異世界流刑地ルドウィジア
「被告人に、終身刑を申し付ける」
裁判官のその言葉を聞いた時、俺はガッカリしてしまった。
今まで何人殺したのか、数えきれない。
何人も斬り殺したし、何人も衰弱死させた。正義のためだとは思っていたが、どんな理由があっても殺人を犯した以上は悪だと言われれば否定できなかった。
だから、きっと自分は死刑に処されるのだとばかり思っていた。
終身刑如きで済まされようとは、俺の雷鳴も地に落ちたというものだ、と思わず笑い声さえこぼれてしまったほどだ。
「被告人の罪状は殺人、内患、放火、拷問など多岐に渡り、その残酷さは筆舌に尽くしがたい」
ただ、一つ疑問があるとしたら、俺を裁いているのが判事ではなく、およそ見たこともない格好をした老人であることだった。
白いゆったりとした長衣に、長い白い髭が流れている。
その姿は、簡単に言ってみれば、"いわゆる神様"というやつだ。
"いわゆる神様"は慣れ切った様子で、判決を続けて述べる。
「また、被告人の罪は単に被害者を貶めたにとどまらない。被告人が犯した罪は民を混乱させ、国を揺るがし、後世にまでも影響を及ぼした」
そんな"いわゆる神様"が大真面目に俺への罪状を読み上げるのはあまりにも滑稽で、まるで出来の悪いカリカチュアのようだ。
「よって、ルドウィジアへの終身流刑が適当と判断した」
「いいよ、もう」
神様はまだ何か言おうとしていたようだったが、俺はそれを遮った。
「俺は死んだんだろう?」
「……わかっていたのか」
眉をひくつかせて、神様は言う。
「何人も殺したからな。自分が死んだかくらいはわかるさ」
神様からの返答はない。続きを促されていると判断して、そのまま続ける。
「よくわかんないけど、あんたは閻魔様みたいな人で、俺は地獄行きってことだろ?」
「ならば、話は早い」
唸るような声で神様はいい、傍らの杖を振り上げた。そこから光が溢れて、それから、出し抜けに俺の意識は途切れた。