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デスゲームを楽しむために  作者: すずひら
プロローグ
1/143

001 はじまり

初投稿です。暇つぶしにでもどうぞ。

 

 始まりは弟が見せてきたメールだった。新作のネットゲーム、VRMMOのβテスト参加用チケットが添付されているらしいそれをわたしに見せ、弟は溢れんばかりの笑顔でこう言った。


 「姉さん、ゲームやろう!」


 それを聞いてわたしは内心ため息をついた。弟が重度のネットゲーマーなのは知っていたけど、まさかわたしを誘ってくるとは。

 それからも弟はマシンガンのようにこのゲームがいかに注目されていて、βテストの権利を得たことがどれほどの幸運なのかを語ってくれた。唾を飛ばすな。

 多少うんざりしながらもなんだかんだ弟には甘いわたしは、ちゃんと話を聞いてやった。聞いたってよくわからないんだけども。

 弟の話によれば、このゲームのタイトルは『ワールドクリエイト』。通称WCというらしい。Water closetの略、つまりトイレと一部では呼ばれているそうな。WCは新進気鋭の会社が制作したゲームで、PVがネットに流れたとたん一気に話題になった。なんでもゲーム内に登場するNPCや魔物のAIがとても高度で、現行の技術の先をいっているあまりの出来に初めはガセではないかとの憶測も流れたよう。でも実際にβテスト募集を行った段階でどうやら本当らしいと考えられ、その期待度からβテスター1万人の募集に対して応募は500万人を超えたそうだ。その中で2枚の参加権を得た我が弟は確かに幸運なのだろう。しかし豪運はこんなところで発揮しないで宝くじにでも発揮してほしかったところだ。とりあえず応募にわたしの名前と電子ネットIDも無断使用した件について一発拳骨。


 「痛ってえ……か、勝手に使ったのは謝るよ姉さん……」


 まぁわたしも懸賞の応募に弟の名前を勝手に使うことがあることは内緒。


 「でもVRってことは専用の機械いるんでしょー?」


 わたしはゲームなんてやらないから良く知らないけど、なんだか頭にかぶる機械が必要だったはずだ。弟は当然持っているが、わたしのものはない。ちなみに弟が今使っているものは5年前、弟が中学に入学する時にどうしてもと懇願されたのでその年の誕生日プレゼントにわたしが贈ったものだ。


 「機械は、もし姉さんが一緒にやってくれるなら、俺が買うよ!」


 あら、珍しい。バイト代はほとんどネットの課金に使い込んでると思ってたけど。

 弟はそのあとも家事をいくつか引き受けたり、バイト代の一部を家計にいれたりと随分と条件を付けた。ここまで言うからにはよっぽどの事情があるのかと聞いてみれば。


 「えーと、いや、別に大したことじゃないんだけど、姉さんゲームやらないじゃん。でも、俺の好きなネットゲーム、姉さんにも知ってもらいたくてさ……」


 なんだか乙女思考だなぁ、我が弟よ。姉は君の将来が心配だ。

 さて、そんなWCは広大な世界をストーリーに沿って巡り攻略する正統派なゲームらしい。システム的にはTRPG要素も入っているとか。サイコロころころする奴だ。うーん、ゲーム初心者のわたしはガチで攻略する予定の弟に付き合えないんじゃないかなぁ。と思ったが、弟の友人も一人幸運なことにチケットを取得したらしく、攻略はその友人と行うとのこと。たまに遊んでくれればいいという。というか、WCの売りとして攻略以外のことも充実してるらしい。例えば釣りしたり農業やったり。ゲーム内部で第2の人生でも始めるんだろうか。ネトゲ廃人生?

 まぁこのへんが妥協点かなぁ。もともと最終的にわたしが弟の頼みを断ることもできそうにないし。

 面倒くさがりなせいか、わたしはとかく押しに弱い。それが可愛い弟が相手ならなおさらだ。

 

 「んじゃいいよ、やってあげるー。ただし、現実の生活をちゃんと守る事ー。おーけー?」

 「ありがとう姉さん!」

 

 こうしてわたしはWCをすることになった。いや、トイレ行くわけじゃないからね?


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