004 自堕落な生活
GM「あなた方はデスゲームに囚われました。脱出するためにはメインストーリーを攻略する必要があります。最初のストーリークエストをクリアしてください」
タイチ「はい、わかりました」
ミオ「いやです」
ゲーム開始から4日。
街の中も随分と落ち着いた。3日もしたら楽観派はいなくなったし、激怒派も街の外にでていくか、悲観派になった。そしてその悲観派は宿の中に閉じこもって出てこないのでとても静かだ。
わたしは変わらず1日中宿屋でごろごろしている。現実じゃあここ数年満足に休みも取れなかったのでとても新鮮だ。ゲームの中では残業どころか家事すらしなくていいなんて。WC最高。
ゲーム開始から10日。
最近は悲観派も生きるために街の外に出てモンスターと戦ってお金を稼いでいるらしい。たしかに宿に泊まるのだって初期の手持ち金じゃ20日が限度だし、実際には他にもいろいろお金がかかる。そのうちの一つが食事。どうやらゲームの中でもおなかがすく。排泄は必要なさそうなのがゲームらしいっちゃらしい。WCの名に偽りありってところかな。食事は街にいくつかある食堂でとれる。わたしも食べに行ったけど安くておいしい。満足できる。
ところで、いまのわたしの持ち物はこんな感じ。
所持金3300G。木の弓。木綿の服。魔物使いのハーモニカ。初級ポーション×3。
所持金が増えてるのは、システムさんからもらった初級宝箱から3000Gでたから。他は狩人の初期装備の弓と魔物使いの初期装備のハーモニカ、それに服。下着とかは表示されないんだね。ポーションというのはHPを回復させることができるアイテムらしい。最初から持ってた。まぁわたしは使うことないだろうけど。
この中でわたしはハーモニカに興味を持った。現実じゃあ楽器なんてほとんど演奏したことなかったから暇つぶしに演奏してみようかと。適当に吹いてみると頭の中に演奏方法・手順が浮かんでくる。ふーむ、どうやらこの曲は、魔物使いの持つスキル《隷属の調べ》というらしい。これをモンスターに聞かせると一定確率で隷属契約を結べる……などなど説明が脳裏に閃く。ゲームの世界って便利だなー。
しかしこの《隷属の調べ》、結構演奏難しい。いや、わたしが楽器に不慣れってのもあると思うんだけど。
ゲーム開始から20日。
とくにやることもないわたしは日がな一日ごろごろしながら楽器を演奏しているだけだった。おかげでなんだか《楽器演奏スキル》というのがレベル1から3まで上がった。スキルレベルが上がったときにボーナスポイントがもらえたので幸運に2ポイント振っておく。宝箱からお金が出たおかげでごろごろできてるわけだし、幸運はいまのところ仕事してくれている印象だから。偶然かもしれないけど、まぁいいよね。
そうそう、我が弟とケン君はもうレベル10になってそろそろ最初のボスに挑むところだとメールが来た。『だいじょうぶなのー?』と返すと、ボスのレベルは5で、仲良くなった前線組の人たちと一緒に挑むから心配いらないそう。まぁ我が弟は危機回避能力だけは高いからあまり心配はしてない。
ゲーム開始から40日。
弟たちはレベル15になり、次のレベル10ボスも倒したらしい。徐々に攻略が進んでいることで悲観派もほとんどがレベル上げを行うようになったらしい。なんでもちょっと離れたフィールドににある村は始まりの街よりも設備の整った宿屋があったり、おいしい食べ物が見つかったりと色々と新発見があったという。人間て現金だよね。
さて、わたしはここに至り一つ問題を抱えた。演奏は結構うまくなってスキルレベルも9になったけど、そんなことをしているからこういうことになるのだ。
端的に言って、お金がない。現在所持金30G。今日の宿も止まれない。ついに街から出る時が来たか……。
そこ、腰を上げるのが遅すぎるって言わない。