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座敷童のいち子  作者: 有知春秋
【東北編•平泉に流れふ涙】
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6

ページを開いていただきましてありがとうございます(*^^*)


拙い文章ではありますがよろしくお願いします(^^)



 


「————という訳で、鱗を座敷童に献上しないと座敷童管理省東北支署の存続はない」

 巴にオロチの蘇りを進言された俺は関山中尊寺の観光どころではなくなったため、いち子を加納さんと梓さんに任せて座敷童管理省東北支署に戻った。

 アーサーと井上さんに話した内容は巴に進言されたままなのだが、アーサーが無条件でさとの家主になれるというのは伏せている。まだ一般の座敷童の家主になれないし、さとの家主には無条件でなれるが今のままでは危険だからな。それに、今は家主になれるという現実に喜んでる場合ではない。小夜の我儘、巴の我儘、それ以上の難題が座敷童管理省に降りかかったのだから。

 だが、それとは別に二人共ずっと落ち込んでるんだよな……

「どうした?」

「…………」

「…………」

「小夜の我儘、巴の我儘を越える難題だ。正直言うと現御三家が解決するレベルだ。このままだと東北に災害が始まる」

「…………」

「…………」

「とりあえず鱗を……」

「松田さん」

 井上さんは異様な雰囲気を醸し出しながら黒縁眼鏡を右手中指で押し上げると、

「しずかちゃんを背負って御神籤を引きましたが、大大凶でした」

「大大凶?」

「どういう事ですか?」

 ピラッとテーブルに出したのは気の利いた教訓が一切書かれていない【大大凶】とのみ禍々しく書かれた紙。

「なにこれ、呪いの札?」

「御神籤です。住職も入れた覚えのない大大凶の御神籤です。どういう事ですか?」

「どういう事だろ?」

「まだ大大凶なだけいいわよ」

 アーサーがテーブルの上にピラッと出したのは、ただの紙。

「アーサーは御神籤引いてないのか?」

「御神籤よ」

「……、ただの紙だろ」

「白紙よ。【おみくじ】とさえ書いてもらえなかった白紙よ」

「い、印刷ミスだな?」

「座敷童を背負って印刷ミスの御神籤が引けるわけ?」

「座敷童を背負って大大凶とはどういう事ですか?」

「……、……」

 座敷童を背負って生まれた結界なため正直怖い。有り得ないとしか言えない。だが、現実に大大凶と白紙が目の前にある。なんでこんな不吉の予兆を持って帰ってきてるんだよ。

「き、気になるなら、なんで結んでこなかったんだ? 結ぶ台もあっただろ?」

「結ぼうとしたら他の人が結んだ御神籤が一斉に解けて落ちました」

「…………」

「風に舞って襲ってきたわね」

「…………」

「無理矢理結ぼうとしたら台ごと倒れました」

「…………」

「観光客や住職が一斉に距離を空けたわね」

(教訓が記されない大大凶に神様仏様阿弥陀様に見離された白紙。住職は入れた覚えはなく、神木(しんぼく)の代わりの台が倒れる拒否っぷり。それも座敷童を背負って生んだ現象なら前途は多難を越えた闇だな)

 不吉の予兆だ。間違いなく不吉の予兆だ。周りにいた観光客や住職の気持ちがわかるぞ。この二人の近くにいたら不吉に巻き込まれそうだ。いや、巻き込まれる。

「ま、まぁ、御神籤は遊びだし、舞い上がったのもたまたまだろ。台も古かったんだ」

 ゆっくりと立ち上がり、

「とりあえず、気にするな」

「待ちなさい」

「どこに行くのですか?」

「いや。アレだ……トイレ」

「付いて行くわ」

「私も行きます」

「いや、来ないでいいから」

「逃げる気?」

「…………」

「逃がしませんよ」

「…………」

 二人からドロドロした禍々しいオーラ的な何かが湧き出ている。こんな視覚情報は二次元の世界だけと思ったが現実にあるんだな。全力で逃げるか……いや、今はオロチに備えた準備に時間が惜しい。仕方ない、天の声よ久々の出番だ!


 冗長修正魔法【閑話休題】


「————という事で、この御神籤は俺が二人に買ってきてもらった事にする。あまりにも不吉だから厄祓いとして夜のバーベキューの焚き付けに使う。これでいいな?」

 財布から五百円玉一枚と百円玉五枚を出して二人の前に置くと、大大凶と白紙の御神籤を取ってパーカーのポケットに入れる。

 三○分ほどゾンビみたいな二人を説得して至った結果は、神様仏様阿弥陀様が見離したなら神童いち子様にすがるしかないという事で、神童様の世話役の俺が御神籤を買い取り、大大凶と白紙の不吉を背負うという訳のわからない結果になった。

「座敷童管理省東北支署が存続しなかったらあんたの責任よ」

 アーサーは怨念が祓われたような清々しい顔を作りながら、左手で百円玉五枚を取る。

「松田家当主や関東の援軍が無い今、さとちゃん復活での八太君の本気が鍵です。松田さんが一週間で鱗を弾丸に加工できなければ、オロチを倒せません。どのみち松田さんの責任です」

 井上さんはいつもどおりの変化の薄い表情で話しながら黒縁眼鏡を右手中指で押し上げ、左手で五百円玉を取る。

「……、……」

 巴だけじゃねぇ。この二人も最悪だ。俺に全ての責任を背負わせる気だ。不吉な御神籤を原価で買わせといて何事もなかったように切り替えるとは……とんでもねぇな。

「とりあえず、鱗は?」

「私の使ってる部屋にあります」

「加工のやり方から考えないとならないから飯の時間になったら教えて。あと……」

 横に置いてある三角バックから桐の箱を取り出して二人の前に置く。

「加納さんにも一箱渡してる。これは冷蔵庫に入れておくから加納さんのが無くなったら使ってくれ。なるべく、ばあさんの小豆飯を与えて【いち子の小豆飯】は使うな。それと俺は学生だ。一週間も休むなんて予定外だ。「座敷童管理省から圧力をかけて単位の免除を計らえ」

「無理よ。極秘の組織だもの」

「東北にまた災害が起こると言って総理を脅せ」

「学生の単位免除に総理が動ける訳ないじゃない」

「単位どうすんだよ?」

「補習と追試でなんとかなるわ」

「遅れた科目の家庭教師なら私できます」

「私は教員免許を持ってるから……」

「いや、いい。諦める」

読んでいただきましてありがとうございます(^^)


感想、評価、レビューお待ちしてます(*^^*)



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