007 ジェード君のお食事
GM「あなたは森の中で仲間にしたスライムに食事をさせなければなりません。メインストーリーに挑戦すれば多くの敵を倒し、よりよい食事がで」
ジェード「そこのうさぎでいいです」
ミオ「ご注文はうさぎですね?」
GM「」
ジェード君はふるふると震えてわたしにラピッドラビットを倒しに行っていいか聞いてきた。
うーん、震えるだけでなんとなく意思疎通ができるのはゲームの中だからなのかな。《魔物使いの心得》の効果なんだろうか。《魔物使いの心得》の説明には『魔物使いとしての熟練度を示す。レベルが高いほど魔物への干渉が強まる』としか書いてないんだよね……。
まさかわたしがテレパシーに目覚めたということはないと思う。
さて、やる気(食い気?)になってるジェード君には申し訳ないけど、わたしはちょっと心配だ。なにせ、ジェード君のステータスは先ほど見た通りすべて1なんだから。同じレベル1のラピッドラビットにやられちゃう可能性もあるよね。
「んー、じゃあ一緒に戦ってみようか?」
わたしがそう提案すると、ジェード君は嬉しそうにふるふる震えた。
あーでも、一緒に戦うと言ってもどうすればいいんだろ。それに、ラピッドラビットは逃げ足早いし……。
うーん、――あれ、ジェード君のこのスキルって……。一つ思いついたけど、でも、大丈夫かな。間違ってジェード君のHPが0になっちゃうのはイヤなんだけど……。
わたしが作戦を提案するとジェード君は全身をふるふる震わせて『大丈夫!』とアピールしてきた。じゃあ信じてみようかな?
わたしは思いついた作戦通りやってみることにした。
まず、弓を取り出す。このままだと矢がないから打てないんだけど……。
「ジェード君、お願い」
ジェード君の持つスキル《変形》でジェード君自身に矢になってもらう。むにゅむにゅ動いて棒状になったジェード君を手に取り弓につがえる。やわらかい矢とか当たってもダメージにはならなさそうだけど。
「ていっ」
適当に弓を引いてジェード君を放つ。弓なんて使うのは初めてだったけど、結構な速度でジェード君はラピッドラビットに向かって飛んでいく。
《システムロール:命中判定。DEX&1/2LUC対AGIの対抗ロール (10+15)-200=-175→自動失敗》
でも、ラピッドラビットも動きが早いから躱されて……え、それはカッコいいよジェード君。
ジェード君はラピッドラビットにかわされた瞬間に横に大きく体を広げてラピッドラビットを捕えてしまった。さすがスライム、なんでもありだね。飛んでる途中で変形して追尾してくる矢なんて普通は躱せないよ……。
レベル1のラピッドラビットは大して防御力もHPもなかったのか一瞬でやられてしまった。へぇ、やられた魔物はポリゴン片になって消滅するのかー。こういうこだわりはゲームっぽいねぇ。内臓ぐっちゃぐちゃとか見せられるよりいいけども。
《システムメッセージ:プレイヤー“ミオ”は100の経験値を得ました。“魔物使いの心得”により個体名“ジェード”に経験値を与えますか。YES or NO》
お、なんか出た。100ってのがラピッドラビット1匹の経験値なのかな。
どうする、ジェード君?
聞いてみると『是非!』みたいな熱い思いが伝わってきた。そ、そんなに細かく振動しなくてもわかったから!
YES、を選択するとジェード君が一瞬光った。これでいいのかな?
でも特にレベル上がったりはしないのか。まぁレベル1の敵倒しただけだしなぁ。
ん、ジェード君が何か言いたそうにしてる。もっと食べたいって?
なんかちょっと悲しそうだなぁ。うーん、量が足りてないのかな?
そういえばラピッドラビットは倒された後ちょっとのお金と【ラピッドラビットの肉】ってアイテム落として消えちゃったんだけど。ジェード君、お肉食べるんじゃないの?
しかし、よくよく話を聞く(動きから意思を読み取る)と、ごちそうというのはお肉ではなく経験値のことだった。
君、肉食系どころか、新ジャンル“経験食系スライム”だったんだね……。
戦闘……うん、戦闘だったよね?