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疾風の吹く頃に  作者: グレイキャット
出会い
9/9

前夜

「そろそろってわけかい・・・・・・」

 女主はうめくように言った。その目はひどく悲しそうで・・・どこか、ホッとしているようでもあった。夜斗は無言で、2階へ続く階段を見つめていた。彼の目は・・・・・・妙な光を放っている。

「いいのかね・・・こんなことが」

 女主は夜斗をじっと見つめた。いつもに比べて真剣なその表情に、夜斗はほほ笑んだ。

「いいか、悪いかなんて、誰にもわかりませんよ。分かるのは・・・過去だけだ」

「その過去を、あんたはわからないものにしようとしているんだろ?・・・もしも、本当に過去が消えてしまったら・・・」

「心配いりません・・・覚悟は、とっくの昔に決まっています」

 女主は、ぐっと目を閉じた。この男には、何を言っても意味がない。自分では・・・この男の歪んだ意思を消すことも、心の傷を癒すこともできなかった。そして、後に残ったのは、後悔だけだ。

(でも・・・あの子なら・・・?疾風ならば・・・変えられるのかもしれない)

 女主はゆっくりと目を開く。まだ、希望は残っている。明日にでも自分の元を去る疾風だが、あの子ならば・・・過去を知ることが出来るかもしれない。訳を話すことはできないが、必ず、知る時が来る。3人のつながりと・・・夜斗と自分の過去を・・・・・・。消せる過去など、この世には存在しないはずだ。絶対に・・・・・・。

「わかったよ・・・ただし、あの子を巻き込むんじゃないよ」

「もちろん・・・・・・もう2度と、あいつの人生を狂わせない。俺の過去が消えるということは、あいつの過去も消えるということ・・・誰一人として、知ることなんてできませんよ。当の本人さえも・・・」

「・・・・・・それで、疾風は幸せになるんだね?」

「・・・・・・えぇ・・・きっと」 


 2人の会話を知る者はいない。

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