表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

紙袋をかぶって

紙袋をかぶって 2

紙袋をかぶって日々を過ごしているみいちゃん。そんな彼女の前に転入生が現われて…

 みいちゃんは幼稚園生にしてはちょっと屈折してる。


 無理もない、弱冠四歳にして自分がブスである事を認めてしまっ

たのだ。


 多分、この齢でそんな風に思ってるコはあまりいないだろう。


 最近のみいちゃんは、口数も少ない。お友達が 遊ぼうって誘っ

てくれても あとで って一人でいることが多い。


 みいちゃんはこのところ、心の中で紙袋をかぶってる。


 それは彼女が決めたこと。そうすることで彼女は自分を守ってい

るのだ。


               ***


 ある日、みいちゃんのクラスに編入生がやってきた。


「はい、新しいお友達ですよ。じゃ、美子よしこちゃん、自己紹介をお願い

ね」


 担任のゆっこ先生が、先生の隣に立ってる女の子を促した。

みいちゃんは机の上に顔を突っ伏して、音だけを聞いていた。みい

ちゃんの最近のスタイルだ。


「どうも! わたしは親の仕事の関係でこの町に引っ越してきまし

た。名前は美子、美しい子と書いて「よしこ」といいます。あ、こ

こは笑うトコやで」


 この言葉で、みいちゃんは顔をあげ、その女の子を初めて見た。


 女の子は、周りを見回すとニカッと笑った。少し出た、大きな白

い歯が印象的だ。髪は刈上げの超ショート。色も黒い。目は笑うと

無くなるノッペリ顔。ちょっと見には男の子にも見える。お世辞に

も美人とは言い難い。


 みんなもポカーンと彼女をただ見てる。


「なんや、ここらの子は突っ込みはしないんかいな。普通、おいお

い、その顔でか! くらいは言うんやけどな」

 エヘン、とひとつ咳払いをすると、美子ちゃんは続けた。


「え~、親の因果が子に報いてなもんで、生まれたわたしは女の子。

ところがギッチョン、この顔や。責めて名前位はというコトで、つ

いた名前が美しいコ。ばってん、ここが大誤算! どうでもよしこ

さん、なら分るけど、この顔にビューティーはあんまりや。それで

もわたしは生きてゆく。希望を持って生きてゆく~、てなもんで、

美しい子と書く美子です。よろしくお願いしま~す!」


 一息にそう言うと、ぺこっとお辞儀をする美子ちゃんだ。みんな

が相変わらずポカーンとしている中、ゆっこ先生だけが涙を流して

の大爆笑。やっとの事で落ち着いた先生は


「ああ、面白かった。美子ちゃん、あなたのその口上、慣れている

のね。引越しが多いのかな?」

 にこやかな顔でそう訊ねた。


「はいしょっちゅうです。ひととこに一年も居ればいい方です。生

まれは関西やけど、全国回ってますから言葉もグチャグチャ。親か

らも言葉ヘンやでって、いっつも言われてるんです」


 美子ちゃんは息を弾ませながら、にこっとした。そんな彼女に

「あなた、その顔でって言ったけど、とってもチャーミングよ。仲

良くしてね」


 ゆっこ先生が手を差し出した。美子ちゃんもその手を握り返した。

 

 と、一人の子が突然立ち上がって拍手をした。みいちゃんと仲の

良かったルナちゃんだ。その拍手は段々伝染して行って、やがて教

室中に響いていった。


 その時、なぜだか、みいちゃんは美子ちゃんから目が離せなかっ

た。鳴り響く拍手の中、一人だけ身動きも出来ずに、みいちゃんは

美子ちゃんだけを見ていた。

 みいちゃんの前に現われた転入生、美子ちゃん。彼女はみいちゃんにとって天の啓示でもあるのだろうか? 3に続きます…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ