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デスゲームを楽しむために  作者: すずひら
プロローグ
3/143

003 デスゲームの始まり

 

 空中に現れた文字列が言ってることをまとめると以下のようになる。

 

 ログアウト不可。ゲーム内でのキャラクターの死亡=現実での肉体の死亡。ストーリークリアで全員の解放。外部からの救出はない。クリアの時間制限なし。詳しいルールはヘルプ参照。頑張ってね。あ、ついでにプレイヤーの外見を現実準拠に戻しておきます。その方がリアリティあって楽しいでしょ。もとから現実準拠だったプレイヤーは代わりに初級宝箱ひとつプレゼント!

 

 このシステムのメッセージ通り、周りにいたプレイヤーたちが光ったかと思うと次々と不細工になっていく。いや、不細工とまでいったら可哀想か。漫画のキャラのような顔が現実感あふれる顔に変わったというほうがいいかな。全体的に身長も低くなって、恐ろしいことに男女比も2:1くらいだったのに100:1くらいになっている。ていうか女性の姿がわたし以外ほとんど見つけられないんだけど。男の数多すぎるでしょ……。

 そんな変化があったからか今や広場は阿鼻叫喚の地獄へと変貌している。非常にうるさい。

 うーむ、いや、しかし、これはつまり……。

 わたしが周囲の騒音に負けずじっと考え込んでいると、しばらくケン君と何事かを話していた我が弟が「姉さん、ちょっといいかな」と話しかけてきた。

 

 「まさかこんなことになるなんて、姉さん巻き込んじゃってごめん。でも姉さんは俺が絶対守って見せるから!」

 「え、あ、うん」

 「それでもう一つ。姉さんは初心者だから分からないと思うけど、こういうのはスタートダッシュが大事なんだ。この騒ぎが本当だとしても、運営のイベントだとしてもね。冷静な人たちはもう何人か街の外に走ってくのを見た。俺たちもクリアを目指すからには少しでも強くならなきゃならない。それで、姉さんには悪いんだけど、俺とケンは先に行くよ。姉さんに危険なことさせるつもりはないから。心細いとは思うけど、姉さんはこの街で俺たちのクリアを待ってて。少ししたら様子見に来るから。何かあったらメール頂戴。――それじゃ、行ってくる」

 「あ、いってらっしゃい。気を付けるんだよ」

 「わかってるよ。街中なら安全だと思うけど、姉さんも気を付けてね」

 「ではお姉さん、失礼します」

 

 そんなやりとりをかわして弟とケン君は街の外に走り去っていった。いや、弟よ、君はそんなに急いで何をするつもりなんだい。というか適応早いのね。わたしはまだ混乱してるのに。

 しかしそうか、これが運営のいたずらという可能性もあるのか……。

 

 「俺は絶対こんなの認めねえぞ!」

 

 うおう、びっくりした。突然すぐ近くで叫ぶんじゃない。

 叫んだのはひげ面の大男。わたしの背中側にいたのに気づかなかった。

 ふうん、どうやら広場の人たちは『これは運営の悪ふざけだ。すぐにログアウトできるようになる』という楽観派と『デスゲームなんて冗談じゃない。俺は認めない』という激怒派、『もうだめだ。死ぬしかないんだ』という悲観派に分かれたらしい。ちなみに『ひゃっほうデスゲームとか最高だぜ』とか『俺がこのゲームをクリアしてやんよ』派は街から出て行ったみたい。我が弟もこの最後の一派に入るのか……。

 

 「……よし、把握した。うんうん、やっぱりそうだよね」

 

 わたしはとりあえず混沌とした広場を離れ、宿屋へと向かう。とりあえずなぜだかお昼寝がしたい。お昼寝なんてここ十数年してないのに不思議だなぁ。

 しかしみんな何をわめいているんだか。冷静になって考えてみればこんなに素晴らしい状況はないのに。だってこの世界では多分毎朝早く起きて会社行って夜遅くまで仕事して――なんて働かなくても生きていけるんだよ? それにゲーム内で死んだら現実でも死ぬとか言ってるけど、ただ現実で死ぬのと何が違うのやら。死ねば死ぬ、あらゆる死は平等なんて言葉にするまでもないことだろうに。車に轢かれるかモンスターに襲われるかの違いじゃないのかな。もし一生ここで暮らすことになってもわたしは構わないし、仮に誰かがゲームをクリアしたらきっと現実では政府とかから生活保障金とか出るだろうし。企業が生きていれば賠償金とかも。どう転んでも困ることはない。

 ……現実に未練があれば焦ったりするのかもしれないけど、別にわたしはないしね。


 宿屋へ向かうとおっちゃんが店から顔を出していた。


 「や、お嬢ちゃん。この騒ぎは一体何なんだい?」

 「んー、ちょっとした集団恐慌? おじさんは、この宿屋の人?」

 「ああ、そうだぜ」

 「じゃあ、一泊お願いします」

 「こんな昼間からか? まぁ、いいが。明日の朝までで50Gだぜ。2階の一番奥使ってくんな」

 「うん、ありがとー」


 初期状態の手持ち金1000Gから宿代50Gを払う。さっきケン君にメニューウインドウの使い方教えてもらったのがさっそく役に立った。

 それにしても、いまのおっちゃんはNPCなのか。たしかに普通の人間と変わらない。前評判通りだね。

 わたしは服を脱ぎ散らかし、宿屋のベッドに寝っ転がった。

 人生いっきにイージーモードになったなぁ。これは良い夢が見られそう。


デスゲーム開始です。この話まで一応プロローグ扱い。次回からANEの伝説が始まる……。

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