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フェンデル公爵の仕事

「アルフォンス、朝からお疲れかぁ~?新婚は大変だなぁ」


ニヤニヤとこちらを伺う、フロイドの鬱陶しい視線を無視して仮眠をとる。自分のやるべき仕事は終えているし、どうせ屋敷に帰れば一睡も出来ないのだから。


モニカとの新婚生活も一ヶ月が過ぎようとしているが、自分たちは本当の夫婦にはなっていないし、フロイドが想像しているような事が自分の不眠の理由ではない。もちろん原因はモニカにあるが…


初夜当日、今まではこの日を今か今かと待ち望んでいた。愛しいモニカのすべてを自分のものに出来る瞬間。このために自分は今まで生きてきた。



陛下に、「冗談の約束のつもりが成人してすぐに連れさらわれるとわなぁ…」とブツブツ恨み事を言われても。父に、「こんなに早く隠居するつもりなかったのに…」と嫌味を言われても。母の、「モニカちゃんと2世帯で生活すればいいじゃない」との訴えを拒否し続けても。


それが半年前の出来事のせいで、全てが意味のないものに思えてきた。

モニカは自分のことを愛してはいない。意識的にか無意識にか、約束は果たそうとし、自分と結婚してくれたし、一生懸命公爵夫人としての務めを果たそうとしている。

そんなモニカが愛しくて仕方ないが、彼女はユリウス殿下の事を…。




「モニカ姫、約束を果たしてくれてありがとう。…君が嫌がることはしないよ。寝室を分けることは使用人たちの手前出来る事ではないけど、君が気にするなら私は執務室に行こう。…どうだろうか?」


半分本当で、半分嘘だった。約束を果たしてくれた事には感謝している。本心はどうあれ、自分の隣を選んでくれた。嫌がる事をするつもりもない。…ただ、暗がりのなか、薄い夜着を身につけたモニカの姿を見ているとその気持ちも揺らぐ。誰がモニカの夫なのか、彼女の身体に刻みつけてしまいたい、そんな欲望が自分の中に渦巻く。


いっそ彼女が、執務室で眠る事を許してくれたらこんなにも不眠に悩まされることはないのかもしれない。しかし、優しい彼女はそんなことをさせるぐらいなら自分が別の場所で眠るという。決してそんなことを許せるはずがないし、それならと広い寝台の上、端と端に寝ているわけだが。

愛しい彼女が隣で寝ていて、眠れるわけがない。


彼女の寝息に、彼女が身じろぐたびに、つい手が伸びそうになる。決して触れぬと約束はしたが、約束したその日から後悔していた。



「おーおー無視ですか。…まぁお前からしたら子供っぽくてもモニカ姫は立派な大人だよ。この前の結婚式でもあの可愛らしい顔と切ない雰囲気が色っぽいってみんな噂してたぜ?」


「…、れだ?」


「え?」


「みんなって誰だ、と聞いている」


「お、おいアルフォンス?なに怒って…」


「怒ってなどいない。みんなとは具体的に誰を指しているのかと聞いている」


「あー。…ちょっと俺、用事を思い出して。失礼しました、」


そそくさと出ていくフロイドをアルフォンスは睨みつける。


「フロイド」

「は、はい!」

「彼女はもうモニカ姫じゃない。フェンデル公爵夫人だ、間違えるな。…みんなにも言っておけ」


「え?…あー。はーい!」

さっきまで青褪めた顔を再びニヤニヤと歪ませてフロイドは部屋を後にした。


"切ない雰囲気"

晴れの式に臨むには相応しくない言葉だ。

周囲の人間は、緊張しているとかマリッジブルーだとか好き勝手言っていたが、きっと彼女が思っていたのは…。


どんどん魅力的になる彼女を、誰にも見せず囲ってしまいたい。彼女の瞳に映るのが自分だけならよかったのに…。


自分が彼女をあの時モニカ姫と呼んだのは、彼女との間に線を引き、自分が彼女を傷つけてしまわないためだった。でも今、彼女をフェンデル公爵夫人と呼ばせるのは彼女が自分のものであると知らしめるためだ。


我ながら自分勝手すぎる行為に笑えてくる。


今日も俺は叶わぬ夢を思い、仕事中に仮眠をとる。愛しい不眠の原因が待ってくれている屋敷に帰るために。


タイトル詐欺ですねw彼が仕事してる描写全くありませんm(_ _)m

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