さわがしい1日
疾風は名を呼ばれ、振り返った。長めの黒髪と、赤い瞳が特徴的な男が、人のよさそうな笑みを浮かべたまま、疾風を見下ろしていた。すると、疾風はにっこりと笑い、声を上げた。
「夜斗兄!!もどってたんだ!」
夜斗は疾風の頭をわしづかみにすると、彼の顔を覗き込んだ。
「お前のためにな・・・」
そして、女主を見つめた。
「女主・・・お元気で?」
「あぁ、今のところはね。でも、あんたがきたからねぇ・・・悪くなるだろうねぇ~」
「いやぁ・・・悪い冗談を・・・・・・」
夜斗は苦笑しながらイスに座ると、鼻をクンクンと動かし、いやらしい笑みを浮かべた。
「いや~・・・おいしそうなにおいですね・・・一口・・・」
女主は、他のお客のために料理を作っていた。宿屋にいるのは疾風たちだけではない。ちゃんとした、お客もいるのだ。そんな彼らのために、女主は、絶品の料理を毎日作る。
女主は、近くにあった鳥の骨をつかんだ。ケダモノを見るような目で夜斗をにらみつけると、女主は鳥の骨を勢いよく振りかぶると・・・投げつけた。
「ゴォッ!?」
顔面で鳥の骨を受け止め、夜斗はおかしな声を上げた。まったく・・・、女主は容赦をしない。本当に女なのかと疑ってしまう。女主は料理をする手を止めずに、声を上げた。
「あたしの料理に触れるんじゃないよ!!このくそ犬!あんたは骨でも食ってな!」
「誰が・・・犬だよ・・・・・・」
悶絶しながらも、鳥の骨を食べる夜斗を横目に、疾風はため息をついた。
また、さわがしくなるぞ・・・・・・と、彼は内心思うのだった。
登場人物の簡単な紹介をさせていただきます。必要のない方はとばしていただいて結構です。
疾風・男・15歳 目の色=藍色 髪の色=緑かかった白 神器=風月 盗人の少年。思いやりのある心の持ち主。相棒の神器は風月。
夜斗・男・??歳 目の色=赤色 髪の色=黒色 神器=神狼牙、異ぶくろ、ジライヤの衣 疾風の義兄弟の男。明るく、すけべだが、残忍な一面も持っている。相棒の神器?は神狼牙。
女主・女・40代後半 目の色=赤茶色 髪の色=茶色 宿屋「花鳥風月」の店主。困っている人間を放っておけないタイプ。疾風をふくむ、多くの人間に慕われている。
以上で、今までの登場人物の簡単な紹介を終わります。引き続き、疾風の吹く頃にをお楽しみください。