闇の中で
初めまして、グレイキャットこと、灰猫です。暇つぶしに読んでいただけるように、どの物語も短いものにさせていただきます。それでは、疾風の吹く頃に、お楽しみください。
理由があるわけでもないのに、人間は力を欲した。いや・・・・・・人間だからこそ欲したのだろう。争い、その争った理由さえも忘れ、力は自分たちに利益だけをもたらすと思っている、人間だからこそ。
「馬鹿で、愚かな人間よ・・・・・・なぜそこまで欲する? 権力も、地位も、名誉も手に入れたというのに・・・・・・お前たちの欲望は、生きている限り、消えないと?」
それは不思議そうに言った。それに対して、ローブを着た人間は強くうなずいた。
笑い声が聞こえる。馬鹿にしたような、あきれたような笑い声は闇の中に響き渡った。
「そうか・・・・・・ならば、いいだろう。人間に最後の力を与えよう。それは、神如き力をお前たちに与えるだろう・・・・・・その代わり、お前たちの心と体を食らうはずだ。どうだ・・・・・・? それでも望むか?」
ローブを着た人間はひざまずき、両手を差し出した。うれしそうな笑い声が闇の中に響く。
「ハハハ・・・・・・そうだ、それでこそ人間だ! さぁ、受け取るがいい・・・・・・この力を、神器を!」
ある1人の神によって、人間は力を手に入れた。その力の名は「神器」。恐ろしくもあり、便利な神器は、あっという間に世界に広まった。誰一人として、隠された狂気に気付くことなく・・・・・・。