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座敷童のいち子 作者:有知春秋

【東北編•平泉に流れふ涙】

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 ふと目に入れたモノ、誰かが言った一言、食べたい物に欲しい物、調べたくなった時に携帯端末があれば本当に便利だ。
 だが、携帯端末はどこでも電源を入れていいというわけではない。例えば、医療機器がある病院や学校の受験テスト中など、電源を切ることが義務付けられている。
 他にも電源を切ることが義務付けられてる場所や状況は多々あるが、この場で語っても意味は無いため割愛させてもらう。
 俺が何を言いたいのかというと、そんな場所で調べものがしたい時は我慢しなければならないという事だ。
 それは、目の前に好きな有名人がいても、未知な発見があっても、何かが起きてその状態を調べたい欲求にかられても、携帯端末の電源を切ることが義務付けられてる場所では我慢しなければならない。それが文明社会最低限のルールだ。

【混沌】……俺が今、飛行機の客室内でなければ携帯端末で調べたいと思う言葉であり、そして目の前で起きているであろう状況だと思う。

 飛行機の客室内——正確には北海道の新千歳空港から岩手県の花巻空港までの間をフライトする飛行機の客室内——で……
 雲竜型のしめ縄を巻いた土佐犬が堂々と座席に座り、その隣で白褌一丁の少年が目を閉じて瞑想。
 通路では、藍色の甚平を着たモサモサ頭の少年と白褌一丁の目力の強い少年がCAのお姉さんの尻を追いかけている。そのCAのお姉さんが押す台車の上では、小袖に朱色のちゃんちゃんこを羽織った幼女がお菓子を漁る。
 極め付けは窓の外、雲の隙間から見える丸い虹と海の絶景を堪能したいが……白を貴重にした直垂(ひたたれ)に立烏帽子を被った絶世の美女が、飛行機と競うように飛んでいる……絶景よりも彼女に目が行ってしまう。
 この状態を混沌と言っても良いだろうか?
 携帯端末の電源が入れれない事には、混沌の意味を調べる事は出来ない。辞典を持ち歩かない現代っ子の不便か……いや、辞典は今この場で無いのが不便なだけで、携帯端末があれば事足りる……いや、辞典が無いから今現在不便してるのは確かだ。
(電源が入れれない場所だと不便だな。辞典は兎も角、電子辞書を持ち歩いた方がいいかな……いや、そんな事を考えてる場合じゃないな)
 俺の調べたいという欲求よりも、今の状態をなんとかしないとならない。
 とりあえず、外で飛んでるしずかは諦めるとして……
 台車に乗ったいち子、CAのお姉さんの尻を追いかける龍馬と八太に視線を向け、三人を呼ぶ。
「いち子、龍馬、八太。座るんだ」
「はい?」
 CAのお姉さんは疑問符を浮かべる。
「…………いえ、あの……」
 台車に乗ったいち子に注意しない時点で、CAのお姉さんは座敷童が見えない側の人間。俺が視線を動かしながら三人の名前を呼んだ事により、台車の上や足元を確認しながら疑問符を浮かべている。
「あの、すみません。なんでもありません」
「?」
 足元から台車の上に視線を移し、俺に笑顔を向け、
「お飲み物はいかがですか?」
「……はい。お茶……烏龍茶をください」
 いち子、龍馬、八太、どう言い換えても飲み物の名前には聞こえない。CAのお姉さんは、俺の独り言に反応してしまったと思い、接客に切り替えたのだろう。
「かしこまりました」
 笑顔で烏龍茶を注いで簡易テーブルに置く。
 座敷童が見えない側と見える側で生まれる視覚情報の差は、やはり大きい。
 例えば、CAのお姉さんの背後で、龍馬と八太が俺を笑わせようと変顔を作っても笑う事はできないし、叱る事もできない。何故なら、座敷童が見えない側の人間から見れば、独り言に独り笑いする白髪天パになり、怪しい人物確定になるからだ。
 そんな俺の心境をわかってて龍馬と八太は悪ふざけをしているのだが、こんな時に『ちゃんと座れ⁉︎』と怒ったとしたら、座敷童が見えない側の人間は俺をどう思うだろうか。いや、わかりきった事だ。
 CAのお姉さんは俺への対応に困るだろうし、周りのお客さんは思春期特有の精神病だと思う。
 それなら、この状態をどう解決したら良いのかを考えなければならない。
 もしも、座敷童が見える側の人間がお客さんやCAのお姉さんにいたら龍馬や八太に関したら悪ガキで済まされるが、お菓子を漁るいち子は大変な事になる。
 もっと大変なのは、飛行機と競って飛んでるしずかなのだが……『人が飛んでる‼︎』と言ったとしても、座敷童が見えない側の人間が大半の現代では、暖かく見守る目か可哀想な人を見る目で見られるのがオチだ。
 そういった理由から、龍馬、八太、しずかは問題あるが今の段階で対処する必要はない。もちろん、八慶やジョンは最初からまったく問題ない。
 おそらく、騒ぎになってない時点で、座敷童が見える側の人間は俺とアーサーと井上さん、そして座敷童管理省の特務員二○人だけだろう。
 だが、心の広い人が見えていて温かく見守ってるかもしれない。考えすぎだが少ない可能性で無いとは言い切れない。
 もしも、座敷童に対して指を差し声に出した場合は、アーサーか特務員が座敷童管理省への勧誘に動くだろうから後々に心配を残す事は無いと思う。
【人間側の常識】から見れば、座敷童が見えていれば子供が好き放題遊んでる風景(しずかは別)だが、見えていなければ平常時と変わらないという事だ。
【座敷童側の常識】から見れば、つまみ食いや凡ゆる蛮行……いや、悪戯が当たり前だし見える側がいてもソレが座敷童なため、問答無用で食って遊んで寝る。
 人間側には妄想人と誤解されるという多少の被害はあるが、座敷童側から見れば平常時と変わらない。
 しかし、それはあくまでも『人間側•座敷童側の常識』として見た結果であり、座敷童側の問答無用が織り成す状態を解決しない理由にはならない。

 俺が何を問題視して解決しなければならないと思ってるのは……
 座敷童が見える側の人間が妄想人に見られる事の阻止——否
 CAさんの尻を追いかける龍馬と八太を座らせる——否
 しずかに人目の付かない更に上空に飛んでもらう——否
 いち子は台車にあるお菓子を漁ってはいるが食べていない——非常事態。

 座敷童のつまみ食いや悪戯は神様仏様御先祖様が許す。その行動が御利益に繋がり、座敷童が食べるのは非現実の方だから人間側から見ても支障はない。非常事態なのは、座敷童がつまみ食いや悪戯をしない事になる。
 それなら何故、座敷童の本能のままにいち子はお菓子を食べないのか?
 答えは簡単、松田家で代々過保護にお世話するいち子は美食家なみに舌が肥えているのだ。
 食いしん坊で何でも食べてるように見られがちだが、俺はいち子が好きな食べ物しか持ち歩かないし、井上のばあさんもしずかを中心に座敷童が好きなお菓子しか客間のテーブルや仏壇や奥座敷には置かないし持ち歩かない。
 すなわち、CAのお姉さんが押す台車には、美食家いち子がお気に召す『駄菓子』や『おはぎ』などの古き良きお菓子が無いのだ。スナック菓子や洋菓子も食べる時はあるが、気分による。簡単に言うと、子供がお母さんの出したお菓子に対して食べたいお菓子ではなかった時に不満になるのと同じだ。
 すなわち、今はスナック菓子や洋菓子を食べたい気分ではないのだ。
 美食家いち子は、食べたい時に食べたい物でないと食べたくない超ワガママ座敷童なのだ。
 いち子は今、駄菓子かおはぎを食べたいため、このままでは……

 八童最強と呼ばれ、神童と呼ばれるいち子の……禁忌魔法【御立腹】が発動してしまう。

 最悪なのは『真っ()っか』になって激怒した場合、飛行機の客室内は非常事態になり、コクピットの計器は破滅飛行の警告を鳴らす。

 航空事故を起こしかねない。

 いち子のような超ワガママ座敷童には、普段からそういう危険性があるのだ。いち子レベルの【御立腹】は家の盛衰を司る座敷童のくせに他に被害が出るのだ。
 それは、一般的な盛衰を司る力ではなく、オロチと闘うための力が強いが故の被害になるのだが……ある意味、蘇ったら危険なだけのオロチよりもタチが悪い。常に【御立腹】と隣り合わせで生活しているのだから。
 しかし、とある芸人がパンツ一丁で『安心してください。履いてますよ』と言うネタを披露するように、松田家にも『安心してください。用意してますよ』と常にいち子の【御立腹】に備えている。
 俺は足元に置いてある三角バックを取り、中から二箱ある桐の箱を一箱出す。桐の箱の中には、アルミホイルに包まれた三角形の【対いち子ウェポン】が一○個入っている。
「どうしたの?」
 俺の隣、窓側に座るアーサーが疑問符を浮かべる。
「いち子を見てみろ」
「?」
 アーサーは疑問符を浮かべながら身体を起こして視線を動かすと、台車に乗ったいち子を見つけて視線を止める。二秒ほどいち子を見ると、額から一滴の汗を流しながら座る。
「……、……顔が赤くなってるわよ」
 アーサーが見たいち子の顔は赤く、見るからに御機嫌斜めだった。
「台車に気に入ったお菓子が無いから怒ってんだ」
 桐の箱から【対いち子ウェポン】を取り、アルミホイルを開いて小豆飯おにぎりを覗かせると、
「座敷童は基本ワガママだが、八慶を見たとおり人を尊重する。龍馬や八太もワガママだがなんだかんだで人を尊重する。問題はいち子としずかだ……この二人……いや、これから行く東北の八童もだが、かなりワガママだ」
「ワガママで赤くなるのね」
「いや、顔が赤くなり『赤』、服が赤くなり『真っ赤』、その先の『真っ()っか』になるとヤバい。座敷童は赤くなってからが問題なんだ。それも、八童レベルの座敷童なら飛行機が墜落する」
「⁉︎」
 アーサーは再度バッと身を乗り出していち子を見る。
 視線の先には、ちゃんちゃんこだけが朱色のまま顔と小袖を真っ赤にして、台車のお菓子を鼻息を荒くしながら漁る、かなり御機嫌斜めないち子。
 その台車の下では、龍馬と八太が額に大量の汗を流しながらあたふたといち子の機嫌を取り、視界の横では、八慶とジョンが立ち上がり井上さんと井上のばあさんがいる座席に行って飛行機墜落に備える。
 普段は見せない座敷童達の真剣な表情に、アーサーは額から大量の汗を流す。
「……ひ、非常、事態?」
「アーサー。東大寺で八慶がオロチを殴った時を覚えてるか?」
「ええ……、振動があったわね」
「アレが八童が出す五割ぐらいの力だ」
「……、……」
 アーサーは絶句する。そして、やっと気づく。座敷童はマスコットではないと……
「座敷童の見方を、変えないと、ならないわね」
「一般の座敷童を怒らしたら家の衰退ぐらいだが、八童だと重要文化財の崩壊や地域レベルの衰退だ。そして、八童でもトップ三に入るしずかと(ともえ)を怒らせると地域の衰退どころじゃない。近畿や東北の衰退だ。そして、いち子は…………」
「いち子ちゃんは……?」
「日本だ」
「に、日本の衰退……?」
「いち子が座敷童一○○○○人分と言った理由がわかったか?」
「……、好きなお菓子がないだけで、そんな被害を……?」
「今後、飯やお菓子をやる時は考えろよ。家に帰った後がかなり大変なんだ。アーサーならおかわりある、アーサーならお菓子くれる、アーサーならアーサーならってな。その度に真っ赤だからな」
「⁉︎」
 アーサーは、自分が座敷童のためと思ってやっていた行動に対して、俺が姑のように細かく言ってた理由を理解する。
「こ、これからは……気をつけるわ」
「わかればいい。アーサーにも理解できる機会を待った甲斐があった」
「飛行機墜落を天秤に乗せながら教えて欲しくないわね」
「マスコットじゃない座敷童を知る良い機会だったろ。そろそろ、俺……松田家の出番だ」
「どうするの?」
「まずは、いち子の視界に入るように……」
 通路に顔を出し、右手にある小豆飯おにぎりをいち子に向ける。
「……、……これで大丈夫だ」
「……、小豆飯で釣るの?」
「そうだ。猫にマタタビ、犬に骨、座敷童に小豆飯だ。そして、ここからが松田家の見せ所だ。…………よし、いち子が気づいた」
 俺の視線の先では、ちゃんちゃんこだけが朱色のまま顔と小袖を真っ赤にしたいち子が、荒々しく鼻息を出す。この際、台車にあるお菓子にヨダレが垂れてるのは見なかった事にする。
 ここからが松田家に代々伝わる秘奥義【いち子ホイホイ】の出番だ。
 いち子を誘い込むように小豆飯おにぎりを右に動かし、ゆっくりと左に動かし、上に、下に、円を描くようにゆっくり、ゆっくりと誘い込むように動かす。
「アーサー、ここからが本番だ」
「…………」……アーサーはゴクリと唾を飲む。
「よく見てろよ」
 いち子の駄菓子やおはぎを食べたい気持ちを小豆飯が食べたい気持ちに変えるのが松田家秘奥技【いち子ホイホイ】。
 小豆飯の動きに誘われて真っ赤ないち子が同じ動きをしたのを確認すると、小豆飯おにぎりを口に近づける。
 周りのお客さんからは変な目で見られてるが、誰も思ってないだろうな……白髪天パの小僧が航空事故を防ぐために座敷童と駆け引きをしているとは……
(た〜べ〜る〜ぞ〜〜〜〜)
「ワタキのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 いち子が咆哮を上げた瞬間、客室内の照明が点滅、機体はガタガタと揺れ始め、浮遊感を乗客に与える。シートベルト着用ランプが点灯し、酸素マスクが頭上から落ちてくる。
 乗客に飛行機墜落を予期させるには十分、不安が声となり、客室内は騒めく。
 そんな中、この状態を作り出したいち子は台車から飛び降り、着地と同時にズダダダダダと通路を走る。そして、大口を開けながら小豆飯おにぎりに飛び込む。
「まだだ」
 松田家秘奥義【いち子ホイホイ】はまだ終わらない。
 いち子の口が届く瞬間、右手にある小豆飯おにぎりを逸らす。同時に、いち子の小さな身体を左腕で優しく包み込み、走ってきた勢いをいち子に残さないために自分の身体で受け止める。全ての衝撃を座席に流しながら、いち子を腕の中で半回転させて、素早く膝の上に乗せる。その間、コンマ一秒。

 秘奥義【いち子ホイホイ】成功

 何もなかったかのように小豆飯おにぎりに手を伸ばすいち子を左腕で制しながら。
「小豆飯おにぎりいっぱい持ってきたのに、ちゃんと座ってないから俺が食っていいと思ったぞ?」
 三角バックの中、桐の箱の中には【対いち子ウェポン】の小豆飯おにぎりが入っている。もちろん、搭乗する前の検査では怪しまれた。いや、「なんですかコレは?」と困惑された。だが、『お土産の饅頭二○個入りは良くてお土産の小豆飯おにぎり二○個はダメなんですか?』と言えば、松田家の人間に限り大丈夫。いや、正確には、桐の箱まで使って高級感あるから、検査する人もお土産として認めるしかないのだ。まぁ、アレだ……いち子の旅行用の小豆飯おにぎりを隠すために松田家が考えた方法だ。一応、店では完全予約制で販売してる。
「小豆飯所望じゃ!」
「ちゃんと座って食べると約束するか?」
「うむ。約束じゃ!」
「よし」
 右掌に小豆飯おにぎりを乗せていち子に向けると、いち子は両手で包むように小豆飯おにぎりに手を添え、非現実の小豆飯おにぎりを取る。
「小豆飯じゃ〜〜〜〜」
 キラキラと輝かせた大きな瞳で小豆飯おにぎりを見ると、真っ赤な小袖が徐々に薄くなり、パクッと食べた時には元の桃色の小袖とほんのりピンク色のプニプニほっぺたになった。
 いち子の御機嫌と共に安定飛行に戻った飛行機は、騒ついてた客室内も落ち着きを取り戻し、CAのお姉さん数人が乗客のフォローと酸素マスクの収納を始めた。ほどなくして、機長からの『急な突風が原因で——』というアナウンスが客室内に流れ、事態は収束した。
 俺はふぅと息を吐くと八慶やジョンや井上さん、龍馬や八太、そして特務員の心配する視線に対して、いち子の機嫌が直った事を頷きで伝える。
 一同からの安堵は吐く息に現れ、破滅飛行に向かっていた精神の疲れを癒すように腰を落とした。
 俺は、窓の外に視線を向けてしずかを見る。視線が合い、頷きでいち子の機嫌が直った事を伝える。
 しずかは右手に扇、左手に抜刀した白鞘巻きを握り、もしもの飛行機墜落に備えていた。
 万が一、飛行機が破滅飛行に向かっても、しずかが近場の空港どころか花巻空港まで飛行機を運んだに違いない。井上のばあさんを守るために。
 そんな理由もあって俺は冷静でいられたのだが……これは後からみんなにも言った方がいいな。しずかが守ってくれると思ってる井上のばあさんや万が一に備えていた八慶•八太•龍馬•ジョンは兎も角、アーサーや井上さんや特務員は顔面が蒼白してる。
(とりあえず、今はアーサーが先だな)
 右手にある現実の小豆飯おにぎりをアーサーに向ける。
「アーサー、食うか?」
「……、いただくわ」
 アーサーは小豆飯おにぎりを取るとそのまま口に運ぶ。
「言ってなかったけど、いち子が怒って飛行機が操縦不能になっても、しずかが風で飛行機を運んでくれるからな」
「! ……、…………ほんと?」
「東大寺の時にしずかが操る風に八慶と八太と吉法師が乗ってたろ。あと、室町時代に東大寺を倒壊させた話も聞いてるだろ? 飛行機ぐらい風を操って運んでくれる」
「…………カオスね」
「!」
 カオス、すなわち混沌。花巻空港に到着するまで調べるのを我慢してたが、こんなところから知る機会があるとは。
「カオスって混沌だよな? どんな状況の事をいうんだ?」
「状況というよりは状態ね。天地創造の神話で、天と地が分かれず、混じり合ってる状態。又は、無秩序で、物事がまとまっていない状態を意味する語。……あなた、小説とか読んでて混沌がわからないの?」
「小説で混沌って出れば、主人公はピンチになってなんやかんやで打開しますよ〜って感じだろ」
「違うわよ。考え方から違うわよ。一文を読むんじゃなくで一語を理解しながら読みなさい。作者が伝えたい世界感を理解しないで読んでる事になるわよ」
「外人が日本語のプロの日本人に大きな事を言ったな」
「私は現代の日本語から古文書に残る日本語まで熟知してるわよ。大学院の時にバイトで解読もしてたし」
「……日本人以上に日本人してるな……。それで、混沌ってどんな状態だ?」
「混沌は……例えば……」
 二秒ほど考える素振りを見せると、
「人間と座敷童は同じ次元に生きてるけど、人間が怒っても何もならないのに座敷童が怒ると人間側に衰退が起こる。逆に、座敷童は御供物が減ってるけど人間は裕福になってる。お互いの鑑賞領域において見えない側の人間が大半の現代では、お互いの利益と不利益があるでしょ?」
「利益もあれば不利益もある。普通の事だろ」
「そうね。それを頭に残して、人間側が作った文明の利器、所謂、飛行機はいち子ちゃんの怒り一つで意味の無いモノになり、しずかちゃんの能力一つで飛行機の墜落は阻止できる。これが、文明と生きる人間側には無い未知の力。人間側の世界と座敷童の世界を見れるからわかる混沌を生む力よ」
「混沌を生む力って……、……大袈裟だな、そんなもんだろ」
「そんなもんって……あなたは、生まれた時から座敷童と生きてるから人間側の常識がわからないだけよ」
「失礼なヤツだな」
「それなら、飛行機はジェットエンジンと翼があって揚力が生まれて飛ぶけど……しずかちゃんがいればジェットエンジンも翼もいらない」
「いらないな」
「次に、精密な計測器が方向のわからない空の道を作り、違う計測器では国外からのミサイルの防衛や潜水艦の探知をする。でも、飛行機がさっきみたいな状態だと計測器の故障、所謂、いち子ちゃんはその計測器を無効化するって事よ」
「まぁ、そうだな」
「その二点から、機械の故障や飛行機を飛ばせる風など人間側にも鑑賞してくる二人の力は、人間側から見たら未知。そんな未知の力を目の当たりにしたら、その未知の力で今まであった秩序が無くなり無秩序状態が出来上がるのでは無いか? と連想するわけよ。その連想した無秩序状態の世界が混沌。小説の世界でいうと二人は個別で戦略兵器並みの武力があるって事よ」
「……、……なるほど……自分の考えが及ばない事が混沌なんだな」
「違う。まったく違う。無秩序な状態。小説では、神様とか魔法使いが一度世界を大破壊して、世界を作り直す時に混沌と表現してるでしょ……その大破壊した後の作り直す時の世界の状態が混沌。今の法律や取り締まる警察や国を守る自衛隊が無い状態が混沌」
「無法無秩序か…………座敷童の世界みたいだな」
「…………、あなたが混沌を理解できない理由がわかった気がするわ」
+注意+
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