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掌編小説集1 (1話~50話)

作者: 蹴沢缶九郎

今はもう見かけなくなったが、その昔、砂かけ婆という妖怪がいた。

夜、山道を一人歩いていると、突然砂をかけてきて驚かす妖怪である。


江戸の時代、ある所に権助という若者がいた。権助は山を一つ越えた所にある隣村まで出掛け、帰る頃にはすっかり辺りは暗くなっていた。


「うー、すっかり遅くなっちまったなぁ。」


提灯の灯りを頼りに、権助は山道を急いだ。と…、


パラパラと何かが権助の頭に降ってきた。「何だ?」と手で払うと、それは砂だった。

「はて?」と思っていると、暗闇の中から突然砂かけ婆が現れ、砂を投げてきたのだった。


「うわ、ぺっ、口に砂が!!何しやがんだ!!このババア!!」


権助は片手で砂を防ぎながら、落ちていた木の棒を拾うと砂かけ婆の頭めがけ、思い切り降り下ろした。


「ぎゃっ」


という悲鳴とともに頭を抱えてうずくまる砂かけ婆。しかしそこは砂かけ婆、妖怪なので人間より丈夫に出来ているらしい。だが痛かった。


権助は砂かけ婆に言った。


「どこの婆さんだか知らねぇが、くだらねぇ事してねぇでさっさと帰って寝ろ!!」


権助は棒を投げ捨てて行ってしまった。


だいぶ頭の痛みは引いていた。自分の手のひらを見てみる。手のひらからジワっと砂が出てきた。


砂かけ婆は考える。


「何故自分は妖怪で、何故こんな事をしているのだろう?」


しかしいくら考えた所で答えはわからなかったし、そこで考えるのをやめる。気付けば妖怪で、当たり前の様に人間に砂をかけてきた。そしてそれはこれからもずっと続くのだろう…。


砂かけ婆の頬を一粒の涙がつたい落ちて、地面の砂へと吸収されていった…。



時は流れ、


平成27年もそろそろ終わろうとしている。東京のとある駅から徒歩5分程の所にその店はある。


『スナック 砂かけ』

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