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俺の騎士道!  作者: 多摩川
幼年期編
15/147

兄貴が語るパパさんの駆け落ち伝説

あれから一か月たちました、僕ことゲラルド・ヴィープゲスケは今、ダレムの山荘に向かう馬車の中にいます




「ああ……行きたくない」


馬車の中、広大で風景が良く、ところどころ雪が残る田舎道を進む中、僕の隣の男が、今にも死んでしまいそうな顔でそうつぶやく。

彼の名は、グラニール・ヴィープゲスケ、そう僕らのパパさんです。

40代のいいおっさんである彼は、この馬車に乗り込んでから、まるで子供のように()ねています。


「お父様、お久しぶりですね、おじいさまに会うのは」


六人掛けの大きな馬車の中で、俺の兄貴が(はず)んだ声でパパさんに声を掛けます。

馬車の中には他にもママさんも居れば姉貴もいます。みんなそれぞれ楽しそうでした。


「パパニャン、調子が悪そうニャン」


……ああ、クソ猫お前も居たか。

今日もママさんに抱かれて、エロおやじ見てぇなツラしてやがる。


猫と兄貴の声を聴いたパパさんは、悲しそうに笑うと「体は大丈夫だ、心配はない」と答えた。

身体が心配ないということは、精神上の問題なのだろうか?

俺はパパさんの心を悩ますものが何か分からず、他の家族の顔色をうかがう。

しかし誰もパパさんのような、悲しげな表情を浮かべていないので首をかしげた。

逆に兄貴と姉貴は祖父に会うというのが非常に楽しそうである、ママさんも我関せずといった感じでクソ猫相手に「にゃんにゃんにゃー」と言って奴をつけあがらせていた。


クソ猫……ここぞとばかりに“ニャー”と鳴くな、お前標準語ペラペラだろうがっ!




こうして家族が集まって会話をはずましている。そんなダレムの田舎道。

そんな僕たちヴィープゲスケ家なのだが。

パパさんは王様に随行したため先にダレムの山荘に向かったのが3日前、そして僕たち他の家族がダレムに入ったのはたった今である。


我が家はダレムに滞在する間は兄貴の血の繋がったおじいさんである、マウーレル伯爵家の別荘に滞在することになっていた。

明らかにマウーレル伯爵の元に行きたくなさそうな僕らのパパさん、いつもなら仕事に逃げ込む人が、今日は逃げずに来ただけでも何か怪しい。

……家庭トラブルを見たら、すぐに逃げ出すダメおやじのくせに。

事情がよく呑み込めないので、色々知っていそうな兄貴に声をかけた。


「お兄様、昔お父様と伯爵様との間に何かあったのですか?」

「えっ、まぁそのなんだ……」


言いずらそうな兄貴に変わってパパがこう言った。


「昔私は伯爵様のお嬢様と一緒になりたくて、駆け落ちしたのだ……」


にゃ、にゃんですと?

俺が驚いていると、ママさんが懐かしそうに声を上げた。


「懐かしい話、初めてその話を聞いたときは、こんなロマンチックな恋愛話が、本当にあるなんて!と思ったわぁ」


びっくりした俺は「えっ?ママは……お母様は知っているの」と、思わず言葉遣いを間違える。

ママはそんな俺をとがめることなく、笑って答えた。


「ママとパパは、昔から知り合いなの。

パパはヴァンツェル・オストフィリアで学問を修めていてね、だけど帰国したばかりで何も役職についていないから、生活の為にママの家庭教師をしていたのよ」

「ええっ!」


衝撃の事実に驚く俺。

やがてママさんは何故か色っぽい目線をパパさんに投げながら「本当、悪い先生」と言い……


パパさん、仕事が早いな……ていうかアンタモテるんやね。

あ、親父が耳まで顔を真っ赤にしていやがる、ちょっとかわいいな……


「私は初婚だけど、パパは再婚なの。

前の奥様はシオンさんと言う人で、シリウスやエリアーナ。

後あなたはまだ会った事無いけど、ベガ、アイネ、ウィーリアと言う三人の姉もいるのよ」


ママさんは真っ赤な顔のパパさんを、挑発するように微笑みながら衝撃的なことを言う。


「え!まだお姉さまがいるの?」


初めて知った事実に驚く俺。


「い、いつ会えるのお母様!」


早く会いたくなってそう言うと兄貴が「いやいや、あんなうるさいの、会わなくてもいいだろう……」とボソッと呟いて……

兄さん、いきなりブラックになりましたがどうしたの?


「え、私はお姉さま達大好きですよ、(にぎ)やかでおうちが楽しくなりますもの」


天使ちゃんな俺の姉貴が、いつもの平常運転でそう言うと、兄貴が心底嫌そうに「あいつらがヴァンツェルから帰ってきたら、俺は友達のところを泊まり歩くからな!」と言い出し……

兄貴、そこはパパさんの息子らしく、仕事に逃げ込むところ……

あ、嫌ですか……そうですかぁ、そうですよねぇ、僕も嫌ですわぁ。なぜかギロリと睨まれましたわぁ。


「あの子達は今留学しているの、パパと同じ学校にね。

来年あたり帰ってくると思うわ」


ママさんがそう言うと兄貴は「世も末だ……」と言って顔を外に向け。

……そんなに嫌なのか、兄貴。

ママさんは昔を思い出しながら、懐かしそうに言った。


「シオンさんはとても綺麗な人だったわ、心もお姿も。

パパが好きになるのもわかるわ……」


ママさんがそう言うと、パパさんは少し気分を害したようで静かに「おい、やめろ……」とたしなめる。

それに対し、ママさんは気の強そうな声でこう言った


「どうして?あなたが愛した人じゃない。

私は優しくしてもらったからあの人が好きなのよ」

「う、うん……」

「あんなに素晴らしい人を忘れようとするなんて、薄情よ、絶対……」


ママがそう言うと、馬車の中は空気が冷えてしまい、誰も何も言わなくなる。

俺もパパの前の奥さんだという、シオンさんに興味がわくが、さすがにこの空気の中で誰かに尋ねる気にはなれず静かに時を過ごす。

馬車はそのまま冷えた空気を密閉したまま、大きくて立派なお屋敷の前にたどり着いた。


「うわぁ、すごい!」


目の前に現れた白亜の豪邸に、思わず叫んだ俺。

兄貴は俺によって破られた重い空気を歓迎するように、明るい声で言った。


「すごいだろゲリィ!中はもっとすごいんだぞっ。

おじいさまに挨拶したら俺が案内してやろう」

「おおっ、お願いしますお兄様っ」


伯爵は日本の幕藩体制で言うところの、大名みたいなものである。

彼らは自分の領地をもち、自立した国のように自分の領地を動かす。

マウーリア伯領と言えば、広さでも、領地の豊かさでも有名なところである。

ただの山荘にすぎないダレムのような場所にも。セルティナ(王都)にある貴族の屋敷でも十分通用するような屋敷を構えているのが、その証拠だろう。


兄貴は頻繁(ひんぱん)にここにきているらしく、勝手知ったると言った感じで俺たちを案内する。

屋敷の中に入った俺たちは、そのまま客間に通された。

豪華(ごうか)な調度品が、品よくポツリ、ポツリとさみしくない程度に配置された客間。

そこに一人の背が高く、そしてほっそりとした白髪の老人が立っていた。


「おじいさま!」


兄貴がそう言って喜んで彼のもとに駆け寄り、そして抱きしめる。おじいさんも嬉しそうだ。

姉貴も同様に駆け寄り挨拶をして、やさしく抱きしめる。

笑顔で顔がとろけそうな爺様の顔がほほえましい。

これは良い雰囲気だなぁ、そう思っているとパパさんが腰を低くしながら微笑み「今回は家族がご厄介になります」と声をかける。

すると爺様これまで嬉しそうに、ニコニコとほほ笑んでいたのに、スゥーっと表情を無にして「お前以外を厄介と思ったことは無い」と……


ええええええっ!

はっきり言うた、ハッキリ言いましたよこのじじいっ!


パパさんは笑顔をヒクヒクさせながら「いや、困りましたなぁ。あはは……」と、言ってかろうじて踏ん張る。

パ、パパが、パパさんが……ダンシングフラワーみたいに体をくねらしてる。

……耐えているんだ、パパさん。


「まぁ、冗談だ。気にするでない」


じいさまは、相も変わらず無表情でそう社交辞令を言うと、ママさんや僕のほうに顔を向けた。

まさか俺らも“無表情”では?と思っていたがそんな事は無く、品よくニコリとほほ笑むと伯爵はこう言ってくれた。


「ようこそ、ご自宅ほど(くつろ)げはしないでしょうが、ごゆるりと滞在くだされ」


ママさんは「そんなとんでもございません!こんな立派なお屋敷に滞在を許してくだされ、伯爵様に感謝いたします」と答える。

それに黙って満足そうにうなずく伯爵、次に俺と目を合わせたので俺も挨拶をした。


「初めまして、僕はゲラルドと申します」

「ホウ、お幾つかな?」

「この前6歳になりました」

「ふふ、しっかりした男の子だ。

兄をしっかり支えるのだぞ」

「もちろんです、お兄様も僕に勉強を教えてくれるんです」

「ホウ、それはそれは……」

「お兄様は物知りですし、それに優しいんですよ」

「はは、そうかそうかシリウス、お前はできた人間に育ったようだな」


兄貴がこの爺様に可愛がられていることを直感的に把握した俺は、ここぞとばかりに兄貴をヨイショしてみると、兄貴は嬉しそうにニコニコしながら「いえいえ、家族を大事にするのは当然です」と模範解答のような答えを話した。

じいさまはそんな兄貴に対し目を細めて喜び、そしてウンウンとうなずいた。

そして次に、無表情になってパパさんのほうを向き直ると「昔のようなことをして無いようで安心した……」と、貫くような一言を……


あ、パパさんまた不思議なほほえみを浮かべながら、ダンシングフラワーのように体を揺らしている。

……()いている、()いてる。

昔何かやらかしたんだね、パパさん。


パパさんは言われっぱなしだと追い込まれるのを感じたのか、急ぎ姿勢を正すと、貴族らしい顔立ちでこうじいさまに行った。


「伯爵様、実は陛下が明日狩りに行かれる際に、こちらの屋敷で食事をとることを希望されておりまして。

もしよろしければ、陛下をこちらにお迎えしていただけないでしょうか?」

「何、陛下が?

おお、もちろん喜んでお迎えするとも、何ならご一緒に狩りに参加させてもらってもよいぞ」

「あ、いえ。狩りのほうは近臣の者だけで……」


あ、パパさんできるだけ遠ざけようとしている。

明日パパさんは王様と一緒に狩りをするからだな。

そんな事情はとっくにお見通しの伯爵は、ギロリと威厳のある目つきでパパさんを見ながらこう言った。


「何を言う、狩りにはお前も参加するのだろう?

最近お前の話はよく聞くぞ、王の寵臣(ちょうしん)としてな、随分(ずいぶん)羽振(はぶ)りがいいそうじゃないか」

「いや、私はそんなに……」

「とにかくだ。だったら陛下に言ってくれ、まだまだ私も王に伺候(しこう)いたしますぞと、息子も是非参加させたい」

「は、はい……善処(ぜんしょ)します」

「善処?善処では無い必ずヤレ!」

「か、かしこまりました。王にお(うかが)いを必ず立てます」


どうやらパパさんが逃げ出さずに伯爵の元に来たのは、王様の命令があったからみたいだね。

おかしいと思ったんだよ、家族のトラブルがあるとすぐに逃げ出すダメパパが、ちゃんとストレスの元と向き合うんだもの。

……まぁ、王様命(いのち)の彼らしいと言えば、彼らしいが。そうでなければ来なかっただろうしね。


「ゲラルド、エリアーナ。

屋敷の中を案内しよう、一緒に来い」


込み入った話になり兄貴が気を()かせて僕たちに話しかけた。

こんな修羅場は嫌だったので、兄貴の話の飛びつく、俺と姉貴。


「お、おお。それでは私も邪魔をしてはいけないので……」


パパさんもそれに便乗してエスケープ……


「いや、お前は残れ。

これからお前たちが泊まる部屋に案内をしなければならん」

「あ、ああ。そうでしたな……」

「お前、私を避けていないか?」

「そ、そんなとんでもない!」

「避けているな?」

「そんな筈な……」


バタン……パパを地獄に残し。僕たちは扉を閉めてここから立ち去った。

ミランダ事件のようにパパは逃げだせない。


「さぁ、お前たち行くぞ」


兄貴がそう言うので、俺は一応心配になり「お父様は大丈夫でしょうか?」と尋ねる。


「大丈夫よゲリィ、おじいさまはパパをイジメるのが好きなのよ。

昔聞いたもの、パパをイジメると他の人では見せない反応をするから面白いんだって。

戦場では勇敢なのに、なんであいつは普段はああなのか?って、言っていたわ」

「ふーん、じゃあパパ大丈夫だね?」

「まぁ、パパはもうこの屋敷に来ないかもしれないけどな。

いつものように王様のところに逃げ込んでるよ」


なるほど、彼が出世するサイクルはこれかぁ……

何かってあると王様のところにいるものね。王様に可愛がられているのもわかるわぁ。

……あれ、そういえば何か忘れているような。

あっ、クソ猫を修羅場に忘れてきた。

まぁいいかぁ、どうせクソ猫だし……


俺は兄貴の手引きでこの屋敷や、山や川を含んだ広大な敷地を見せてもらった。

王都では決して見ることができない大自然や、センスのいい伯爵の美術品の数々に目も大いに楽しむ。

そのうちパパと兄貴の昔話の話が始まった。

兄貴は言う。


「シオンお母様、生きていたらなんていうかな?」


聞いた姉貴が「どういう意味です?」と尋ねる。


「お父様がいつも仕事に逃げ出すことさ、昔ウチは今よりも貧しかったけど、陛下もお父様も今より仕事が少なくて。

今よりもみんないつも一緒にいたからさ。

俺も王宮に勤めているからわかるけど、確かに忙しいんだ。

だけどそれを言い訳にしてお父様も汚いよなぁ、エウレリアのお母様ママさんがキレるのは当然だよ」


俺はふと気になったので兄貴に聞いた。


「シオンさんて、ママの前のママの事ですよね。

どんな方だったんですか?」

「ママってシオンお母様の事か?

お前、言葉遣いは気をつけろよ、使用人の真似は良くないぞ……

お母様は優しい方だったよ、お父様よりも6歳年上だったかな?確か」


えっ、パパさんロリコンじゃなかったの?

変なところに驚く俺に姉貴が言った。


「お父様とお母様シオンさんは大恋愛の果てに駆け落ちして結ばれたのよ」

「へぇ、すごい」


兄貴はそれを聞いて「いや、でも俺の小さい頃は大変だったぞ」と言い言葉をつなげた。


「パパが駆け落ちしたのは、17歳のころで、お母様シオンさんが23歳の時だったんだけど。

お母様はその前にどこかの伯爵の元へ嫁いでいたんだけど、年の離れていた当時の旦那さんと死別して、それでダレムの山荘で静かに暮らしていたんだ。

そのままそういう未亡人は僧になるのが普通なんだけど、お母様はそれがどうしてもいやで、お父様と陛下に相談をしたそうなんだ。

そうしたら陛下が“グラニール、お前は姉上(シオンさんの愛称)の事が昔から好きだっただろう。何とかせよ!”と、言い出し……」


ああ、パパさん。どこまでも、どこまでも王様のポチですやん。

……なんて男だ。


「そうしたらパパさんは初恋がどうやらお母様だったらしいんだけど……昔からの思いを遂げるには、どうしたらいいのかを考えたらしいんだ。

でもお母様は有力な諸侯の娘、そしてお父様はしがない騎士家出身の、しかも魔導士。

あまりにも身分が違いすぎて、普通なら認められるはずがない、そこで二人は……」

「駆け落ちした、と……」

「そういうこと。

お父様は留学が決まっていたので、そのまま留学先に逃げ込んだそうだ。

おじいさまはそれはそれはカンカンで“戻ってきたらお父様を必ず殺す”と公言していたくらいだ。

だから留学の援助も無し、国費も出ない。

大変に貧しい暮らしをしていたそうだよ

そこでお母様が賄い婦みたいな仕事をしてお父様の留学を支えていたそうだ。

今でもおじいさまは、そのことを恨んでいるけど……」


ああ、先ほど伯爵が言っていた“昔のこと”ってこれの事かぁ。なるほどねぇ……


「そのうち俺が生まれてしまってな、お母様も働けないから、いよいよ生活が行き詰った時に、何と陛下がお父様のところに会いに来たんだ」

「えっ!陛下が?」


嘘やん、だってどんなに仲が良くても王様ですよ!そう思っていると兄貴が首を振っていった。


「まだ当時陛下は王子なんだ。

陛下は王位継承権でも、当時は3位ぐらいじゃないかな?当時最有力の候補はシルト公爵で、陛下は言っちゃ悪いけど、評判があまり良くなかったらしいんだ。

そんな情勢下で、若き頃の陛下がヴァンツェルに外交使節の、代表として赴いた際、ついでにお父様のアパートに足を踏み入れたらしいんだ。

当時のお父様は生活が破綻していて、明日には命の次に大事にしていた魔導書を売るつもりだったらしいんだけど、その様子を見かねた陛下が金銭的な援助をお父様にした。

ただその時の条件として“卒業したら必ず帰って自分に仕えること”だったんだ。

おかげでお父様は大学を卒業でき、そして陛下の元に帰った。

だからお父様は陛下が王になりたいと言ったとき、おじいさまに殺されるのを覚悟で頭を下げて許しを請い、陛下のお味方になってくれるよう懇願したんだ。

2年くらいは相手にされなかったそうだけど、俺を連れて行ったらようやく許してくれたそうだ。

だからマウーリア伯爵と、その弟で当時大神官だったクラニオール卿が陛下を支えたんだ。

他にも軍部で絶大な力を持つホーク将軍と、エウレリアお母様の出身家であるバルザック家が陛下を支持して陛下は、王に即位した。

……もちろん、大手柄は立てたけどね」


凄いやん、パパさん。これ小説にできますよ。


「パパ凄いわぁ、私もこんな感じで国を大きく変えるような大恋愛をしてみたい!」


姉貴もそういってうっとりした顔ではしゃぎまわる。

俺もそうだねと思って姉貴のほうに顔を向けた。


あ……鳥が、なぜか鳥が姉貴の肩に止まってる。しかもリスが足元に集まりだした。

姉貴はなぜか昔から動物に好かれる。

どうしてこんなにムツゴロウさん張りに、彼女の傍には動物が寄ってくるのだろうか?

そう思ってしげしげと鳥のほうを見ていると、不意に若い男の声が響いた。


「へぇ、だったらもう相手がいるじゃねぇか……」


うん?どこからだ。

そう思っていると、知らない人の声が再び響いた。


「おい、こっちだよコッチ」


声がしたほうに顔を向けると、屋敷の柵の向こう側に、背が高くてイケメンだけどガラの悪そうな男が、姉貴に「よっ」と手を挙げていた。


「エリィ、久しぶりだなぁ。こんな田舎であうとは思わなかったぞ。

やっぱりお前と俺は運命があるんだな」


ガラの悪いイケメンは、出会った瞬間、とんでも発言を繰り出した。

聞いた俺は(何言ってんだ、コイツ……)と正直思う。

俺はこんな男は知らないし、家族の会話に横入りしたコイツに良い感情も持たない。


……なに、あの痛い男。姉貴の知り合いみたいだけど。

再開したばかりでナンパかよ、うっとうしい奴め、姉貴はお前が相手にできるような安い女じゃあないんだよっ。

はよ消えぬか、馬鹿もんめ……

そう思っていると、姉貴が俺の予想を裏切るように、嬉しそうな声でこう答えた。


「あらフィン、懐かしい!どうしてここにいるの?」


あ、姉貴!あの人と仲が良いの?


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