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俺の騎士道!  作者: 多摩川
幼年期編
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あいず・おぶ・たいがぁ

俺はこのやり直す事になった人生を、良い物にしようと、生まれた時から決めていた。

折角だから全力で生きてみたいのだ、もうしが無い100円ショップの店長だけはこりごりである。

無限にある仕事、増えない人員。

そしてヤクザみたいに無理難題を次々と思いつく社長。

その全てから遠ざかりたい。



それにしても赤ちゃんからやり直す人生と言うのは、未来がバラ色に見えてくるよね。

ただし体が思うように動かない。

特に力が無いので首がガクガク動く。

ああ、コレはあれだわ。

妹が産んだ甥っ子ちゃんと一緒だわ、首が据わらないって奴だ。


しょうがないので周りを見回す、これしか今の俺にはやることが無いのだ。

この世界の父親はこの家で偉い人らしく、どうやら貴族の家に生まれたらしいことが、やがて俺にも判る様になった。

良かった恵まれた家だ。

柵の付いたゆりかごの中で、俺はゆらゆらと揺れる景色の中で、目に見える全ての物を見ている。

外の景色は明るく、温暖な気候。

どうやら屋敷の二階にあるらしい自分の部屋から見る窓の外の世界。

見ていると気分が良い、遠くではルネッサンスみたいな形の屋根が見える。

ヨーロッパ風の町だ、町の住民もヨーロッパ風の顔立ちだ。


そんな生まれたての赤ちゃんがいる部屋に、家族が次々と様子を見に来るのだ。

両親や兄弟、そしてこの家の使用人たち。

そして驚いたのは一番上の兄貴は、なんと17歳。

こんなに年の離れた兄弟は、日本じゃなかなかいないぜよ。

父ちゃん、がんばったんだね。

しかしだ、問題があって俺の母ちゃんと、一番上の兄貴は、どこかよそよそしい関係だ。

ひょっとして兄貴って前妻の子って奴なのかな?

まぁ、母ちゃんが若いから多分そうだろうなぁ、きっと。

そんでもって、すぐ上の姉は8歳で、俺を何時もニコニコ笑いながら撫でてくれる。

ウン、俺もこのお姉さん好きだ。

俺はこの人達をすぐにおしゃべりがしたいと思った。だって暇なんだもん。

然しあれだ赤ちゃんの頭って、物事を考えられる時間は少ないんだね。

この人が言っている者はなんだろう?

単語はこれで合って居るかな?

なんて考えると、すぐに目が疲れて寝落ちしてしまう。

赤ん坊がしょっちゅう寝て、しょっちゅう起きるのには、こう言う理由が在ったのかと判った。

でもこうして俺は眠くなるまで頭を動かし、そして体を動かした。


やがて言葉も大体分かる様になる。

そんな俺の最初の目標はハイハイが出来る事だ。

それができたら俺は家の中を探索して、魔導書か何かを見つけるのだ!

まずは神童と呼ばれる様なそんな子供になってやる。

そして冒険を繰り広げて大金持ちになって暮らすのだ。

俺のセカンドライフはバラ色の人生にしよう!



しかし2週間ぐらいたったころ、それが甘い考えであった事を俺は思い知らされる。

お腹がすいては泣き、お漏らしをしては泣くしかない俺は、人に迷惑をかけないようにできるだけおとなしく過ごしていたが、それでもコミュニケーション方法がそれしかないから、いつもの様に泣いていたんだ。

……すると殴られたのだ。メイドに。


「うるさくするんじゃないよ!

本当にガキはこれだから嫌いなんだよ!」


殴られた俺はびっくりして泣くのをやめた。

見ると憎悪に燃えた目の黒い髪のメイドが、俺と二人っきりになった瞬間、その本性を露わにしたのだ。

びっくりして見つめる俺。


「むかつく、本当にこのクソガキが」


嫌われるなんて思わなかった俺は、ショックを受けてむずがる、するとその瞬間に、先程よりも強く殴られた。


「おとなしくしろ!さもないともっと酷い目に合わせるよ!」


俺は恐怖した、そして沈黙する。

この日から、この女の前で一切泣かなくなった。

このメイド女の名はミランダと言った。

恐ろしかった、動かない体、そして愛情もかけらも無い目で、見下ろす絶対の強者。

俺は逆らったら何をされるのかと怯え、そして空腹にも、糞便に汚れるおしめにも耐える事を、暴力でもって教え込まれる。

結果お尻が真っ赤に腫れあがる程、ただれる。


……みじめだった。


悪い事はまだ続く、このクソメイドが俺の子守りをしていると、俺がむずがら無いと言うので、なんと俺の子守りをこのクソメイドがする事になったのだ。

俺はショックだった。逃げられないのだ。

この結果、俺は甘ったれた日本人だったと痛感する。

嫌な物は嫌なのだと言わなければダメなのだ。

ノーと言えなければ伝わらないのだ。

俺は後悔し、この境遇から脱するべく行動しようとした。

しかし自分はただの赤ん坊でしか無い。

まったくの無力でどうにもならないと、痛感するしかない。

生まれたその瞬間から世界は残酷だと知った。

こうして俺はまともに動かない体と、動かせない環境で数カ月を過ごすしか無かった。


いつもの様に怯えながら過ごしていたある日、俺は必死になってベッドの柵を使って、捕まり歩きの練習をしていた。

もう揺れるベッドでは無い。

ただふがいない自分の体は相変わらずで、正直捕まり歩きすらおぼつかない。

だが試しに懸垂みたいな事をすると、コレはちゃんと出来るではないか。

そうなのだ、俺はいつの間にか腕の力だけで体を持ち上げる事が出来る様になって居た。

なので腕の力だけで柵をよじ登り、

そして遂に尻から落ちる様に、地面に降り立つ事が出来た。

ベッドに戻る事が出来るかな?あのクソメイドに見つかると何されるかわからないから怖くてしょうがないんだけど。

すると頑張れば何とかよじ登って、ベッドに戻る事が出来る事が出来た。


上出来だ、一歩前進だ!


俺は(きた)る復讐の日に向けて着々と準備を始めた。

その為に俺は再び柵をよじ登って、そしてカーペットの上に尻から落ちた。

そして体勢を立て直し、そして四つん這いになって動き始める。

う、動かない。それに何より疲れてしまう。

寝てばかりで運動してないからな、当然だよな。


諦めようか、そう思っていた時だった。

俺の頭の中に、なぜかロッキーというアメリカ人にありがちな名前と共に、タフなメロディが流れ始める。

俺は虎の目を持つ男にならなければならないと、何故かこの時判った。


そうか、そう言う事か……それなら特訓だ。


幸い俺は放置され気味で大丈夫な、手間のかからない赤ちゃんだと思われているので、この部屋には誰も居ない。

ようし、そうと決まれば俺は高速ハイハイを身につけヴィープゲスケ家の、ハイウェイスター……いや、ハイハイスターになってやる。

あのクソメイドと、いきなりやって来る姉貴にさえ気をつければ、俺がハイハイできる事は多分ばれまい。

奇襲を成功させる為にも、今は極秘特訓あるのみだ。



こうして俺は、ストイックに疲れるまでゆりかごの周りを何周も回る事から始め、そして何日もかけて腕や足腰を鍛えてから、次に絨毯のヘリから、別のヘリまで、何往復も全速力で移動を繰り返す。

ときおりウチの姉貴が「ゲリィー!」と叫んで部屋に入って来るので、その時は諦めて特訓をせず、コロコロと体を横に回転させる事で、動いてる風を装った。

姉貴はそんな俺を抱き上げ、頬ずりしては可愛がる。

姉貴……天使ちゃんだわ。


やがて俺は足腰の強さに自信を深め、冬のある日、この部屋から出ることを決める。

この頃になるとメイドさん達の性格も大体つかめてきて、やけに他人に対して攻撃的なクソメイドの生態を把握する事が出来る様になった。

……結構嫌な奴なのだ。他のメイドにも。

こいつは俺の面倒を見る当番になると。


「ああ、コレでゆっくりできる。

洗濯とか掃除とかは全部あの赤毛に押し付けて、私は寝ちゃおう」


と言って、俺の部屋にあるソファーでグゥグゥと寝るのが習慣になって居た。

ちなみに赤毛と言うのはメイドで新人の、マリーと言う子で、気は強いが基本いい子である。こいつとは明らかに違う。

こいつが寝ている姿を見る度に、俺は率先垂範と言う言葉を叩きこみたくなる。

まぁ、それだけならまだ我慢もできるのだが、疲れているなら寝かしてやろうと思う、優しい俺に対し、眠りから覚めたこいつは。


「ファぁ、本当馬鹿みたいにおとなしい奴でよかったよ。

本当、これだけがこのクソガキの良い所だよなぁ……」


と、のたまう始末。

マジでこいつにはガチガチの縦社会を叩きこんでやりたい!復讐してやりたい。

それだけが俺の秘密特訓を支える原動力だった。

特訓は続く、辛く長く暗い部屋で。


赤ちゃんなめるなよ、このクソメイドめ!

こいつにはすぐさま思い知らせてやる!


ロッキーすきですか?僕は好きです。

何時見てもあれは名作だと思います特に1は、擦れたフィルムの質感も含めて這い上がる男にふさわしい魔法に満ちています。


まだ見てない人は、ネットでもいいので見てみてね。

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