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続く恐怖

とある出版社で一人の男が写真を現像していた。


浩介が倒れた瞬間を現地で撮影したものを。


早川拓海は現像された写真に違和感を感じていた。


『確か栗林浩介が倒れる時、人影が見えた気がしたんだけどなぁ』


早川はあの時、浩介と自分の間に誰かが立っていた。そう思っていた。


だからその誰かの影が邪魔をして、決定的瞬間を撮れなかったと思った。


だが写真には人影はなく、しっかりと浩介の顔まで写っている。


早川が違和感を感じるのはそれだけでは無かった。


『……それに、栗林は何を見てんだ?』


倒れそうになっている栗林の視線を空中の一点を見つめているからだ。


『まぁ、撮れているならそれで良い』


「編集長、写真出来ましたよ」


「おう、そこ置いとけ」


早川は現像した写真を編集長のデスクに置くとトイレへ向かった。


出版社の建物は古く、外も中も長い年月が刻まれている。


トイレも例外ではない。更に切れかかった蛍光灯が古臭さに拍車をかけている。


 早川が用を足していると蛍光灯が激しく点滅を繰り返した。


『頼むから今切れないでよ~』


早川は蛍光灯を仰いだ。


早川が手を洗おうと向き直ると、トイレの扉前に人影が立っているのに気が付いた。


影は光が瞬く度にどんどん近付いてくる。


早川は後退り、背中が壁にぶつかった。もうこれ以上は逃げられない。


早川は近くの個室へ飛び込み鍵をかけた。


『何々、何なのアレ? 一体何なの? ……もしかして栗林が倒れた時に居たヤツ?』


 早川が扉を凝視する。


少しの間は自分の激しい息遣いが聞こえるだけだった。


突然扉の内側に影が現れた。影の口がゆっくりと開かれる。


 その時トイレの電気が消えた。そしてもう一度電気が点いた時、蛍光灯は点滅しなかった。


そして人影も消えていた。


「この、オンボロが! 誰か電球位変えとけよ」


 早川は個室のドアを開けた。


そこに居たのは編集長だった。そして、ちょうどチャックを下ろしている所だった。


「おう、早川か。写真見たぞ、まあまあってとこだな」


「へっ、編集長~~!」


 早川は用をたしている編集長に後ろから抱き付いた。


「馬鹿野郎! 何すんだ! てめぇ、離せ馬鹿! ションベンかかるだろ」





「それで俺に抱き付いて来たってか?」


早川は編集長のデスクに連れてこられると事のあらましを説明した。


「……はい、本当にスンマセン」


「まあ、そいつは水に流してやるよ。ションベンなだけにな」


「……」


「……テメエ、今のは笑っとけよ」


「ワハハハ! 編集長、最高ッスよ~!」


 編集長は早川をジロリと睨んだ。早川は出来るだけ目を合わせないようにした。


「良いか。こういう仕事していると、そういう話に関わる事があるわけよ。そんな時はお前、どうすると思う?」


「えっ?……いや、ちょっと分かんないッス」


「馬鹿、お祓いだよ、お・は・ら・い。馴染みのトコがあるから紹介してやっても良いぞ?」


「マジっすか? ぜひお願いします! いやぁ、お祓いッスかぁ。良かった~」


「……お前、まさかタダで紹介すると思ってねえよな?」


「まさか、……お金取るんですか」


「まさかだろ。大事な大事な社員から金を取ろうなんて、そんな訳ないじゃないか」


 早川は嫌な予感しかしなかった。


「……じゃあ何なんすか?」


「この会社は何で食っているんだ?」


 早川は編集長の言いたい事が分かった。


「……記事書いて食ってます」


「だよなぁ。だったら書こうよ、記事。ちゃんと栗林の事を絡めて書けよ。お前の話なんか誰も聞きたくねえんだからな」


「……分かりました」


 早川にはそれしか言えない。祓って貰えるなら何だってする。


「安心しろ。記事は後払いで良いぞ。先にお祓いしてやるから。向こうの都合もあるから、暫く予定入れんなよ」


「大丈夫ッス! 友達も彼女も居ないんで予定無いッス! いつでもOKッス!」


「……分かったからさっさと仕事に戻れ」

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