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ズルッと蕎麦を啜り、自分でわんこの蕎麦をお椀に入れるのは見た目小学校低学年の少女。その服装は蕎麦を食べるには派手すぎな黒ドレス。
「んだばぁ」
ズルッと蕎麦を口に運び、わんこの蕎麦をお椀に入れる。
「『花巻名物』わんこ蕎麦サ」
ズルッと蕎麦を口に運び、更にわんこの蕎麦をお椀に入れる。
「一○○杯食べねば」
ズルッと蕎麦を口に運び、更にわんこの蕎麦をお椀に入れる。
「南部者の名が廃るでがんす」
黒ドレスの少女は一心不乱にわんこ蕎麦を食べる。
それを正面で見てるのはセーラー服の少女。黒ドレスの少女と同じく【わんこ蕎麦セット】がテーブルの上にあるが、彼女はわんこ蕎麦には手を付けずお茶だけ飲む。
「南部者なら煎餅一○○枚ではないのか?」
「わんこ蕎麦は、南部のお仲間、花巻さんの、スソクだべ」
「主食ではなく名物だ」
「わんこ蕎麦サ、一○○杯食べで、南部者の生き様ば、花巻さんに見せるでがんす!」
黒ドレスの少女はわんこ蕎麦を一○○杯食べて南部者の生き様を見せると息巻いてるが、セーラー服の少女は壁へ視線を向け、貼られてある写真を見ながら。
「一○○杯まで残り八七杯だ。この店の記録は道産子の四六七杯だが気にするな」
壁には白髪の少年とロングヘアの少女に挟まれたバンダナの少年が四六七杯のわんこ蕎麦を食べた記録が飾ってあった。
「道産子にサ負げでらんね! 南部者は五○○だ!」




