんを守れると思ったのに、」
こちらに黒髪少年が近づいてきて言う。
少し強い口調で言ってきて早く秘密を教えろとでも言いたいように目の奥がぎらぎらしている。
…なんで私が責められているんだよ。
「私だって何であのバリア?…って言っても分かんねぇか?えーっと、青い壁か。青い壁が出てきたのか分かんねぇんだよ、そもそもあの壁が私が出したのじゃないかもしれない。もしかしたらお前達の誰かかもしれないし」
「それはない!」
即答された。黒髪少年は続けてこう言う。
「だって俺はかぁさんを助けたいと何回も思った!けどなんも起きなかったんだ!」
「あ、じゃあ誰か私に助かってほしいって願ったんじゃない?そして私には何かしら特別な力があって…」
「「「それはない!!」」」
いつの間にか全員の少年が私の側まで来ていた。そして即答される。せっかく中二病発言をしてやったと言うのになんという返事か。まぁ、 勇者召喚、異世界から召喚されただけでも特別だと思う。
この話も国家騎士団であるふくだんちょーさんに聞いてみよう。
「……ねぇ、ホントに、ふざけないで答えてよ…」
とその時黒髪少年が言った。
「…これ以上誰かが傷つくのは…嫌なんだ」
教えろ言われても分からんて。いつになったら理解してくれるやら。
それよりこんな空気苦手。逃げる逃げる。
さっさとふくだんちょーさん起こして質問攻めしてやろう。