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小田からの贈り物

儚く消えた想い

作者: 小田虹里
掲載日:2015/08/15

「すべてのキミに捧げる」






キミは、消えていった。


いつものような笑顔を私たちにふりまいて、


風のように軽くなった体を空へと投げ出して……。




ううん、いつものような笑顔じゃなかったね。


いつもどおりの明るいキミを演じようとしていたけれども、


キミの心は泣いていたんだね。




それが分かったから、


それに気付いてしまったから……。


私の心も、すごく痛んだ。




キミは私に、私たちに、この大日本帝国に、


多くの希望と幸せをくれた。


そして、終わることのない「平和」をくれた。




「また、笑いながら学校へ行きたいね」


そんな私のほのかな希望も、


叶えてくれたね。




キミがそばに居たから、


どんなときでも前を向いて歩いていけたんだよ。




……でもね。


キミがいたから、前に進むのが怖くなることもあったんだ。




戦争がはじまれば、敵国を倒せば、


平和は訪れるのかもしれない。


けれどもそれと引き換えに、


多くの命を亡くすことを意味していた。




死んでしまったら……。


キミにも、ママにも……会えなくなってしまう。


「今」を生きるすべてのものに、会えなくなってしまうこと。


時にはすごく、怖くなった。




「みんな」のことが、私は大好きだから。


だから、決心が鈍りそうになってしまったこともあった。




「お国のために」と、戦う決意が鈍りそうだったの。




キミと一緒に、キミの街も見てみたかったよ。




キミは私を死なせないようにと、一生懸命だった。


戦いを終わらせるために……って、いつも考えてくれていたね。




すごく、嬉しかったよ。




それなのに私は……。


キミが消えてしまうなんてこと、知らなかった。


想像もしていなかった。




キミが消えてしまうこの瞬間まで。


何ひとつとして、考えてあげられなかった。




キミがどうしたら消えずにすむのか。


考えてもいなかったんだよ。




キミはどれだけ辛かったんだろう。


どれだけの想いを、ひとりで背負ってきたんだろう。




「特攻隊員」は、「片道切符」しか持っていなくて。


キミは……日本国の、夢? 希望?




敵国を倒して全てが終わり、


日本国を包んでいた悲しみの死の螺旋は消えたと思った。


本当の笑顔を見せ合いながら、また、みんなと暮らせるって思っていた。




それなのに……その未来に、キミはいない?




私は足元から崩れ落ちた。


消えてしまったキミの背中が、頭から離れない。


抱きしめようとした手が空を切り、


「万歳」と告げたキミの腕、キミの横顔。


忘れられない。




体中が震えていた。


私は、どうしても守りたかったものを失ってしまった。




本当に、消えてしまったの?


私はまだ、言えていないのに……。




あなたに一番伝えたかった気持ちを、伝えてないのに。




……涙が、止まらないよ。




風が吹いた。


海からの潮風を運んで、優しく私たちを包み込んだ。




そこには今では懐かしい、キミの匂いがあった。




ある日、となり街からやってきたキミ。


同い年のキミ。




キミはまだ、この海のどこかにいるのかもしれない。


そんな想いが私の中に宿る。




「ねぇ……聞こえる?」




お願い、届けて。


私の声。




お願い、届けて。


私の想い。




会いに来て、私を見つけて。


また、一緒に……歩きたいよ。




切なる想いを込めて奏でようとした、私のハーモニカ。


空気を振動させることなく、


虚しく風と同化していった……。




しばらくそのまま立ち上がることもできなかったけれども、


私はようやく、道を見つけた。




あきらめない。


この「ハーモニカ」がきっと、キミと私を繋いでくれる。




『このハーモニカを、わたしだと思ってください!』




そう信じて、生きるしかない。




となり街から来たキミ。


キミはずっと、平和を願っていたね。




きっとどこかの海にいるはず。




待っているから、キミのこと。




キミが得意なハーモニカの、練習をしながら。




キミの背中を追いかけて……。









 こんにちは、はじめまして。小田虹里です。


 終戦記念日に、何かしらの作品を残そうとは思っておりました。


 ですが、いざ……迎えてみますと、こんなものでは現せられない。

 もっともっと、辛い、綺麗ごとでは済まされないものが、ひしめきあっている。


 そう、感じました。


 投稿を、やめようかとも思いました。


 ですが、せっかく書いたのだし……と、投稿することに致しました。




 戦争はやはり、あってはならないと強く感じました。




 どうかこれからも、平和憲法が守られ受け継がれていきますように。




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― 新着の感想 ―
[一言] ……。 戦争。 「悲しい」という言葉では表しきれませんね……。 これを見て、凄く考えさせられました。いくつか戦争の本は読んでいるのですが。 私も終戦記念日に書こうとしましたが、間に合いませ…
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