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俺の騎士道!  作者: 多摩川
青年従士聖地修行編
101/147

秘匿された過去への旅行計画 6/6

俺がへこまされているのを見た、アシモスは「まぁまぁ」とレミちゃんを(なだ)めてさらに口を開いた。


「それならマンドラコラの採取(さいしゅ)もすればいいじゃないですか」


お前馬鹿じゃないのッ!


愕然(がくぜん)とした俺を前に、レミちゃんは嬉しそうな笑みを浮かべて「早速その機会が訪れたなラリー!」と俺に言う。


「それなら私もその素材集めに協力してやろう」


彼女はそう言って協力を申し出た。

俺達男3人は思わず顔を見合わせる。

やがて二人は、示し合わせてチロリと俺の顔を見た。


……え、俺が決めろってか?


もちろん留守番を任せたいのが本心だが、たぶん先程サリワルディーヌが言ったシチュエーションはこの事だと思った。

そこでサリワルディーヌの言葉に従って、レミちゃんにこう言う。


「それじゃあ、魔導に詳しいみたいだからお願いできますか?」


俺がそう言った瞬間、目の前の二人が顔を青ざめさせ、俺の顔を一斉に見た。

……彼等の希望は違っていたらしい。


「いや、旅だし汚い場所も多いし、それに危険が一杯だし……」


アマーリオがそう言って俺に(断れよ!)と目で合図を送る。

アシモスも目で必死に断る様、合図を送る。

そんな二人の様子を見たレミちゃんは、俺の顔を睨むように見て言った。


「私は一人でルクスディーヌの様な、良くない噂がある町にいる方が危ないと思う」

「うん、サリワール(サリワルディーヌ信者)が俺の事嫌いみたいだし……ね」


そう言ってチロッと、アマーリオの顔を見ると、奴は明らかにふてくされ、次に大げさなそぶりで顔を外に向けた。

……欧米人か!


「そしたらお前があの子の分の、宿泊費も持てよ」


やがてアマーリオが、そう俺に冷たく告げる。

さらにアイツはまだ言い足りないのか「金が()ぇのになんて事を……」と言って、机に突っ伏した。

俺は黙って皆の顔を見回すと、アマーリオ以外の全員が俺の顔を見ている。


……ああ、嫌な雰囲気(ふんいき)ですなぁ。


「あ、うん。じゃあレミちゃんの分は俺が出す」


ああ、女ってお金がかかる……

そう思いながらその視線に応えてそう言うと、アシモスも「まぁそれなら……」と渋々同意した。

因みに原因であるレミちゃん……

彼女はニッコリとあからかさまに笑うと「お前は優しいな!」と言って、遠くから俺の頭を()でるそぶりを見せた。


……実際に撫でても良いのよ?

ああ、やっぱりこのお姉さま好きだぁ。

めちゃくちゃ可愛いよぉ。


そう思って“へらぁっ”とレミちゃんに笑いかけると、俺の隣でアマーリオが(ささや)くような小さな声で「新婚旅行か……」と。

……ほっとけ。

俺の事が嫌いなのか?コイツ……


バサバサバサ


この時羽音をはばたかせながら、ペッカーがテーブルの上に舞い降りてきて「ぐわぁぐわぁー、ぎゅ?(なんだなんだ、何を話しているんだ?)」と俺達に(たず)ねてきた。


「ああ、ペッカーか、俺達明日から薬の素材採取の旅に出るんだけど、お前も行く?」


俺がそう言うとアホのアマーリオが「家族旅行かよ……」と。

……そろそろ食費を払わせるぞ、この野郎。


そう思ってジロリと見た、俺の視線に動揺(どうよう)すら見せないアマーリオ。

……町で恐れられている俺を相手にこの素振り、奴は大物だ。

そんな俺達をよそに、ペッカーが広がった地図を見てレミちゃんに尋ねた。


「ぐわぁーぎゅげぇぐわっ?(目的はどこになる?)」


それを聞いて思わず通訳をしようとしたら、レミちゃんは「表の川の上流だ、水源の湿地に向かうみたいだな」と……

え、言葉分かるようになったの?

俺が思わぬ変化に驚いていると、ペッカーが何故か不敵な笑みを浮かべ、地図にある一つの山に(くちばし)をコンコーンと突き立てた。


「ぐあ、ぎゅー(ラリーは此処、此処に連れて行こう)」


ペッカーがそんなことを言うと、レミちゃんは一瞬目を見開き、次に嫌ァな笑みを浮かべた……

やがて俺を見て……え、何?


「ラリー、良い所がある、ココに行こう」


ニマニマと気味の悪い笑みを浮かべながら、俺にそんなことを言うレミちゃん。


「どこ?」


主語が無いよ、お姉さん……


「いいから行こう!」

「うん、別に良いけど……」


サリワルディーヌの言葉を思い出しながら、良く分からない話に同意する俺。

レミちゃんはそんな俺を無視して、アシモスに言った。


「目的地だが少しだけ変更してもらえないか?」

「どこに行きたいのですか?」

「この目的地から少し西に言ったところに、本当のベニート川の源流である、小さな泉が湧いているレプレンツ山と言う山がある。

ここには直に飲める水も湧いているし、危険な動物や魔物も居ない。

薬の素材については分からないが、マンドラコラも自生(じせい)している。

ここを拠点にして素材を探すのが良いと思う……」


アシモスはその提案を聞き、アマーリオに尋ねた。


「どう思います、アマーリオ?」


机に突っ伏して面白くなさそうにしていたアマーリオは、その言葉で地図に顔を向けると言った。


「水が手に入るのは良いですね。

素材は此処から1時間ほど行ったところにもあるので、安全を考えると此処は良いと思います」

「え、アマーリオは此処がどんな所か分かるのか?」


驚いた俺がそう言うと、アマーリオは鼻を得意げに膨らませて「おう、俺は大いなる知識を得たのだ!」と、自慢げに……

……アマーリオのくせして偉そうに。

何故かその様子が面白くない。

そんな俺にレミちゃんが、何か(たくら)んだ笑みを浮かべ、次に甘えたような可愛い声で俺にこう言った。


「ラリー、私は歩きたくないからダーブランに乗せて欲しい」

「へ?」

「私、歩けない」

「あ、ああ……うん、荷物も積むけどそれでいいなら」


俺のこの返事を聞いたアマーリオは「またこいつの悪い(くせ)が出たよ!」と言って俺を睨みつけ……

なんだよっ!


「なんだよ、さっきから俺に突っかかってきてよっ!」

「旅に来たいと言ったのはコイツ(レミ)だぞ!

なんでそれなのに、コイツばかり優遇(ゆうぐう)されんだよっ!」

「何言ってんだ、ダーブランは俺の馬だぞ。

それに旅の荷物だってあいつに積むんだ!

文句があるならダーブランを連れて行かないぞ!」

「だからって平等じゃ……」


バチッ!ドサッ……


次の瞬間青白い光を伴って電撃がレミちゃんの指先から放たれ、アマーリオを襲う。

一瞬で気絶したアマーリオ。

その様子に驚く俺とアシモス。

そんな俺たち二人にレミちゃんは言った。


「ごめん、間違えて電撃を撃った」


間違えてないでしょ?


「そ、そうなんだ、じゃぁしょうがないよね」


思わず俺がそう言うとアシモスが、引きつった顔で俺を見る。


「…………」


沈黙が重いっす、アシモスさん……


「ラリーは私に優しい、そんなラリーが私も良いと思う」

「……うん」

「ラリー。ダーブランに乗っても良い?」

「……うん、もちろんです」


ああ、ダメな男だと、自分でも判るわぁ。

隣でアシモスが盛大に溜息吐いているし。

でもダメって言えない……

だって、テーブルの下から綺麗(きれい)な脚が見えてるんだもん……


俺はその後、レミちゃんから「こいつ(アマーリオ)と違ってラリーは優しい」とか「ラリーは私が好きだよな」等とありがたい言葉を(たまわ)る。

その隣ではアシモスが、溜息を吐いて俺に対し、首を横に振って見せた。

次いでみせる険しい視線に、目を合わせられない俺。

思わず顔を下に向けた。

……その様子を見て彼の中で、俺の評価が下がった事を悟る。

辛いなぁ……




こうして俺達は此処にいる全員で、素材探しの旅に出る事が決まった。

この後、男に厳しいが女に甘い俺は、アホのアマーリオから散々に叩かれ、正直気が滅入(めい)りそうになる。

それでもチロチロとテーブルの下から見えるふくらはぎ。

あれがある限り、俺は……

あの子に優しいぞ❥


ここまで見てくれた皆様、ありがとうございました。

亀更新で申し訳ございません、さすがに次はもっと早く更新したいと思います。


もしよろしければ感想、評価、ブックマークなどが頂けると幸いです。

これが描く上でのモチベーションになっております。


それでは次回もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] レミちゃんの電撃DVが超怖いですフフフ 声にでてわらいました 面白いです 更新ありがとうございます!
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